芳賀町の概要
芳賀町は、栃木県の南東部に位置し、周囲を宇都宮市、真岡市、市貝町、高根沢町に囲まれた自然豊かな町です。 工業団地を中心に工業も発展し、2016年から2023年まで8年連続で転入者数が転出者数を上回る社会増を達成しています。周囲から移り住んだ子育て世帯も多く、住宅地の開発も進みました。それに伴い商業施設も増え、生活の便利性が向上しました。
春に開催される「さくら祭り」は、毎年多くの人で賑わう人気のイベントです。LRT沿線の「かしの森公園」は桜の名所として知られ、公園周辺の道路に続く約1キロの桜並木が美しいトンネルを作り出します。祭りでは、露店が立ち並び、夜には桜がライトアップされ、幻想的な夜桜を楽しむことができます。
2023年には芳賀・宇都宮LRT(※)が開業しました。芳賀町と宇都宮市を結ぶ次世代型路面電車で、日本初の新設LRT路線として注目されています。交通の利便性が大幅に向上し、経済の活性化や環境負荷の軽減、交通渋滞の緩和にも貢献しています。
(※)芳賀・宇都宮LRTとは
芳賀・高根沢工業団地から宇都宮駅東口を東西に結び、全長約14.6キロメートルの区間を走る。車両の愛称は「ライトライン」。JR宇都宮駅西側への延伸も計画されており、整備区画などの調整が行われている。
芳賀町には、季節ごとに多彩な楽しみがあります。毎年12月に開催される「HAGAグルミネーションフェス」は、県東地区最大級のイルミネーションイベントとして知られ、地元の飲食店によるグルメ、アーティストによるライブ、手工芸品が並ぶ「ハガマルシェ」など、多彩な催しが一日中楽しめます。夜には5万球のLEDイルミネーションが輝き、打ち上げ花火も盛大に行われます。
芳賀町の農業
芳賀町は、豊かな自然環境と都市の利便性をあわせ持ち、都市近郊型農業に力を入れている地域です。特になしの栽培が盛んで、「にっこり」「豊水」「幸水」「あきづき」「新高」など、さまざまな品種が栽培されており、県内でもなしの主要産地の一つとして知られています。なしの栽培面積は70ヘクタール以上に及び、2020年から2021年には稲毛田地区でのほ場整備が進められ、なし畑の拡張が行われました。
新規就農者が農地を確保しやすいよう、積極的な支援が行われており、「なしの栽培を希望する方に向けた園地の見学会」などのイベントも開催しています。
また、なしの栽培拡大を目指し、農家への支援も充実。特に、栃木県で開発されたオリジナル品種「にっこり」の栽培に注力し、栽培拡大を支援するための補助金制度も設けられています。
芳賀町独自のなしの栽培拡大支援制度あり!
■にっこりの苗木購入に対する補助は100%!
