益子町の概要
益子町は栃木県の南東部に位置し、八溝山地と関東平野が交わるところにあります。豊かな四季が彩る里地・里山では、陶芸や工芸、農業を中心とした、地域の風土に根ざした暮らしが営まれています。
伝統行事、祇園祭の御神酒頂戴式(おみきちょうだいしき)は、内町・新町・田町・道祖土・城内の五町が毎年順に行っている当番受け渡しの儀式で、1年365日にちなみ、3升6合5勺入りの大杯に注がれた爛酒を飲み干し、五穀豊穣、無病息災、家内安全を祈願する夏の風物詩となっています。
豊かな自然環境が残る一方で、公共交通や買い物環境が整った住みやすい地域でもあります。交通の面では、町内を通る真岡鐵道と路線バスに加えて、近隣の芳賀赤十字病院への通院等には「いちごバス」や「デマンドタクシー」など地域交通による支援制度があります。
地域には複数のスーパーがあり、移動スーパーも営業しているため、買い物の利便性も確保されています。さらに、子育て世代向けの支援手当が充実しており、町全体で移住者を積極的に支援しています。
益子町では、毎年、ゴールデンウィークと11月3日「文化の日」を含む11月上旬の2回、「益子陶器市」が開催されます。メインストリートの城内坂通りには約600のテントが並び、益子焼の湯呑みやカップ、皿などの日用品から壺や花器などの美術品まで、さまざまな作品が展示・販売されます。陶器市では、陶芸家や職人たちとの交流も楽しむことができ、全国から多くの陶芸ファンや観光客が集まって町は大いに賑わいます。
益子町の農業
益子町では、露地野菜や米、麦の栽培も行われ、土地の特性に応じた農業が発展しています。丘陵地が多く小規模な農地が点在しており、年間平均気温は14.5℃と気温や降水量も適度にあるため、ぶどう、なし、りんごなどの果樹栽培をはじめ、いちごなどさまざまな作物の栽培に適した環境が整っています。
益子町は、県内いちご生産量の約4割を占める芳賀地域に位置し、いちごの栽培も盛んです。町内には、北関東最大クラスの「益子観光いちご団地」など複数の観光農園があり、県内外から多くの観光客が訪れる人気のスポットです。約100棟のいちごハウスでは、いちご狩り体験が提供されているほか、完熟したいちごを首都圏などへ出荷し、広範囲に流通しています。
野菜栽培の技術・知識の基礎を学びながら、益子の暮らしや文化を体感する
益子町には、新規就農や半農半X、移住、田舎暮らしなど、「農のある暮らし」をめざす社会人を対象に、交流を深めながら学べる「ましこ農の学校」があります。農業を学びながら、益子町での暮らしが自分に適しているかを見極めることができます。1年間の受講後、2年目には無料で再受講できる制度も設けています。
家族1名を同伴できるのも特長のひとつで、夫婦や子ども(18歳以下は人数に含まれません)連れで参加する方も多く見受けられます。
ましこ農の学校
益子町の農業の担い手や支え手となることを目的とし、週末に本格的な野菜栽培の技術・知識の基礎を学びながら、益子の暮らしや文化を体感できる学校です。
[主な受講内容] ※年度により内容や時期に変更があります。
(実習)
春 ・野菜の品目・品種の選定 ・肥料と農薬を上手に使う
・刈払い機の使い方
夏 ・夏野菜の収穫 ・秋野菜の種まきと育苗管理
秋 ・町内農家の見学 ・小型農業機械の利用方法
・マルシェ出店
冬 ・土づくりについて ・農業資材の利用方法
(座学)
春 ・農業機械の安全な使い方
夏 ・農地の貸借、取得方法について ・オンライン通販について
秋 ・加工品の開発から販売まで ・POP作成研修会
冬 ・SNSの活用について
[受講期間]
1年間(毎年4~3月)
授業は毎月2回/土曜日の9~17時頃まで
[受講費用]
授業料 年20,000 円
(20㎡の個人区画を希望する場合は、1区画あたり年5,000円と作付に必要な種子や苗、肥料、資材代等が自己負担となります)
[対象]
・実施年度の4月 1 日時点で満 18 歳以上の方
・将来、益子町内で就農など農のある暮らしを目指している方、または検討されている方
・ましこ農の学校の理念に共感いただける方
・学ぶ意欲のある方
※農業経験の有無や性別は問わず
※益子町外在住でも申込み可能
※町外に農地を所有している又は、借りている方は不可
※受講者の他、家族(夫婦、兄弟、親子など)1 名まで同伴可(18 歳以下は同伴人数に含まず)
[募集人数]
10名
益子町の新規就農者支援制度
益子町では、新規就農者向けに「新規就農者等支援事業費補助金」や「農業研修者受入支援助成金」などの支援制度が整っており、家賃補助や農業機械の導入費用の一部助成、研修費用の補助などが受けられます。
