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【真岡市】いちご王国栃木の首都もおか!「市場出荷型」と「観光農園型」から選べるいちご研修

栃木県の南東部に位置し、茨城県との境にある真岡(もおか)市。ここは「いちご王国」で知られる栃木県の中でも、生産・販売・品質ともにトップクラスという、まさにいちごの聖地です。これまでの市場出荷用のいちご栽培に加えて、近年では農業と体験型アクティビティを掛け合わせた「観光農園」にも力も入れています。
「いちご王国栃木の首都もおか」での新規就農について紹介します。



真岡市の概要

自然豊かなトカイナカ、真岡市の風景

真岡市は栃木県の南東部に位置しており、東には八溝山地、西には鬼怒川を抱える自然豊かな地域です。東京からは2時間程度でアクセスでき、子育てや移住支援も手厚いことから、首都圏を中心とした若い世代の移住先としても注目を集めています。


毎年7月に行われる真岡の夏まつり「荒神祭(こうじんさい)」は市内最大のイベント

また真岡市は、「いちご王国栃木」の中でもいちごの生産量が最も多く、近年オープンした「いがしらリゾート」では、癒しと多彩をコンセプトに、サイクリングやグランピングの他、いちご狩り体験など、自然や農を感じられるアクティビティを楽しめます。

 


「いがしらリゾート」のグランピング施設

真岡市の農業

「いちご王国栃木の首都もおか」は、いちご生産量・販売量ともに日本一

真岡市は大都市圏に近く、地理的な優位性を生かして園芸農業が盛んに行われています。特に、いちごは生産量・販売量ともに日本一。およそ420戸の農家が約132ha(ヘクタール)の農地でいちごを栽培しており、2022年は生産量約6,807t、販売額は86億円にのぼりました。農林水産大臣賞を何度も受賞するなど、量・質ともにトップレベル。冬場の日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きいので、いちご栽培に適した環境でもあります。

また、観光農園型のいちご栽培にも力を入れており、現在4軒の農家で運営されている「井頭観光いちご園」では、年間3万6千人もの観光客が訪れます。
 

いちご以外にも、トマト、にら、なす、たまねぎ、水稲、麦など、さまざまな農作物の生産も盛んです。


#事例紹介

農業へ転身(トマト生産者)児矢野 翔吾さんの就農事例


「市場出荷型」と「観光農園型」から選べるいちご研修

真岡市では、新たにいちご農家を始める人向けの研修として、「市場出荷型」と「観光農園型」の2種類の研修プランがあります。それぞれの研修生には、県や市、JA、農業公社などの関係機関が連携し、就農に向けたサポートをしています。


市場出荷型:「JAはが野 新規就農塾」

「JAはが野管内」で、市場出荷型のいちご農家として就農したい人向けの研修制度です。管内の熟練農家のもとで、1年間の研修を行います。研修期間中には実地研修のほか、就農計画づくりや就農準備(農地の確保やハウス設置など)を支援します。

 

[内容]
研修先での農作業実地研修
農業技術‧経営に関する基礎的な座学研修 など(JAグループや農業振興事務所が主催する研修会)
[研修期間]
1年間(毎年4~3月)
[研修費用]
基本無料(研修開始の際に保証金が必要。保証金は修了後に全額返金されます)
[対象]
⚫︎18~48歳
⚫︎研修修了後、JAはが野管内で就農・経営を開始すること
⚫︎JAはが野の組合員になること
⚫︎JAはが野の生産部会員として活動できること
[選考方法]
申込書を提出後、書類審査と面接審査の上決定
[募集人数]
6名


観光農園型:「井頭観光いちご園 新規就農塾」

真岡市の「井頭観光いちご園」で就農し、観光農園を経営したい人向けの研修制度です。
井頭観光いちご園の先輩農家等のもとで1年間の研修を行い、観光いちご園経営に必要な技術や基礎知識を習得します。いちご狩りなどを通して直接観光客とふれ合う機会も多いため、接客や人との関わりが好きな人におすすめです。

就農後は井頭観光いちご園での独立自営就農をサポートします。

 

[内容]
井頭観光いちご園での実践研修
農業技術・経営に関する基礎的な座学研修 など(JAグループや農業振興事務所が主催する研修会)
[研修期間]
1年間(毎年4~3月)
[研修費用]
基本無料(研修開始の際に保証金が必要。保証金は修了後に全額返金されます)
[対象]
⚫︎18~48歳
⚫︎研修修了後、真岡市内に在住し、井頭観光いちご園で原則独立自営就農を開始すること
⚫︎JAはが野の組合員になること
⚫︎JAはが野の生産部会員として活動できること
⚫︎研修修了後、当事業の受け入れ農業者として協力すること
[選考方法]
申込書を提出後、書類審査と面接審査の上決定
[募集人数]
若干名


