「とちぎ農業マイスター」は高い技術力と豊富な経験をもつ、新規就農者の指導者
とちぎ農業マイスターとは
「とちぎ農業マイスター」は就農希望者に栽培技術を教える役割を担う農業のプロです。就農希望者一人ひとりに対して編成される「就農サポートチーム」と連携して、研修生を受け入れ、栽培技術等の個別指導を行います。
とちぎ農業マイスター制度は、2020年にスタートし、これまで157名の精鋭農家が地域の研修機関における「とちぎ農業マイスター」として登録されています。このうち、2024年度は、28名のとちぎ農業マイスターが研修生の受入れを行っています。
対象品目は、いちごの他、なし、ぶどうといった果樹や、にら、アスパラガスなどの野菜、花き、酪農など、多岐にわたります。(2024年7月現在)
とちぎ農業マイスターになれるのは県内の精鋭農家のみ!
「とちぎ農業マイスター」になれるのは、優れた技術と豊富な経験を持つベテラン農業経営者に限られます。さらなる指導能力向上のための研修に参加するマイスターも多くいます。
<とちぎ農業マイスターの条件>
■次のいずれかに該当すること
- 栃木県農業士としての実績がある
- 指導する作物の栽培経験が5年以上または3年以上研修生への指導経験がある
■就農希望者を受け入れ、栽培技術や経営の指導、農地の取得などに関する支援ができること
とちぎ農業マイスターである宇都宮市のアスパラガス農家 坂本浩さんは、自身が苦労したことを次の世代に伝えたいと研修生を受け入れています。
当時はアスパラガスの研修先が地域内に1カ所しかなかったんですよ。それでは担い手になる人の選択肢が減るなと思ったんですね。
これまでに7名の研修生が来ましたが、自分がもっている情報や技術は惜しまずに伝えてきました。
希望する地域や品目のマイスターはいる?
「とちぎ農業マイスター」から学ぶ三大メリット
メリット①経験豊富な指導者から高い栽培技術を学べる
最も大きなメリットは、優れた技術をもつと認められたベテラン農業者から、栽培管理や農業機械・設備について実践的な研修が受けられることです。
とちぎ農業マイスターのひとり、いちご農家の小林秀男さん(佐野市)はこれまで複数名の研修生を受け入れてきました。
私のところで研修をしたうち、2名の新規就農者がJAの収穫量ランキングでトップ5に入ったんですよ。きちんと計画して、安定した収穫ができているのですね。
メリット②農地探しのサポートが受けられる
農地探しは新規就農者にとって大きなハードルです。「新規参入者の経営資源の確保に関する調査結果」※によると、「就農するとき農地の確保」に「非常に苦労した」と答えた回答者は33%。「少し苦労した」という回答も含めると農地探しに苦労した新規就農者は全体の66%にのぼります。
とちぎ農業マイスターのサポートのなかには、農地や設備の取得などに関する支援も含まれており、地域との橋渡し役として力を貸してくれます。実際に研修生の農地を見つけてくれた例もあります。マイスターのもとで学ぶうちに地域の人脈が広がり、農地情報が入りやすくなる可能性も。
佐野市では、農地探しや繁忙期の人手確保には苦労します。新規就農塾で研修を受けると、私たち研修先農家の地元のコネクションで支援しやすいんです。
※ 出典:新規参入者の経営資源の確保に関する調査結果(全国新規就農相談センター 平成30年度)
https://www.be-farmer.jp/uploads/statistics/RyxYJETfbUww65nf3VzZ202003171448.pdf
メリット③独立後の相談・支援が受けられる
研修を終えて個人事業主になると、自分がすべてのことに責任を持たなければなりません。そうはいっても栽培管理や経営で思わぬトラブルに見舞われることもあるでしょう。特に就農したばかりの時、頼りになるのが「師匠」であるとちぎ農業マイスターの存在。ときには地域や組織を巻き込んで、助けになってくれるはずです。
研修生を受け入れているにら農家の齋藤隆文さん(日光市)が所属するJAかみつが日光にら専門部会では、SNSでグループを作り、困っている人がいるとお互いに助け合っています。
就農すると想定外のトラブルが発生するかもしれませんが、例えば、もし病気になって動けなくなったら、連絡をくれれば誰かがヘルプに行きます。ですから、そういう不安はもたなくて大丈夫ですよ。
希望する地域や品目でマイスターを見つけたいなら
とちぎ農業マイスターから学べること
指導が受けられる新規就農希望者の条件
とちぎ農業マイスターから指導を受けられる新規就農者の条件は以下の通りです。
