情報記事
【日光市】通年収穫可能な「にら農家」、有名観光地の「いちご農家」を目指す!研修方法も選べる
日光市は栃木県の北西部に位置し、北は福島県、西は群馬県に接しています。世界遺産である日光の社寺、日光連山や華厳ノ滝などの観光スポットが多く、「日光を見ずして結構と言うことなかれ」という言葉があるくらい古くから人気の観光地です。
都市部からのアクセスがよく、「都市近郊農業」が盛んで、水稲をはじめ、にらやアスパラガス、いちごなどの施設野菜の栽培が盛んです。そんな日光市では、いちごとにらの栽培体験会の開催や1年間の研修制度を導入しています。
日光市の概要
1年を通してたくさんの観光客でにぎわう日光市。日光連山、中禅寺湖、華厳ノ滝、竜頭ノ滝、戦場ヶ原、湯滝、湯ノ湖といった風光明媚な場所や、世界遺産である日光の社寺、日光湯元温泉など、数多くの観光スポットを抱えています。夏季は比較的涼しく、冬は氷点下になる日も多く、その自然が生み出す自然景観の美しさが魅力です。
景勝地を訪れるだけでなく、いちご狩りを目的とする観光客も年々増加しています。
日光市の農業
日光市は、東京から自動車で約2時間。都市部へのアクセスの良さから「都市近郊農業」が盛んです。市域の87%は山林が占めますが、平坦地域では豊かな水と土壌に恵まれ、米を中心とした水田農業に加え、最近ではにらやアスパラガス、いちごなどの施設園芸も盛んに行われています。
研修制度
日光市で就農を希望する方を対象に、にら及びいちごの1年間の農家研修制度を設けています。
日光市 にら研修
[研修内容]
現役にら生産者(とちぎ農業マイスター)のもとでにら栽培の実地研修
※就農準備資金を活用する場合は、就農準備校「とちぎ農業未来塾専門Ⅰコース」で農業経営や栽培技術の基礎研修を受講すること
[応募資格]
- 18歳以上でおおむね60歳まで(就農準備資金を活用する場合は48歳まで)
- 日光市内で就農を目指している方
[主な就農支援]
- 農地の借入あっせん、ハウスの整備に関する支援
- 就農準備資金、経営開始資金(年額150万円、別途要件・審査あり)
- 就農後の技術支援
日光市 いちご研修
[研修内容]
現役いちご生産者(とちぎ農業マイスター)のもとでいちご栽培の実地研修
※就農準備資金を活用する場合は、就農準備校「とちぎ農業未来塾専門Ⅰコース」で農業経営や栽培技術の基礎研修を受講すること
[応募資格]
- 18歳以上でおおむね60歳まで(就農準備資金を活用する場合は48歳まで)
- 日光市内で就農を目指している方
[主な就農支援]
- 農地の借入あっせん、ハウスの整備に関する支援
- 就農準備資金、経営開始資金(年額150万円、別途要件・審査あり)
- 就農後の技術支援
研修先農家インタビュー(1)にら農家 齋藤隆文さん
にら研修生を受け入れているとちぎ農業マイスターの齋藤隆文さん。就農したきっかけは、ご両親が営んでいた水稲栽培を引き継ぐことになったからです。米だけでは経営が厳しかったため、知人のにら農家に栽培のノウハウを学んで2011年にスタート。1年目から25aの規模で始め、順調に収入を得ることができました。2年目に25a、2022年に10a拡張し、現在60aで栽培しています。
1年目は5月頃に定植し、その後株養成を行い、1年目の12月頃から2年目の11月頃にかけて続けて収穫する栽培方式で、高品質かつ安定した収量を確保しています。
にらは収入が安定しているのが魅力
にらは季節ものの野菜や果物と異なり、1年を通して安定して収入が得られることが大きなメリットです。ほぼ毎日出荷があり、その都度販売代金が振り込まれるため、金額の大小はあるものの毎日のように収入があります。
特に、栃木県のにらは高品質でブランド力もあり、価格も安定しています。
連続して出荷できない日は1年に10日もありません。朝刈って調整作業後に予冷庫で24時間冷やし、翌日出荷します。冬場は夕方に刈って翌日まで予冷して翌々日に出荷します。
収穫後にしっかり予冷することにより、日持ちするにらを消費者にお届けしています。
にら栽培は失敗が少ないのも大きなメリット。仮に台風でハウスが倒壊したら、トマトなどは茎が折れてしまうとそのあと収穫できなくなってしまいますが、にらは折れてしまったとしても、根元から刈ってしまえば30~40日後にはまた収穫できるようになります。やり直しがきくのは、新規就農者にとって安心できるポイントです。
研修での主な作業は収穫と出荷調整
にら農家の作業の8割を占めるのは出荷調整。刈ったにらの"はかま(収穫後の下葉の外側の部分)"を取り、出荷規格ごとに選別し、袋詰めして出荷用の箱に入れます。単純作業ですが、最初は意外と時間がかかってしまうので、繰り返し行って馴れることが大切です。
日光市の研修は4月から3月の1年間ですが、苗の植え付け、時期ごとの管理やハウスの被覆、収穫、12月の捨て刈り(品質や生育をととのえるために根元から3~4cmで刈り取り、捨てること)、翌年3月の種まき、とシーズン通しての作業を研修できます。実際は株養成の1年と収穫期の1年で2年間かかりますが、研修先の農家のハウス半分は収穫用、残りは株養成用に分かれているので、1年の研修でも両方学ぶことができます。
株養成のための作業も大切です。球根に養分をたくさん溜めないと翌年の収穫に影響が出てくるからです。
お互いに助け合うJAかみつが日光にら専門部会
齋藤さんが所属しているJAかみつが日光にら専門部会の会員は30戸ほど。SNSでグループを作り、困っている人がいるとお互いに助け合っています。誰かの機械が壊れたと連絡があれば、いまは使っていない人が貸し出して修理が終わるまでの期間をしのぎ、必要な機械は部会で購入して1日ごとのリース料を払うシステムをつくっています。