研修先インタビュー(1)「有限会社ハイクオリティ・27」代表 上野圭太郎さん

「ハイクオリティ・27」代表、いちご農家の上野圭太郎さん

いちご農家の上野圭太郎さん。高校を卒業後、栃木県農業大学校で2年間学び、20歳で就農しました。現在は農家の3代目として1ha超もの広大な土地でいちご栽培に取り組んでいます。「有限会社ハイクオリティ・27」では、父母と研修生1名、外国人技能実習生5名を合わせた計9名で農業を営んでいます。


全国からの受け入れ多数。本格的な実地研修で独立後を見据える

「とちあいか」は早生品種のため、収穫は「とちおとめ」より早い11月上旬からはじまる

これまで上野さんは、JAはが野の新規就農塾を通して3名程度、農園独自としては12~13名程度の研修生を受け入れてきました。いずれも一年間を通しての実地研修がメインです。全量「とちあいか」を栽培する上野さんの農園では、繁忙期となる収穫シーズンは毎年11月上旬から5月末頃まで。収穫時期が終わると、6月にはハウスの片付けや消毒をおこなうと同時に、次作のいちごの育苗管理を行います。9月中頃には苗の定植をして、葉かきなどの手入れをしながら、11月の収穫に向けて育てていくというサイクルです。


季節に合わせて若干変わりますが、一日の研修時間は7時から16時半頃まで。間に休憩を2時間くらい取るようにしています。栽培方法は高設栽培が4割、土耕栽培が6割なんですよ。高設栽培はかがまずに作業できるので体への負担は軽いですが、土耕の方が味も収穫量もいいですね。高設・土耕のいちご栽培に関する作業のすべてを、研修生には一緒にやってもらいます。


これまで受け入れた研修生のうち独立就農しているのは6名ほど。いずれも市内外・県内外から、様々なバックグラウンドを持った人たちを受け入れてきました。


宮城、福島、茨城、岐阜、東京…。実家の酪農からいちご農家に転向したい、多品目栽培のひとつとしていちごを取り入れたい、脱サラして農家になりたいなど、就農を目指す理由も背景も様々でした。


農業は“先のこと”を考える仕事。自営としての意識が大切


たくさんの研修生を受け入れている上野さんですが、修了後のサポートや研修生との付き合いなどはあるのでしょうか?


「定植が間に合わない」と聞けば、手伝いに行ったりしています。ただし、ひとつ伝えておきたいのは、農業は常に“先のこと”を考えなければならない仕事だということ。サラリーマンの感覚で「この時間さえいれば給料がもらえる」という受け身の姿勢では、正直厳しいと思います。その代わりオーナーシップをもって自ら進んで学ぶ人には、応援してくれる人もたくさん集まってくると思いますね。


最後に「いちご日本一」の真岡市で、いちご農家として就農を目指す人へのメッセージを上野さんはこう語ります。


いちご生産が日本一ということは、それだけ頑張っている先輩農家も多いということ。これまでの研修生も、はじめは期待と不安を抱えて研修をスタートさせましたが、真岡には学べる環境がたくさんあります。その点は前向きに捉えてほしいですね。
加えて真岡の良いところは、農家をはじめJAや農業公社など、関係機関の連携が密だというところです。就農に向けてのサポートも充実しているので、ぜひ安心して飛び込んでほしいですね。


INFORMATION

【研修先いちご農家】上野圭太郎さん

農家の3代目として1ha超もの広大な生産面積で全量「とちあいか」を栽培している。20歳で実家の農家に就農してから23年目のベテラン農家。これまで「JAはが野新規就農塾」をはじめ、たくさんの研修生を受け入れて後進の育成に携わってきた。


研修先インタビュー(2)「株式会社ベリーズバトン」代表 新井孝一さん

『ベリーズバトン』代表の新井孝一さん

新井孝一さんは、真岡市でいちご農家を営む3代目。東京農業大学、栃木県農業試験場いちご研究所での研修でいちご栽培について学び、2008年に実家に就農しました。2019年10月に「株式会社ベリーズバトン」を設立してからは、効率的な生産管理や人材育成、労働環境の整備など「組織」としての農業経営に力を入れています。

2022年には、新しい発想と取り組みで栃木県の農業発展に貢献したとして「第4回栃木県農業大賞  農業経営の部」にて大賞を受賞。先進的かつ独自性のある農園経営は注目度が高く、これまでもメディアに多数取り上げられてきました。


#事例紹介

安定経営のヒントがいっぱい!ベリーズバトンの取り組みについてはこちらをチェック



そんな順風満帆に見える新井さんの就農人生ですが、意外にも現在に至るまでは一筋縄ではいかなかったと言います。ベリーズバトンの前身である『新井農園』で就農しますが、はじめの2年間は体力的にも精神的にも厳しい時期だったと振り返ります。


とにかく想像以上にきつい仕事でした。経営面でも苦労していたので、人に頼むより自分でやるしかない。そうなると自分の時間がなくなって、心も体も余裕がなくなるんです。この悪循環では継続できないと思って、抜本的な経営改善をしようと決めました。作業効率を上げるためのマニュアル作成や、働きやすい環境を整えるための社屋の整備、生産技術の向上など、安定経営のためにできることをひとつずつ実践していったんです。


