研修先インタビュー(1)有限会社農業生産法人かぬま 小久保 有也さん
1年目は基礎、2年目は実践的な研修で独立前にシミュレーションできる!
鹿沼市の概要
東京からおよそ100km、北関東の中央部に位置する面積490.64平方キロメートルの鹿沼市。圏域北部は日光に隣接し、南東部には東北縦貫自動車道鹿沼インターチェンジがあり、北関東自動車道に近接しています。宇都宮市とも隣接し、東北新幹線との連携も容易なことから、東京までの所要時間は約80分と地理的に優位性があります。
市内の約7割が森林におおわれ、山や高原、清流と渓流といった特色ある美しい景観にも恵まれています。
鹿沼秋まつりは、ユネスコ無形文化遺産に登録された伝統的なお祭りで、豪華な彫刻が施された屋台が特徴です。これらの屋台が向かい合い、お囃子(はやし)の競演を行う「ぶっつけ」が最大の見どころ。各町内が誇る美しい屋台が一堂に集い、華麗な演出と迫力ある音楽の調和が、訪れる人々を魅了します。
2024年4月にオープンした「スノーピーク鹿沼キャンプフィールド&スパ」は、豊かな自然に囲まれたアウトドア体験とリラックスできるスパ施設を併設したキャンプ場です。広々としたフィールドでのキャンプに加え、心身を癒すスパが楽しめ、自然と快適さを両立させた特別なひとときを過ごせるスポットとして注目を集めています。
「いちごっこ広場」は、花木センター内に設置された室内遊び場で、天候を気にせず楽しめる施設です。木製の遊具や大型遊具がそろい、子どもたちがのびのびと遊べます。また、子育て世代だけでなく、さまざまな世代が集い、交流の場としても人気があります。
鹿沼市の農業
園芸用土「鹿沼土」の産地としておなじみの鹿沼市。培養土の大部分を占める「基本用土」に分類される鹿沼土は、赤城山が噴火したときにできた軽石が風化したもので、関東ローム層で採取できます。通気性と保水性が高く、菌の繁殖や害虫の発生がほとんどないのが特長です。
肥沃な土壌と、首都圏内100kmの立地条件を生かし、水稲、園芸、畜産などさまざまな農業が盛んです。特に、冬の日照時間が長いため、いちご、にら、トマトなどのハウス栽培を得意としています。
鹿沼市では、分散している農地を集約し、効率的に利用できる環境を整えています。これにより、農作業がよりスムーズに行えるようになります。また、排水路や農道の整備も進められ、農業の生産性向上に向けた基盤が整えられています。これらの取り組みによって、農業を始める人にとっても作業しやすい環境が提供されています。
#事例紹介
栄養士から家業を継いで農家へキャリアチェンジ。にらと米栽培を行い4年で売上4倍を実現した
谷中啓紀さんの就農事例
いちご王国・栃木県の中でも、鹿沼市のいちごは特に市場で高い評価を受けています。高品質の理由は、先人の農家たちが研究熱心だったことにあるといわれています。鹿沼市産のいちごは、JAかみつがを通じて大田市場に出荷され、その品質の高さから、市場での取引の基準となる価格(建値)として設定されるほどの存在感を誇っています。
#事例紹介
営業・販売職から夫婦でいちご農家に。前職から収入増、2年目から黒字化実現した
島野優一さんの就農事例
研修後の農地確保は100%!いちごとにらの研修制度を実施
鹿沼市では、いちご・にら新規就農者支援対策協議会を設立し、いちご新規就農者研修とにら新規就農者研修を実施しています。どちらも研修後に、「公益財団法人鹿沼市農業公社」を中心とした協議会メンバーが共有する農地情報の中から、新規就農者に農地を紹介します。そのため、今までの研修生の農地確保率は100%です(令和6年10月現在)。
また、移住支援金最大100万円のほか、施設栽培に強みをもつ鹿沼市ならではの支援としてハウス等導入時に最大300万円の設備補助金を支給する施策も行われています。
いちご新規就農者研修(2年間)
農業生産法人かぬまが経営する観光いちご園「出会いの森いちご園」で、2年間の研修を行います。
栃木県内で実施されているいちごの新規就農者研修のうち、2年間じっくり学べるのは栃木県農業大学校いちご学科を除いてここ鹿沼市での研修のみ。1年目はプロの指導員から栽培の基礎を学び、2年目には研修用ハウスで実際にいちご栽培のシミュレーションができるのが魅力です。
平成29~30年の1期生から令和5~6年の8期生まで全員が鹿沼市内で就農の実績があります。
[研修内容]
就農準備校とちぎ農業未来塾Ⅰコース(いちご)と出会いの森いちご園との併用で2年間の研修を行います。1年目は基本の農作業や栽培技術の習得、未来塾での座学・基礎的研修、2年目は一人ひとりに貸し出される研修用ハウス(1棟260㎡×2~3棟(希望により))で実践研修を行います。