■益子町新規就農者等支援事業費補助金
対象:新規就農者
内容:家賃補助(上限月額2万円、3年まで)、農業機械・施設の導入費用(上限100万円)、
種苗購入費(上限5万円)など
■益子町農業研修者受入支援助成金
対象:新規就農を目指す方や農業法人
内容:研修費用の助成、農業法人などでの実務経験を通じた支援
上記に加えて、農業従事者向けに農業技術の向上や販路拡大に向けた補助金など、さまざまな支援が用意されています。これから農業を始める方にとって参入しやすい環境が整っています。
「ましこ農の学校」受講者インタビュー① 小谷悟さん
兵庫県出身の小谷さんは、大学卒業後に入社した貿易会社で、果物の輸入・販売業務を担当していました。退職後は医療機関のリハビリ技師として10年間勤め、現在もケアマネージャーの仕事を続けています。1年ほど前から、心身のリフレッシュとストレス解消のために、農園を借りて農業をしていたそうです。
実家が兼業農家だったため、幼少期から農業が身近な存在でした。ストレス解消のために、当時住んでいた埼玉県で農園を借りて畑仕事をやっていた時に、昔のように人々が助け合う田舎の暮らしに戻りたい、と思うようになってきたんです。もう少し大きな畑でやってみたいという気持ちもあったので、農業をしながら住める場所を探すようになりました。
益子町で「農ある暮らし」を実践するために、2024年に単身移住!
「できれば自分が育ったような、田舎の風景が残る場所がいい」と、2023年の夏以降に栃木県をはじめ山梨県や茨城県など、10県以上を見て回った小谷さん。最終的に益子町に決めたのは、道の駅ましこからみた里山の風景が、故郷の地とよく似ていたからだといいます。
妻と一緒に移住先を探しながら益子町へ来て「もうここしかない!」と思いました。景色も素晴らしいですが、移住相談をした道の駅ましこの「ましこのコンシェルジュ」の方がとても親身になってくださったんです。移住者一人ひとりを大切にしてくれる姿勢に感銘を受け、益子町への移住を決意しました。
2024年4月から「ましこ農の学校」の受講を開始。小谷さんは家族と離れ、7月に益子町へ単身移住しました。
「ましこ農の学校」は、毎月2回、土曜の9~17時頃までのカリキュラムです。家族を1名同伴できるので、妻も一緒に学んでいます。
現在は、私一人が益子町に移住し、妻と子どもは埼玉で暮らしています。妻は5年後にこちらに移住する約束になっていますが、保育士なのでこちらでも仕事ができるといいね、と話しています。
「ましこ農の学校」の受講生や講師陣は、前向きで明るい方が多く、いい刺激をたくさんもらえると話す小谷さん。同期は30〜60代と年齢層は幅広く、子ども連れで参加する人や夫妻で通う人など、さまざまな人が受講しています。
栽培から販売、食品加工まで幅広い講義が充実
「ましこ農の学校」では、苗の植え付けや収穫のほか、座学でインターネット販売の仕方やPOPの作り方など、幅広い内容を学習。また、食品加工場でのセミナーなどがあり、6次産業化の勉強もしています。
農業の基礎から学べるので、初心者にもわかりやすく親しみやすい雰囲気がいいなと思いました。専門的な内容もありますが、安心して学べる環境があります。
これまでの学習で印象に残っているのは、25mプール位の広さの畑に、みんなでさつまいもの苗を植えたこと。私にとっては新鮮でした。妻は、耕うん機などの農業機械を操作するのが楽しいようです。
目標は、農業を通して地域の人々とたくさんの交流を持つこと
小谷さんは卒業後、近所の方や農家仲間からの助言を得ながら、作物の栽培に挑戦したいと考えています。5年後をめどに、道の駅ましこの直売所へ自分の作物を卸すことが目標です。農業を通じて地域の人々とのつながりを大切にしながら暮らしていきたいと考えています。
新しいことへの挑戦は迷うことも多いと思いますが、飛び込んだら自分次第で世界は広がっていきますし、失敗からもたくさん学べます。益子町への移住を考えている場合は、「ましこ農の学校」はいい足がかりになると思います。学校に通うことでいろいろな人と知り合いになれますし、移住支援も充実しています。私は決断してよかったと思っています。
「ましこ農の学校」受講者インタビュー② 樋口清美さん
益子町出身の樋口さん。兼業農家を営む両親が高齢となり、今までは当たり前のようにもらえていた野菜の量や種類も年々少なくなり「自分たちが食べる分くらいは自分で何とかしなければ」と考えていた矢先に、「ましこ農の学校」の生徒募集の案内を見つけました。直感的に「勉強してみたい!」と思い、すぐに応募して第2期生として入学しました。