独自の3ステップ研修で、着実に学べる環境を提供


これから就農を目指す人に、少しでもよりよい環境をつくりたい。そんな新井さんが提供する研修は、その内容にもこだわりがあります。
はじめはいちごについて何もわからない状態なので、作業のやり方を覚えることからスタート。農園スタッフと同じ作業をすることで、いちご栽培の基本的な流れを身につけます。次のステップは「WHY(なぜ)?との結びつけ」。手を動かして身につけた作業内容と、「なぜそれをするのか?」という理由を紐づけることで、さらに学びを深めます。そして最後が「復習と農機具の使い方」。これまで身体と頭で習得した技術を繰り返しながら、独立自営に向けてより実践的な研修を行います。

研修生は、この3ステップを1年に凝縮して学ぶそうです。会社の独自研修として、最低3年、雇用就農という形で働きながら学ぶことも可能です。


これまでJAはが野新規就農塾と弊社の独自研修で、合わせて4名の研修生を受け入れてきました。石川泰之さんは、ベリーズバトンの前身「新井農園」で2年間働きながら栽培技術を習得し、雇用就農から独立しています。


#事例紹介

雇用就農から独立し、いちご農家になった石川泰之さんの就農事例


「いちご日本一」の真岡の強みと、これからの課題


新井さんに真岡市でいちご栽培をすることの魅力を伺いました。


まず、いちご栽培に適した環境ですね。良質ないちごの生産には日当たりが重要なのですが、真岡は冬の日照時間が長いんです。また、水資源に恵まれているので「井戸掘り」もしやすいという点も強みかと思います。水の出にくい地域に比べると井戸にかかる費用が比較的安価で済むので、恵まれていると言えるでしょう。あとはやはり、先輩農家がたくさんいるということでしょうね。この点は「いちご日本一」の真岡ならではだと思います。


先進的な取り組みをしながらも、「農業は地域あってのもの」と語る新井さん。地元の人と新たに参入してくる人が、互いに尊重し合うことが大切だと言います。

一方で、「いちご日本一」の真岡市とはいえ、農業に立ちはだかる課題は多いとも言います。


周りでも、実家の農家を継がないという選択をした友人はたくさんいます。いちご日本一といえど、後継者不足なことは間違いありません。まだまだ農業に対して“きつい”というイメージがあるし、実際にそういう面も多々あります。
最近では資材費も高騰しているので、新規就農のための初期費用もそれなりに準備しておく必要があると思います。

真岡でいちご農家になるメリットはたくさんありますが、一方で「独立就農」に明確なこだわりがない場合には、私たちのような農業法人での「雇用就農」を選択肢に入れるのもありだと思っています。皆が働きやすい、働きたくなる農業をここ真岡で目指していきたいですね。


INFORMATION

【研修先いちご農家】新井孝一さん

「株式会社ベリーズバトン」代表取締役。全150aの生産面積のうち高設栽培42a、土耕栽培108aで、「とちあいか」と「とちおとめ」を栽培している。従業員はパート社員と正社員を合わせて30名程度。生産性の向上や労働環境の整備など、農業のマイナスイメージを払拭するための取り組みも積極的に行っている。


まとめ

県内随一のいちご生産者が集まる真岡市。一見するとライバルが多いともとれる環境ですが、地域の農家をはじめ、市やJAなどが協力し合い、農業を盛り上げていこうという気運が感じられました。
就農支援が充実した真岡市ですが、一方で実際の準備には時間がかかるのも現実です。就農を目指す2年くらい前から情報を収集し、事前計画を立てることで選択肢も広がります。2022年からは「観光農園型」の研修制度もはじまっています。

ぜひ「いちご日本一」の真岡で、いちご栽培を目指してみませんか。

 


農地情報

農地に関する相談については真岡市農業公社が窓口となり、農地の売買や賃借、契約等について各関係機関が連携しながらサポートしています。


空き家情報

「真岡市空き家バンクホームページ」では、空き家の地図・写真・間取り図・金額等の物件情報や申請方法を掲載しています。空き家バンクに登録すると、リフォームや家財道具処分、引っ越しにかかる費用の各種補助金が申請できるようになります。


相談窓口

真岡市では新規就農の相談の他、就農に伴う移住や住まい探しなどのサポートも行っています。
就農準備には時間がかかります。実際に就農したい時期から2年前を目安に、窓口に相談してください。

【農業に関すること】
真岡市農政課 農政係 TEL:0285-83-8137

【移住に関すること】
真岡市秘書広報課 シティプロモーション係  TEL:0285-81-6947

【空き家に関すること】
真岡市くらし安全課 空き家対策係  TEL:0285-83-8110

【農地に関すること】
真岡市農業公社  TEL:0285-83-9931


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