事例紹介

就農支援のスペシャリスト直伝! 就農を成功に導く5つの極意

40年以上農業に携わり、培ったノウハウを惜しみなく研修生に伝授するベテラン講師・福田朗さん。研修生の就農実績から「就農支援のスペシャリスト」とも呼ばれています。そんな福田さんに、就農を成功させるために大切なことを教えていただきました。情報収集時の大事なポイントや研修中に心がけるべきこと、それから就農支援者としての本音も…⁉



INFORMATION

福田 朗さん

ふくだ・あきら さん|有限会社農業生産法人かぬま 専務取締役 兼 新規就農事業担当。鹿沼市の農業振興事業に従事して42年。現在は、鹿沼市が行ういちご栽培の新規就農研修において、栽培技術の指導から研修後の農地確保のサポートまで携わる。特に農地のあっせん業務に深く関わり、農地の貸し手と借り手をつなぐ仲人役として活躍。研修生を確実に就農へと導いてきた実績から「就農支援のスペシャリスト」と呼ばれる。


【極意その1】就農に興味をもったら「農地」にも目を向けて情報収集


就農について興味を持ちはじめると、農業体験や研修についての情報を集めると思いますが、同時に関心をもっていただきたいのが「農地」について。農業をはじめるとき、農地は欠かせません。しかし、実際に確保するのはなかなか難しいのが現状です。新規就農の場合、農地の確保は賃貸を選択する方が多いのですが、空いている農地があるから、豊富な資金があるからといって簡単に借りられるものではないのです。


農地は、地権者の農家さんにとって大切な財産です。先祖代々から受け継ぎ、絶やすことなく農業を営んで今に至ります。それをお借りするのですから、借り手はいかに農家さんに信用してもらえるかがカギとなります。「他人に自宅の庭を貸せるか。自分の車を貸せるか。」と自分の財産に置き換えて考えてみると、農家さんの農地への思いがなんとなくわかるかと思います。農地にはそういった背景があることも知っておくと、準備段階で自分が何をすべきかがわかり、新規就農の実現に近づくことができます。


農地の情報については、各自治体の農業委員会で取得できます。こちらには農業委員のほかに、農地利用最適化推進委員がおり、管轄内の農地情報を的確に捉えていますので農地について詳しく知ることが可能。また、就農全般については市町の農政課にお問い合わせください。


農地探しについて相談


【極意その2】研修先選びは「農地のあっせん」までしてくれるかに着目


先にもお伝えした通り、農地の確保は簡単ではありません。せっかく研修を終えて技術を習得しても、農地探しに行き詰まる人がたくさんいます。農地の当てがある場合は別ですが、ない場合は、研修先が「農地の確保まで支援してくれるか」をポイントに探すことをおすすめします。


とくに着目していただきたいのが、ただ、空いている農地を紹介するのでなく、農地の「仲人」がいて、貸し手と借り手をつなぐ体制が整っているかということ。農地の仲人は、作物が実りやすい土地を知っているだけでなく、貸し手がどんな人なのかもよく知っています。また、貸し手との間に信頼関係が構築されているので、仲人がいることで格段に農地を確保しやすくなるのです。


鹿沼市の場合、いちごとにらの新規就農研修を行っており、研修後は農地の確保についても支援しています。鹿沼市農業公社が地権者の方々から預かった約430haの農地の中から就農予定者に合うものを紹介し、実際に借りるまでをサポートをしています。


研修先について相談


【極意その3】研修中はコミュニケーションを積極的にとる


さまざまなところで「コミュニケーションが大事」といわれますが、農業研修においても同じです。私はいちばん大事なことだと思っています。では、農業研修において「コミュニケーションをとる」とは、具体的にどんな行動を指すのかというと――


◎質問をする → 教科書には載っていない大事なことを習得

たとえば、いちごを栽培するとき、苗を植える向きや深さ、天気、土壌の湿度など、さまざまな要素の組み合わせが多く、教科書通りにいかない場面が多くあります。そんなときは、些細なことでも遠慮せずに質問をして自分のものにしていくことが大切です。この小さな質問の積み重ねが研修の成果に大きく影響していきます。


◎同期や先輩後輩と連絡を取り合う → 研修後も助け合う関係をつくる

栽培技術の習得も大切ですが、それ以上に大切といっても過言ではないのが、同期や先輩後輩たちとコミュニケーションを積極的にとって、研修後も助け合う関係をつくること。農業をうまくやっていくには、人との連携が重要です。周りとのつながりを持たずに孤立した状態でいると、情報が共有されず、それが命取りになることも。また、農業はひとりで問題解決をするのは難しい状況が多々あります。研修期間は、これから農業をやっていくうえで助け合える人間関係をつくるチャンスです。同期や先輩後輩と連絡を取り合って仲を深めましょう。