[研修期間]
2年間(4~3月)
[研修費用]
就農準備校とちぎ農業未来塾の受講料金 50,000円
[対象]
18~47歳
研修終了後、鹿沼市内に居住・就農する方で、市税等の滞納がない方。親元就農予定者は対象外。
とちぎ農業未来塾への申込みと合格が必須条件になります。
[申込方法]
募集期間内(令和6年12月10日(火)まで)に、申込書類を郵送または直接鹿沼市農政課まで提出。
[募集人数]
最大4人
にら新規就農者研修(1年間)
栽培歴30年以上の市内ベテラン農家(とちぎ農業マイスター)のもとでの研修と就農準備校とちぎ農業未来塾で、1年間の研修を行います。
[研修内容]
農家研修ととちぎ農業未来塾Ⅰコース(施設野菜)を併用し、栽培技術と農業の基礎を学びます。
[研修期間]
1年間(4月~3月)
[研修費用]
就農準備校とちぎ農業未来塾の受講料金 50,000円
[対象]
18~47歳
研修終了後、鹿沼市内に居住・就農する方で、市税等の滞納がない方。親元就農予定者は対象外。
とちぎ農業未来塾への申込みと合格が必須条件になります。
[申込方法]
募集期間内(令和6年12月10日(火)まで)に、申込書類を郵送または直接鹿沼市農政課まで提出。
[募集人数]
若干名
研修先インタビュー(1)有限会社農業生産法人かぬま 小久保 有也さん
いちごの新規就農者研修の場「出会いの森いちご園」を運営する有限会社農業生産法人かぬまは、鹿沼市と地元JAの出資を受けた農業法人です。その起源は、昭和49年に設立された「鹿沼市農業公社」にさかのぼります。当初は水田農業の受託を行っていましたが、平成14年の組織改革により、農作業を受託する「有限会社農業生産法人かぬま」と、農地利用の調整を担当する「公益財団法人鹿沼市農業公社」の2つの組織に分かれました。
現在は、水稲302.3ha、大麦160ha、そば29.8ha、子実用とうもろこし10ha、いちご1haを栽培し、地域農業を支えています。
1年目は基礎、2年目は実践的な研修で独立前にシミュレーションできる!
鹿沼市のいちご新規就農者研修が始まったのは平成29年。累計16名の研修修了生は全員鹿沼市でいちご農家を営んでいます。
研修は2年間。1年目は、ほかの従業員やパートさんと一緒に、指導員からの指示に従いながら、苗づくりから収穫までいちごの栽培を一通り学びます。
1年目は基本的に8時半~16時半、月に16日間の作業です。暑い時期や農繁期はもっと朝早くから作業開始することもあります。
2年目は、一人ずつ割り当てられたハウスで、土づくりから出荷まで一貫して一人で行います。
2年目は、肥料設計なども自分自身で考えながら、個々にやりたいように進めます。実際に就農したあとの作業のシミュレーションがここでできるわけです。時間帯も自分で決めて作業することになります。朝6時から夕方まで作業を行っている研修生もいます。
育苗は毎日の水やりやハウスの開け閉めが必要なのですが、研修中はどうしても都合が悪い日などほかのスタッフがサポートしますし、随時相談にも乗ります。
「いちご市」鹿沼のプライド|一人ひとりが品質にこだわって栽培に臨んでいる
鹿沼市は、いちごの品質の高さに誇りを持つ地域です。農家はプライドを持って栽培に取り組み、収穫されたいちごは各農家でパッケージ詰めします。誰が作ったかはパッケージに記載されていませんが、ロット番号で農家を特定できます。鹿沼市のいちごは、JAかみつがを通じて東京の大田市場に出荷されています。
自分たちで育てたいちごの品質が認められるよう、どこの農家も誇りをもって作っています。
それも、鹿沼のいちごの品質の高さにつながっているのでしょう。
ここで研修を受ける方たちにも、全国に鹿沼のいちごを広げていくつもりで頑張っていただきたいと思います。
いちご農家として、一生続けていく覚悟をもってほしい
いちご栽培では、シーズンごとに異なる作業があるため、研修期間は2年間としています。1年目は見様見真似で作業を行っても、2年目には「これが必要だった理由」が実感として理解できるようになります。研修中には、さまざまな農業機械を操作する機会もあり、その中から自分が目指す農業に必要な機械を選ぶことも可能です。
鹿沼市での新規就農者研修では、農地のあっせんサポートが受けられるとはいえ、就農時に最も苦労するのはやはり農地探しです。
ここでは2年間の研修期間があるため、その間に余裕をもって希望する農地を探すことができます。