「にっこり」の苗木購入費用については全額(100%)補助され、新規就農者や既存農家がなし栽培に取り組む際の大きなサポートになっています。
■推奨品種の苗木購入は1/3補助
「豊水」や「幸水」などの推奨品種の苗木購入費用については、1/3を補助。なし栽培農家を支援する仕組みが整っています。
■苗木購入以外にも、なし栽培に関する補助金があり、
ジョイント栽培などの新技術を使ったなし棚設置費の2/10を補助する戦略的果樹産地拡大支援事業も用意されています。
豊かな自然と都市近郊の利便性を活かし、施設野菜や畜産、稲作も盛んな地域です。特に、いちごやトマト、きゅうりといった野菜の施設栽培が広く行われており、中央部に広がる水田地帯では、減農薬・減化学肥料の取組など、環境保全型農業が推進されています。また、畜産も活発で、米農家と畜産農家が飼料作物とたい肥を循環させる取組を行う循環型農業や地産地消の推進に注力しています。
芳賀町では、過去10年間で15名、独立自営の認定新規就農者が誕生しています。品目は、いちご、なし、アスパラガス、にら、トマト、メロンとなっており、新規就農時の年齢は22〜40歳までと幅広く、比較的若い世代が多いのが特長です。
なしといちごに特化した研修プログラム
なし農家を始める人向けの研修と、いちご農家を目指す人向けの研修を用意しています。それぞれの研修生には、県や市、JA、農業公社などの関係機関が連携し、就農に向けたサポートをしています。
なし農家を始めたい人向け|芳賀地区果樹産地構造改革計画策定協議会
なし農家として就農したい人向けの研修制度です。管内の熟練農業者のもとで、1年間の研修を行います。研修期間中には実地研修のほか、就農計画づくりや就農準備(農地の確保やハウス設置など)を支援します。研修後も、栽培講習会や土壌診断結果の活用など技術修得支援、研修生の成長をサポートします。
[研修内容]
研修先での農作業実地研修
農業技術‧経営に関する基礎的な座学研修
新開発技術の試験や農地の土壌分析など
[研修期間]
1年間(毎年4~3月)
[研修費用]
無料
[対象]
研修修了後、JAはが野管内で就農・経営を開始すること
JAはが野の組合員になること
JAはが野の生産部会員として活動できること
[選考方法]
書類審査と面接審査の上決定
いちご農家を始めたい人向け|JAはが野新規就農塾
芳賀農業振興事務所とJAはが野が連携して行う、新規就農者を支援するための研修制度です。この研修では、管内の熟練農業者のもとで1年間の実践的な研修を行い、栽培技術や経営のノウハウを学べます。
[研修内容]
研修先での農作業実地研修
講習会等での研修 他
[研修期間]
1年間(4~3月)
[研修費用]
基本無料(研修開始の際に保証金が必要。保証金は修了後に全額返金されます)
[対象]
満18〜48歳
研修修了後、JAはが野管内で就農すること
JAはが野組合員・JAはが野生産部会員に加入となること
[選考方法]
書類審査・面接の上で選考
[募集人数]
6名程度
研修制度利用者インタビュー 岸田賢さん
栃木県芳賀町で2024年3月から10月まで、なしの新規就農者研修に参加した岸田賢さん。前職では輸出に特化した農産物の生産と販売を一貫して行うベンチャー企業で7年間勤務し、生産部門に6年間在籍。青森県でりんご、香川県でキウイ、茨城県でなし、栃木県(宇都宮市)でぶどうなど、さまざまな品種の果樹栽培を経験しました。
実家が商売をしていた影響もあり、働いているうちに自分も独立して事業をしたいという思いが強くなりました。前職での農業の仕事は大変やりがいがあり、その経験を活かして独立しようと決意しました。
なし農家での独立を目指し、栃木県農業振興公社に相談
前職でさまざまな作物の栽培に携わった経験から、果樹栽培には時間がかかることを理解していた岸田さん。安定した生活を築く難しさも感じていましたが、最終的にはなし栽培での新規就農を決断しました。
なしには以前から魅力を感じていました。当時は宇都宮市に住んでいたのですが、近隣になし栽培に適した環境があったことも決断を後押ししました。栃木県はなしの栽培が盛んですし、第三者継承(※)のような仕組みを活用して園地を引き継いでやっていけるなら、よさそうだなという印象を受けました。
(※)第三者継承とは
農業者の高齢化が進む昨今、後継者がなく農地や施設が活用されず、遊休農地となるケースも多く見受けられるようになりました。その一方で、新しく農業を始めたいと考える人も増加しています。