農業に興味を持ったのは、宇都宮大学農学部の農場で5年間パート従業員として働いたことがきっかけでした。事務や用務の仕事の合間に果樹や野菜の収穫の手伝いをしているうちに、「農業っていいな」と感じ、自分に合っていると思うようになりました。
「ましこ農の学校」で学んだスキルが販売にも役立っている
「ましこ農の学校」では、畑での実習を中心に、栽培管理や種まき、定植、追肥のタイミング、収穫といった一連の作業を学びます。また、チェーンソーや噴霧器、刈払機の操作方法についても指導を受けました。
座学では、外部講師によるSNSの活用法やインターネット販売の手法、加工品づくりの体験、POP制作などのカリキュラムがあり、樋口さんは、念願だったSNSの活用を始めることができたそうです。
料理が好きなので、SNSでは主に自家栽培した野菜を使った料理を投稿しています。
授業でPOP作りも勉強したのですが、もともと絵を描くことも好きで、販売アピール手法がとても参考になりました。農業知識はもちろんですけれど、販売方法も今まで経験のないことばかりだったので、ひとつひとつの授業が新鮮に思え、ましこ農の学校に通ってよかったな、と思っています。
テキストは、講師の方が自ら作ってくれたオリジナルで、とても貴重なものです。それを無駄にしないように、一生懸命覚えました。一度受けた研修は、忘れないうちに復習することがとても大事です。例えば、実習で植えたものと同じ苗を買って、自宅の畑に植えてみたり、実習で学んだ作業を自分で再現したりしています。家で同じことをやってみると、さらに理解が深まると思います。
6次産業化を実現し、オリジナル商品販売の夢を叶える
現在は、実家の畑の2aほどを借りて、スイートコーンやトマト、西洋野菜、金時人参、オクラ、金ごま、えだまめ、落花生、にんにく、秋うこん、葉菜類など、料理で使いたい野菜を中心に、少量多品目を栽培。通信教育で野菜ソムリエ資格も取得し、野菜の魅力を伝える準備が整いました。これまでの努力が実り、今年は、道の駅ましこの直売所での販売と、オリジナル商品製作の夢が叶いました。
以前、食品加工所で働いていた時に「いつか自分もオリジナルの商品を出せたらいいな」と考えていたんです。食に関する物づくりに興味があったので、なるべく町内または県産の食材を使用した「食べるラー油麹」を開発して道の駅で販売しました。現在は品切れ中ですが、改良を重ねたり、もっと他の商品も開発していきたいと思っています。
仲間との縁を大切に、無理なく続けたい「農ある暮らし」
学校卒業後は、同期生とはたまにイベントや地元の農家さんのお手伝いで会う程度になってしまったが、グループのネットワークがあって、いつでも繋がれるのは心強いという樋口さん。「農ある暮らし」に関心を持つ人に向けてのアドバイスを伺ってみました。
私は50代からのスタートだったのですが、興味があった農業を始めて良かったと心から思います。野菜や加工品の販売ができるようになったことはもちろんですが、同期生の殆どが農業未経験者で、アットホームな雰囲気の中で楽しく学んだ経験と時間は、自分の中でかけがえのないものとなりました。
益子町は自然が豊かで、作物が育ちやすい環境が整っています。また、農業の相談にも気軽に乗ってくれるので、農業を始めたい方はぜひ一歩踏み出してほしいです。
まとめ
野菜栽培・収穫からインターネット販売、SNSの活用術まで幅広いスキルを楽しく学べる「ましこ農の学校」は、農業技術に限らず、益子町での暮らしや文化を体感できる学校です。益子が好きで、農業にも関心がある方は、今の仕事を続けながら受講できる「ましこ農の学校」で、農ある暮らしを体験してはいかがでしょうか。認定新規就農者をめざしたい方には、本格的な農業研修を紹介してもらえるので、相談してみましょう。
農地情報
農地に関するご相談については、益子町農業委員会にて受け付けています。農地の売買や賃借、契約等について関係機関と連携して取り組んでいます。
空き家情報
益子町空き家・空き地バンクでは、農地付き空き家などの賃貸・売買物件情報を提供しております。また、町では新規就農者や子育て世帯に対して家賃の補助も行っています。
相談窓口
【就農相談】
益子町 産業建設部 農政課 農業振興係 TEL:0285-72-8853
【農地相談】
益子町 農業委員会 TEL:0285-72-8837
【移住・空き家相談】
益子町 総合政策課 移住サポートセンター(道の駅ましこ内) TEL:0285-72-5530