研修は市外から来る方のほうが多く、家族で鹿沼に引っ越して農業を始めています。
夫が2年間の研修を受けて、妻がパート従業員としてここに勤めるというケースもあります。パートでパック詰めや農作業を覚えれば、就農後は夫婦で力を合わせてやっていけますからね。
就農にはお金もかかりますから、一生農業を続ける、いちご農家としてやり遂げるという覚悟をもって臨んでいただければと思います。
#ベテラン講師 福田朗さんに聞く
就農支援のスペシャリスト直伝! 就農を成功に導く5つの極意
INFORMATION
出会いの森いちご園
出会いの森いちご園は、有限会社農業生産法人かぬまのいちご部門。生産と販売、観光農園を営んでいる。
農業生産法人かぬまは、昭和49年に鹿沼市内の水田農業を支援する目的で設立された財団法人鹿沼市農業公社が、平成14年の組織改革を経て分離した2つの組織のひとつ。農作業の受託事業を主軸としており、平成29年からはいちごの新規就農研修生の受入を行っている。
https://www.kanuma.or.jp/ichigo/
研修先インタビュー(2)にら農家 福田晃一さん
福田晃一さんは、父とパート従業員3人でにら専業農家を営んでいます。栽培面積は、にらの収穫ハウス35a、株養成ハウス35aの合計70a。農業キャリア40年のベテラン農家で、新規就農をめざす研修生の指導にあたっています。
研修の中心は定植したにらの管理と出荷調整作業
研修は1年間。出荷調整は1年を通して毎日作業があります。にら栽培では、収穫株の品質管理と出荷前の調整作業が非常に重要です。特に、外葉の除去や汚れを落とす作業は、一定の品質基準を保つために欠かせない工程であり、商品として出荷する前に必ず行わなければなりません。
そのほかには、4~5月に定植床をつくり、6月に定植をします。播種(はしゅ)は本来3月に行うのですが、研修が4月開始なので、研修最後に種をまくことになります。
1年の流れのなかで季節ごとの作業というのは多くないので、定植後は機械の操作方法や肥料・水やり、害虫防除などの一般的な管理作業がメインです。
研修生は朝7時半に来て、収穫作業が残っていればそれを手伝ってもらって、9時からは出荷の調整作業をします。
ほ場での作業より、室内で出荷準備をしている時間のほうが長いですね。7割は空調の効いた部屋で作業するので、そういう意味ではほかの作物よりラクかもしれません。
教えられることは全部教えたい
栃木県は、にらの作付面積日本一。栃木県産のにらは質が高いと定評があり、高単価で取引されています。鹿沼のにら部会は55年の実績があり、高度な技術のノウハウをもった農家が多いのだと福田さんは言います。
研修期間が1年間と限られていますので、私がもっている技術をできるだけ教えたいと思っています。
機械でも施設でも、あるものは全部体験してもらって就農後につなげていってもらえればうれしいです。
にら農家は、もちろん栽培技術も必要ですが、どちらかというと自然災害の対策に悩まされることのほうが多いです。ぎりぎりまで自分で頑張ってみることも大切ですが、困ったときは無理せずに先輩農家に甘えることも学んでいただけたらと思います。
研修生の相澤さんは社会経験も豊富なので、コミュニケーションなどについてはまったく心配していません。研修が終わったあと、鹿沼市に定住していただけるのでしょうから、一生のお付き合いが続くのだという気持ちで接しています。
コロナ禍がきっかけでにらの栽培技術を学ぶ研修生の相澤庸介さん
福田さんのもとで、にら栽培技術を学ぶべく研修を受けている相澤庸介さんが就農を目指したのは、コロナ禍で「食べ物を作る側になりたい」と思ったことがきっかけでした。当初、他県での就農を計画していましたが、高齢になった両親が関東にいるため、首都圏周辺での農業を模索。鹿沼市でのにら作業体験会に参加して、研修を受けることに決めました。現在は、とちぎ農業未来塾で週3日、福田さんのもとで週2日の研修を受けています。
栃木といえばいちごのイメージが強いだけに「他人と違うことをしたほうがおもしろそう」と、にら研修を選択したそうです。
研修を受けるにあたって、移住支援金の100万円も利用し、妻と二人で鹿沼市に移住しました。
農家になりたいと言ったとき、当初は反対していた家族も今は協力的です。
細かい作業が得意な妻が、調整作業をうまくやってくれそうです。
一生の師匠に出会えたことは何物にも代えがたい収穫
