事例紹介

栄養士から家業を継いで農家へキャリアチェンジ。にらと米栽培を行い4年で売上4倍に!

50年以上続く農家に生まれ、大学卒業後、栄養士の資格を活かして就職し、社会人経験を積んだ谷中啓紀さん。結婚を機に父と祖母の元で親元就農することを決意し、鹿沼市でにらと米を栽培。就農2年目からは毎年にらの栽培面積を50aずつ増やし、着々と収益を上げています。この記事では、谷中さんに、栽培面積拡大の経緯や売上アップの理由、家業の農家を継いでよかったと感じること、今後の売上目標などを聞きました。



INFORMATION

谷中啓紀さん

やなか・ひろのりさん|栃木県鹿沼市出身。就農5年目。大学で栄養学を学び、資格を活かして障害者支援施設に就職。5年間勤めた後、2020年、結婚を機に親元就農する。就農後から毎年50aずつにらの畑を拡大し、就農時の売上約2,000万円を、2023年には8,000万円にまで増やした。従業員5名(パート従業員含む)を雇用するとともに、8名の外国人実技実習生8名を受け入れ、父と祖母と共に、にらと米の栽培を行う。栽培面積はにら3.5ha(ハウス100棟)、米10ha。


障害者支援施設の仕事を経て、親元での就農を選択


頑張った分だけ稼げる農業に魅力を感じ、農家の道へ

谷中さんは、三代続く農家のご出身ですが、農業以外のお仕事も経験されています。就農以前の経歴を教えてください。


大学に進学して、栄養士の資格をとり、宇都宮市の障害者支援施設に就職しました。そこでは施設で提供する食事の栄養計算やメニュー作り、調理まで、料理に関することを一通り行っていました。その職場で妻と知り合い、結婚すると決まったときに、家業を継ぐことに決めました。


農業の道に進むことにした決め手はありますか?


結婚して子どもができて、改めて就労時間や金銭面について考えました。もともと、農業もいいな、と思っていて、いつかは家業を継ぐつもりだったので、今がそのタイミングだと思った、という感じです。

祖父母や父が基盤を作り、従業員も雇って規模を広げてくれていたので、就農に前向きになれた、という部分もあります。父の背中を見て、農業は頑張った分だけお金が稼げそうだとも思いました。


研修制度は利用せず、父や先輩農家から栽培技術やノウハウを学ぶ

就農するにあたり、栽培技術や知識はどのように学びましたか?


県や市の研修制度は利用しませんでした。子どものころから出荷時のにらの調整作業などの手伝いをしていたので、仕事の内容はある程度わかっていたんです。

ただ、農薬や肥料などの栽培面に関しては、父に教えてもらいました。また、父だけでなく、近隣のにら農家さんたちからもたくさんのことを学ばせてもらっています。


繁忙期は9〜10月。農作業の年間スケジュール

農作業の年間スケジュールを教えてください


毎年3月に、次の作付に備えての土づくりを行います。4月はにらの定植と米の苗作りが重なるので、慌ただしいですね。田植え後の6〜8月は、にらの収穫や出荷、防除作業など、ルーティン業務をします。9月は、ハウス全棟にビニールがけを行う作業や稲刈りが同時に始まるので、年間で一番忙しい時期。冬が来る前にハウスの作業を終えなければいけないので、従業員の男手をフル稼働して毎日大忙しです。

11月以降は、作業が落ち着くので、2月くらいまでは収穫・出荷作業をしながら、防除作業や次作に向けたほ場の整備を行います。


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父の単独経営の時と比べて売上は4倍に!にら産地ならではのメリットを最大限に活かす

若い世代の後継者がいる農家には農地が集まりやすい!


啓紀さんが就農されて以降、栽培面積を増やしていますね。農地を確保できる理由を教えてください。


今、農業従事者が高齢化しているので、周りの農家さんから「米の収穫作業を手伝ってほしい」と頼まれることがよくあるんです。それで、昨年は収穫作業だけだったのが、今年は「田んぼを貸すから作ってくれないか」という話になり、田んぼを借りることができて、耕作地を増やすことができるんです。現在は、借りた田んぼの中で、井戸がある場所を優先的ににら畑にして、栽培面積を増やしているところです。


にら畑は、啓紀さんが就農した時点からどれくらい規模を拡大していますか?


父は、私が家業を継ぐと決める前は、自分の代で農業を終わりにするつもりだったんです。父が単独でやっていたころは、今の作付け面積の1/3程度でした。
私が後を継ぐと決めたことから、毎年栽培面積を50aずつ増やして2年後には2倍、4年後には3倍に広げました。来年は4倍になる予定です。


全国有数のにらの産地。栽培用パイプハウス拡充に利用できる補助金も充実

規模拡大や設備投資の際に、活用している補助制度はありますか?