- 非農家出身者または新しい部門・品目で農業を始めたい人
- 指導を受けた地域で新規就農を予定している人
- 就農予定時の年齢が概ね50歳以下 ※経営開始資金の受給を考えている場合は50歳未満
- とちぎ農業マイスターの親族でないこと※三親等以内は不可
自分が条件に当てはまるか知りたいときは
とちぎ農業マイスターは、地域の研修機関による「就農希望者受入プログラム」の一環で研修生を受け入れ、主に栽培技術の指導を行います。
つまり、とちぎ農業マイスターから学ぶには、地域の研修制度を活用することが前提となります。
研修時間の目安
とちぎ農業マイスターのもとでの研修時間は月100時間以上(1日8時間以内)としています。
地域の研修制度のカリキュラムの一環として、マイスターの元での研修の他に、農業大学校等での座学研修が実施されることもあります。
研修期間は1年間
研修期間は、年間を通しての栽培管理を学ぶため原則として1年間です。栽培管理期間が1年(12カ月)に満たない作物の場合は、1年未満の場合もあります。
長い時間をともに過ごすことになるマイスターとの相性は気になるところですが、心配はいりません。就農サポートチームが就農希望者の目指すビジョンに合わせてマイスターを選定してくれますし、研修の前には数日間の農業体験やインターンを申し込むことも可能です。
研修内容
栽培管理期間を通じて、栽培管理、農業経営※など技術や知識を学びます。
※座学は農業大学校のとちぎ農業未来塾を併用する場合もあります。
佐野市の小林さんは、普段自身が行っている作業や工程など、実践に近い学びの場を提供しているそうです。
実際に就農するとなった時に、『こんなはずじゃなかった』と後悔しないように、研修中は私たちと同じ仕事を、同じ量やってもらうようにしています。卒業したら自分でやらなきゃいけないんですよ。その厳しさはきちんと伝えなければと思っています。
東京から栃木に移住して『齋藤いちご園』を営む齋藤龍介さん(宇都宮市)の研修では、スケジュール管理や税務など、農業経営についても教えています。
就農してしまうと、全てがあっと言う間に進んでいきます。就農って実は「起業」と同じなんです。しっかりとリサーチして準備をすることが大切で、そういった意味では、研修の一年間をどう過ごすかがその後の肝になるでしょうね。
研修修了生の齋藤康人さんは、齋藤さんから経営について学べたこともよかった点に挙げています。
起業マインドを持って、栽培技術の他に農業経営についてもしっかりと教えてもらえました。県外からの新規就農でも、ここまでリーダーシップを発揮して取り組んでいる齋藤龍介さんの姿勢にも惹かれました。
必要な準備や注意点
研修中には、次の2点を心がけてみましょう。
研修中はコミュニケーションを積極的にとる
- 質問をする → 教科書には載っていない大事なことが習得できる
- 同期や先輩後輩と連絡を取り合う → 研修後も助け合う関係をつくる
- 地元の人とふれあう → どんな人か知ってもらい、受け入れてもらう
実践研修では「観察力」を鍛える
小さな変化に気づいて、随時対応していくことが作物の安定的な収穫につながります。作物をよく見て、些細な変化に気づくことが大切です。
とちぎ農業マイスターから学ぶには|一人ひとりに合わせたオーダーメイド型支援
専属のサポートチームが就農後まで全力支援
栃木県ではワンストップ相談窓口でヒアリングした就農希望者の希望に合わせて、市町やJA、農業振興事務所など地域・産地の関係者が専属の就農サポートチームを編成。農業をスタートし、定着するまでチームでサポートするオーダーメイド型の就農支援のしくみをとっています。
とちぎ農業マイスターは主に、経営管理・栽培技術の習得部分を担当します。
栽培技術以外の支援も充実!就農サポートチームがマイスターと連携し、しっかりサポート
農業を始めるために必要なのは栽培技術だけではありません。就農計画の作成、融資手続、助成金の申請、農地の確保、各種認定制度、出荷販売、農業経営に関する知識など多岐にわたります。
農業振興事務所や市町、JA、農業振興公社など就農サポートチームのメンバーが、マイスターとも連携しながら、就農準備段階から営農開始後まで一人ひとりに合わせた方法でバックアップします。
まずは相談してみることからすべてが始まる
成功への近道!とちぎ農業マイスターのもとで学びたい
何か気になることがあれば、ぜひワンストップ相談窓口で気軽に質問したり、希望を伝えてみてください。ここが就農サポートチームによる支援の第一歩です!