「福田さんには農業の技術だけでなく、人間力も学ばせてもらっている」と相澤さん。日々の作業を通じて福田さんの温かさ、愛情を感じるのだとか。
福田さんは、どんな機械も設備も惜しみなく使わせてくれて、危険なことはきちんと教えてくださいます。研修に来ていちばんよかったと思うのは、福田さんに会えたことと言っても過言ではありません。
これから研修を受けたいと考えている人には、しっかりと貯金をしておいたほうが良いと伝えたいですね。就農に向けて、融資を受ける以外にもさまざまな資金が必要になります。生活費についても、細かく計算しておいたほうが良いです。
農業はお互いに助け合っていくもの
鹿沼のにら農家も、ほかの地域や作物同様に高齢化が進んでいます。研修を受けて就農し、いずれはリーダーとして引っ張って行ってくれる人が増えていくことを福田さんは望んでいます。研修希望者がいれば令和7年度以降も積極的に受け入れたいと考えています。
研修期間中は、すべての作業がおそらく初めてになるでしょうから、記録しておくといいですね。
今ならスマホをみんな持っているでしょうし、写真をとってそこにメモをしておけます。相澤さんも、そうやって記録しているようです。
毎日、あるいは毎年、同じことを繰り返して作業していくので、「これどうするんだっけ」と思ったときはその記録を見ればいいですから。
にらは、収穫までの期間が短く、年間を通して出荷できるのがメリットです。どれくらいの収入が得られるか計算しやすいところもおすすめできるポイントだと思います。
就農するというのは、経営者になることなので決して簡単なことではありません。だからこそ、農業はひとりきりでやるんじゃないということも忘れずに、まわりの先輩農家を頼ってください。
INFORMATION
福田晃一さん
にら専業農家。70aのほ場で父とパート従業員3人で営農している。福田さんは約40年間の農業キャリアがあり、かつては水稲やいちご、なす、きゅうりなどの栽培も経験した。5年前からにら専業に。とちぎ農業マイスターとして新規就農者研修にも尽力している。
まとめ
新規就農者がいちばん頭を悩ませることのひとつが農地の確保。鹿沼市は、鹿沼市農業公社が農地を確保し、そこから就農に適した農地をあっせんしてくれることが大きなメリットです。また、市独自の支援としてハウスなどの設備補助金最大300万円が用意されているのも心強いポイントです。
研修の受け入れ先の方たちは皆さん、温かい心で新規就農者を待っています。
農地情報
鹿沼市農業公社が全面的にサポート。市内の農家580戸から受託した443.5haの農地からあっせんします。
空き家情報
「空き家バンク」に、最新の空き家情報が掲載されています。
空き家バンク物件をリフォームする際には「鹿沼市空き家バンクリフォーム補助金」も活用できます。
鹿沼市では、東京圏からの移住者を対象に、最大100万円の移住支援金が提供されています。単身者は最大60万円、世帯では100万円が支給され、子育て世帯には18歳未満の子ども1人につきさらに100万円が加算されます。移住者向けの体験プログラムやおためし宿泊施設もあり、移住をサポートする体制が整っています。
相談窓口
移住、就農、農地、空き家などに関する相談は、は各窓口までお問合せください。
【移住相談】
鹿沼市総合政策部 地域課題対策課
住所:〒322-8601 栃木県鹿沼市今宮町1688-1(行政棟 3階)
電話:0289-63-2226
FAX:0289-63-2143
Mail:matidukuri@city.kanuma.lg.jp
【就農相談】
鹿沼市経済部 農政課 農政係
住所:〒322-8601 栃木県鹿沼市今宮町1688-1(行政棟 5階)
電話:0289-63-2191
FAX:0289-63-2189
Mail:nousei@city.kanuma.lg.jp
【農地相談】
(公財)鹿沼市農業公社
住所:〒322-0527 栃木県鹿沼市塩山町1329番地19
電話:0289-63-5570
FAX:0289-64-9413
Mail:kousha@kanuma.or.jp
鹿沼市農業委員会事務局 農地調整係
住所:〒322-8601 栃木県鹿沼市今宮町1688-1(行政棟 5階)
電話:0289-63-2184
FAX:0289-63-2189
Mail:nougyo-jimu@city.kanuma.lg.jp
【空き家相談】
鹿沼市都市建設部 建築課 空き家対策係
住所:〒322-8601 栃木県鹿沼市今宮町1688-1(行政棟 4階)
電話:0289-63-2243
FAX:0289-63-2274