「第三者継承」は、先代農家に後継者がいない、または家族が事業を継ぐ意志がない場合、農家の有形・無形の資産を家族以外の人が引き継いで事業を継続する取り組みのことです。継承希望者と後継者がいない農家の両者がお互いに利益を得られる方法です。
なしの栽培について栃木県農業振興公社に相談したところ、2023年の秋に芳賀町から連絡をいただきました。将来的に規模を拡大していきたいと考えているのですが、確保できそうな就農地があること、町からのサポート体制がしっかりしていること、宇都宮市からも近いことなどが決め手となり、芳賀町で新規就農者研修を受けることにしたんです。
前職での仕事を続けながら新規就農者研修についての相談をしていたときも、とても柔軟に対応していただけました。本格的な研修に入る前に、土日を利用した剪定(せんてい)研修などにも参加させていただけて、サポート体制がとても手厚いと感じました。
引退するなし農家の園地を借りて研修スタート。2人の師匠が来て指導してくれる
新規就農者研修では、ベテラン農家のもとで学ぶスタイルが一般的です。しかし、岸田さんの場合は、前職での栽培経験が評価され、引退するなし農家から借りた園地で実際になしを栽培しながら研修を受けることになりました。ベテラン農家2名が岸田さんの指導を担当し、岸田さんのなし園に来て教えてもらう形で研修が進められています。
師匠の一人から、引退するなし農家の方を紹介していただき、その園地を借りて実地研修をしています。剪定や農園管理、経営に加え、2人の師匠からの指導を通して、それぞれの個性や技術の違いを学ぶことができ、とても勉強になります。さらに、市場出荷と直売所販売という異なる販路の経験を持つ師匠たちのおかげで、販売方法についても多くの知見を得ています。
基本的には師匠がこちらに来てくださっていますが、わからないことがあればこちらからお二人を訪ねて行って、すぐに相談できるので心強いです。
なし園での実地研修以外にも、芳賀地区果樹産地構造改革計画策定協議会で座学の集中講座を受けています。
部会の20〜30代の若手メンバーを中心に構成されている研究部は、栽培技術の共有や新技術の導入を進める場として機能しています。みなさん温かく優しい人たちばかりで、困ったときにはすぐに相談できる環境が整っているのもいいですね。
希望の農地がすぐに確保できるとは限らない。まずは相談を!
研修中の2024年8月には、なしの収穫作業が始まり、実質的に新規就農者としての活動がスタートしました。10月までは研修を継続しながら、同時に経営も行うスタイルを取っています。
岸田さんが借りている農地面積は約86a。今後、30aほど農地が増える予定ですが、将来的にはさらに面積を増やしていきたいと目標を語ってくれました。
師匠の紹介で引退するなし農家の方の園地を借りることができたのは、タイミングがよかったからだと思います。畑を手放される時期と引き継ぎたい側のタイミングがうまく合わないと、今回のような機会は得られなかったかもしれません。
芳賀町では一人ひとりに寄り添ったサポートをしていただけるので、新規就農者にはハードルが高いといわれる果樹栽培にチャレンジできました。就農を考えているなら、まずは県の相談窓口に相談してみてください。
まとめ
実地研修のほか、果樹栽培の基本や総論・各論などの座学も全6回実施され、新規就農者に伴走しながら独立の後押しをする芳賀町。なし農家を目指す人向けの研修だけではなく、いちご農家を始めたい人向けの研修も充実しています。研修では助成金や補助金の相談会も月に一度行われます。
また、芳賀地域では「なしで就農を希望する方へお譲りできる園地の見学会」などのイベントも開催。岸田さんのように経験を積みながら独立を目指したい方も、ゼロからスタートしたい方も、まずは相談してみましょう。
農地情報
芳賀町では、芳賀町農業委員会と芳賀町農業公社が窓口となり、各地区の農業委員や関係機関と連携しながら農地探しのサポートを行っています。農地の元で研修しながら、継承できる農地を紹介できる場合もあるので、是非ご相談ください。
空き家情報
芳賀町では40歳未満の若者等の住宅の購入や賃貸住宅の家賃に対して定住促進事業を実施しています。また、芳賀町ホームページでは賃貸・売買可能な空き家や、農地付き空き家の情報のほか、空き家バンクに登録された物件のリフォームや家財の処分に対しての補助も行っています。
相談窓口
【就農相談】
芳賀町農政課 農業振興係 TEL:028-677-1110
【移住定住相談】
芳賀町都市計画課都市計画係 TEL:028-677-6020