ハウスの拡充には、県の園芸大国とちぎづくりフル加速推進事業「施設園芸拡大プロジェクト整備事業」を活用しています(事業名は活用当時のもの)。

ハウス内には農業振興事務所の勧めを受けて、父が2015年から半数のハウスにウォーターカーテン(※)を設置しています。冬の栽培の温度管理がしやすいので、ゆくゆくは全棟に付けたいですね。


(※)ハウス内の温度低下を防ぐために地下水を内張りカーテンの上に散水し、カーテンとハウス内の空気の熱交換を利用する保温設備のこと。


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栃木県内でも鹿沼市のにら生産量はトップクラス!販売先には事欠かない


現在の売上は8,000万円。栽培面積が拡大すると売上も順調にアップ

栽培面積拡大による売上の変化を教えてください。


就農したばかりの4年前は、にらと米の両方を合わせて2,000〜3,000万円の売上でした。今現在、にら畑が3.5haで、米を作る田んぼが10haあります。両方合わせると8,000万円ほどの売上です。

当時は管理する畑も約1/3だったので、売上の違いは単純に栽培量の差です。栽培面積が拡大した分、売上が上がりました。


栽培面積の拡大で売上アップと共に作業量が大幅に増え、従業員等は8名から13名に


栽培面積の拡大に合わせて就業されている方も増えたと伺いました。現在、何名で営農していますか。


私と父と父方の祖母のほかに、日本人の男性従業員2名とベトナム人技能実習生8名、パートさんが3名います。就農した時よりも外国人技能実習生が5名増えました。


外国人技能実習生たちと、どのようにコミュニケーションをとっていますか?


外国人技能実習生たちへの作業内容等の説明は主に私が担当しています。日本語で話したり、スマートフォンの翻訳アプリを使ったりしていますね。
父は「技能実習生とのコミュニケーションがスムーズになった」と評価してくれています。


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親子共同農業で意見の衝突も。共に学ぶ姿勢が成功へのカギ


谷中農園では、啓紀さんのお父様の民央さんが代表を務められています。民央さんも親元就農し、米づくりや多品目の野菜を育てていた状況から、にら栽培を中心とした経営にシフトチェンジされたんですね。

現在は、息子の啓紀さんが一緒に運営されていますが、親子で一緒に働き始めて、ぶつかった経験などはありますか?


息子が就農したばかりの頃は、よくぶつかっていました。

私はこれまでの経験があるから、今まで行ってきたやり方がいいと思っているので、押し付けちゃうじゃないですか。だけど、新しい人たちは自分の考えがある。「あれこれ口出ししちゃうと伸びなくなっちゃうかな」と思って、それからはあまり言わないようにしました。


栽培管理や必要な資材の仕入れなど、自由にやらせてもらっている方だと思うので、今は特に不満はないです。たまに高い肥料を買うと「高ぇ」って言われますが(笑)。


いいものを作りたいから色々新しい資材とか肥料とか見つけてくるんですよ。「これが欲しい」と相談されることもありますが、後から伝票だけ届くこともあるので、感想は言いますね(笑)。

息子が「やりたい」って言ってることに関しては、許せる範囲で一緒にやってみて、「ちょっと違ったなー」という結果になることもありますよ。
なんでも失敗しないと覚えないから、お金がかかった分は勉強代だと思ってあきらめています。「これは違う」と理解すれば、次に進めますから。


いちばんの悩みは給料を上げてくれないことでしょうか(笑)。


うちは、息子も日本人の従業員も技能実習生も、給料はみんな同じです。週5日勤務の、8時〜17時の8時間労働でスケジュールを組んでいて、就業時間以上働いた分は、きちんと残業代を出すようにしています。毎年基本給も少しですが上げていますよ。

稼ぎたければ残業をしてもいいし、定時で上がってしっかり休んでもいい。若い世代が農業を続けていくためにも、メリハリのある働き方は大切な条件だと思っています。


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2億円以上稼ぐ農家も。まだまだ成長の余地がある!売上目標は3億円!!


「就農してよかった」と感じる部分を教えてください。


一番よかったと思う部分は、いろいろと自由が利くところですね。いちご農家を始めた友人と、「好きなようにスケジュールが組めたり、やりたい方法で仕事ができたりと、自由にできる部分が多いところがいいよね」とよく話しています。

うちは、妻が介護職として働いているので、急に子どもの用事ができたときなど、私が仕事を休むこともあります。そんな時でも時間の調整がしやすいです。これは自営業ならではのメリットかもしれませんね。

あとは、仕事をした分だけ売上につながるところですね。


現在、経営や栽培に関する課題はありますか?


農業は教えてもらったことをしっかりやればちゃんと結果が出る仕事です。病気を出さないようにするのは当たり前のことですが、毎週防除しているのに病気が出た時はとにかく悩みます。

時期によって薬剤を変えるなど対策をしているのですが、難しいと感じることもありますね。


現在は個人事業だそうですが、法人化のご予定はありますか?また、目標としている売上額があれば教えてください。


父が現在59歳で、65歳には退職すると話しているので、5〜6年後には経営移譲も考えています。それにともなって法人化も絶対必要だと思っています。

売上の目標は3億円です。土地は今後も近隣の農家の高齢化で管理を頼まれることが多くなっていくと思うので、今のペースで拡大をしていければ、達成することは夢ではないと思っています。


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実家が農家なら、農業を継がない手はない!早くスタートした者勝ち!


農業を始めてよかったと感じている啓紀さん。
実家が農家で後を継ぐか迷っている人や、栃木県での就農に関心を持っている方たちに、メッセージをお願いします。


就農するかを迷っているのならば、早く始めることをおすすめします。

昔、にら農家の先輩に「50年農業をやっても、にらは1作2年かかるのだから、同じ圃場だと25回しか作れないんだぞ。迷ってると作れるチャンスを逃すんだぞ」と言われたことが記憶に残っていて。

農業を始めるのが遅くなると、栽培できる回数も減りますから、いつかやるつもりなら、早く就農して、たくさん経験を積んだ方がいいですね。


さいごに

新しいことを積極的に試し、事業を発展させている谷中さん親子。相談しながら二人三脚で農業を行う姿が印象的でした。実家が農家で、就農について悩んでいる方は、一度相談してみてください。


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