◎地元の人とふれあう → どんな人か知ってもらい、受け入れてもらう

就農を成功させるためには、就農先の地域にどれだけ溶け込めるかも大きなポイントです。できれば就農前から地元の方々と接して、自分がどんな人間かを知ってもらう機会をもつことをおすすめします。たとえば地域の行事に参加してみること。地域に馴染もうとする姿勢が伝わって信用され、いろいろサポートしてもらえる関係に発展することも期待できます。


【極意その4】実践研修では「観察力」を鍛える


農業で安定収入を得られるようになるためには、栽培する作物の出来栄えと生産量が重要です。まず、苗が元気でなければ実がならず、収穫はできません。病気や虫が原因で作物が弱ることもありますし、天候に左右されることもしばしば。収入の源となる作物を安定的に収穫できるようになるためには、毎日作物をよく見て、些細な変化に気づくことが肝要です。


たとえばいちごの場合、極端に言うと「今日のいちごとお話しできるようになること」が大切。ある時期の朝になると、葉の先端に水滴がついていることがあるのですが、これは朝露ではなく葉から出た水分なんですね。この現象が見られると、根っこの状態が良いと判断することができるのですが、日によっては葉の先端にあまり水が出ないことも。その場合は、それに見合った手入れをしなくてはなりません。こうした小さな変化に気づいて、随時対応していくことが成果に大きな影響を及ぼします。小さな変化を見逃さないためにも、日々、作物と接して状態を把握し、観察力を鍛えましょう。


【極意その5】なるべくお金をかけずにスタートさせる方法を探ること


熱意のある新規就農者ほど、意気込んで資材にお金をかけようとします。その心意気は素晴らしいのですが、実際には準備できる資金との折り合いがつかず、行き詰まるケースがよくあります。身の丈に合った資金計画をするのは当然ですが、私が資金の少ない研修生に指導するときは、はじめは単価の高い農業設備を取り入れることを諦め、稼げるようになったら少しずつ取り入れていくということです。


いちごの場合、高設栽培といって土を使わず、人が立ったまま作業できる栽培方法があるのですが、その設備費用は土耕栽培に比べると高価です。なので、いきなり高設栽培から始めるのではなく、代わりに作物がよく実る土地を紹介するのでそこでスタートし、稼げるようになってきたら高設栽培に順次移行するよう指導しています。


また、自治体の支援事業を利用して初期費用を抑えるという手もあります。引退する農家から資材などを引き継いで就農する「事業承継」や、荒廃農地をリニューアルしてから借りられる制度など、自治体によってさまざまな支援事業を行なっているので、それらを利用することも視野に入れ、無理のない範囲ではじめましょう。


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◎健康面と熱意

まずは健康面に心配がないか確認します。農業は1年を通して体を動かす作業が多いので、それをこなしていく体力があることが基本です。それから熱意「本気でやれますか?」という質問に即答できないようでは研修生として迎え入れるのは厳しい、というのが正直なところです。
 


◎支え合うパートナーがいる、または経営者として人を動かした経験があるか

先にもお伝えした通り、農業はひとりでやっていくのは難しい職業です。このようなことを言うと若い人たちの就農への足止めになってしまいますが、支え合うパートナーがいると励まし合ってやっていけるので、くじけにくい傾向があります。また、どちらかが農業以外で現金収入を得ていることもプラスになります。研修開始時から就農して生計を立てられるようになるまで、その間の生活資金をいかに工面するのかも重要な要素となるからです。

 

ひとりで農業をがんばろうという方も、まったくダメというわけではありません。十分な資金があり、経営者として人を動かしたことがある方でしたら、従業員を雇って仕事を任せることに慣れているので、農業においてもそれができそうな方だと判断できれば研修生として受け入れています。


◎地域に溶け込むことに前向きであること

「極意その3」でもお伝えしましたが、農業をはじめるには地域に溶け込むことが大切です。地域によっては昔からのならわしが色濃く残っているので、そういったことにも馴染んでいこうとする姿勢があると我々は安心します。また、私の場合は農地のあっせんもしているので、地権者の農家さんとうまく関係を築くことができそうかも重視しています。


【メッセージ】農業に興味のある人、就農を目指す人へ


さまざまな理由から農業を選んでくれる人が少なくなっていますが、私としては「農業って捨てたもんじゃない」と思っています。私自身、勤務しながら自宅の田畑でお米と野菜をつくっているのですが、毎回、作物が実って収穫できたときは、何ものにも代えがたい喜びを感じます。それが続けていくモチベーションになっています。収穫できることに喜びを感じられる人なら農業をうまくやっていけるのではと思います。なので、つくる喜びを得たい方、ぜひ農業を選んでください!


あとがき

今回は、鹿沼市の就農支援のスペシャリスト・福田朗さんに、就農までのステップにおいて大切なことをお聞きしました。鹿沼市は、研修から農地のあっせんまでの丁寧なサポートと、鹿沼市農業公社で400ha以上におよぶ肥沃な土壌を管理しているのが特長。もちろん、各市町によって研修内容や農地の紹介など就農までの支援体制は異なるので、就農について相談をする際には複数の窓口に問い合わせをして比較検討してみるとよいでしょう。


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