また、種まきは専門部会の農家が集まって共同で行います。今日の午前中は3軒、翌日はほかの3軒といった具合です。就農直後で育苗ハウスをもつことができない方には、余裕のある農家で苗を管理し、その分、管理料を支払うといったことも行っています。
就農すると想定外のトラブルが発生するかもしれませんが、例えば、もし病気になって動けなくなったら、連絡をくれれば誰かがヘルプに行きます。ですから、そういう不安はもたなくて大丈夫ですよ。
現在、施設野菜の農家は平均年齢が70代。今後、高齢でリタイアする農家も増えてくるので、その農地や空き施設を借りて新規就農を目指すにはいいタイミングなのではないか、と齋藤さんは言います。
うちに研修来てくださった方には、就農後のサポートや相談などお手伝いできると思います。日々同じ作業が続くので、楽しく作業できることを目指しています。
人が生きていくのにいちばん大切な食べ物を作っていくのはいいですよ。
INFORMATION
【にらの研修先農家 】齋藤隆文さん
従業員・パートは3名と、週末のアルバイトが2名。パイプハウス35棟、60aのほ場で5品種のにらを育てる。品種はグリーンベルト、ハイパーグリーンベルト、ゆめみどり(栃木県育成品種)など。その他、120aの水田で水稲も栽培。
研修先農家インタビュー(2)いちご農園 (株)日光ストロベリーパーク 沼尾浩明さん
沼尾浩明さんが勤めていた会社を辞めていちご農家を始めたのは2004年のこと。区画整備されたこの地域に、いちご農家がなかったこと、鬼怒川と日光の中間地点で観光に便利なことが、観光農園を目指そうと思ったきっかけでした。
当時、電気も電話もなく、動力線は2km離れたところから引き、電柱を立ててもらうところからのスタートでした。水が出るかどうかも不安でしたが、幸いなことに井戸は約10m掘ることで地下水を利用することができました。
いきなり観光農園を始めるのは難しいため、スタートから3年ほどはほぼ全量をJAに出荷をしていました。その後、観光農園50aを始めて法人化したのが2012年。現在は90aまで拡大しました。
育てている品種はとちあいか、スカイベリー、とちおとめ、紅ほっぺの4品種。12~5月のいちご狩りシーズンはいつでも大きく実ったいちごがとれるようにしています。
日光市でもいちご栽培はできる
栃木県は冬の日照時間が長く、いちご栽培に向いているといわれています。栃木のいちごはブランド力もあり、安定した価格がつきやすいのもメリットです。
ただ、日光市でいちごを始めると決めたとき、周りからは反対されたと沼尾さんは言います。標高が高く冬期の寒さが厳しいため、暖房などの経費が大きくなるという理由からでした。それでも実際に進んでいくうちに、日光の涼しい気候がいちごには合っていたと実感しています。
JAかみつが日光促成いちご生産出荷協議会の会員は10戸ほど。市場出荷や直売など、様々な販売方法に取り組んでいます。
日光市は標高が高く涼しいので、栃木県のほかの地域よりも収穫できる時期が長いんです。いちばん長かったときで10月下旬から7月上旬くらいまででした。寒くて暖房の重油代がかかっても、長い期間採れれば経費分を回収できます。
観光農園はゴールデンウィークには終わりますが、その後に採れたいちごは加工用にします。
観光農園はやりがいがある仕事
観光農園は生産物が評価に直結するため、ていねいに作業をしなければなりません。でも、それだけにやりがいはあります。
観光農園はほ場のほかに、販売所や駐車場も必要です。観光客用のトイレのことも考えておかなくてはなりません。ですから、市場出荷するよりも設備費がかかります。
観光農園を目指すとしても、最初はJA出荷から始めることをおすすめします。就農開始時は少人数で始めると思うので、出荷先を1か所に絞っておけば運送にかかる時間も少なくて済みますし、収入も安定しやすいです。
土耕栽培と高設栽培
沼尾さんのところに研修に来る方の中には高設栽培でやりたいと言う人もいるのだとか。ただ、高設栽培は10aで1千万円程度の費用がかかるうえに、土耕栽培に比べて栽培も難しいといいます。
高設栽培の設備にお金をかけるよりは、その分ほ場面積を広げることに使ったほうがいいと思います。
高設栽培のポンプが壊れるなどのトラブルもあって、1週間水やりができなくなったらもうその苗は使えません。いちご栽培に馴れるまでは土耕栽培をして、病害虫の問題などで必要があったら高設栽培を取り入れることをおすすめします。
日光市の研修の他、雇用就農も可能
日光ストロベリーパークのいちご栽培の年間スケジュールはおおよそ以下のとおりです。
日光市のいちご研修期間は4~3月。1年間で主な作業を体験して就農することも可能ですが、日光ストロベリーパークでは、2~3年社員として働きながら学べる研修生も受け入れています。雇用就農での研修も、日光市内で新規就農をすることが前提です。
雇用就農で3年間くらい研修をすると、ハウスのしくみもよくわかるようになるので、業者任せにせず適切なものが建てられるようになります。建ててからああすればよかった、と思わないように、研修でしっかり学んでほしいと思います。
いちご栽培に向いているタイプについてお聞きすると、マルチタスクが得意な人、メモをしっかり取る人、わからないことはマメに質問する人、と教えてくれました。
どんなに記憶力がいい人でも、翌年同じ作業をしようとしたときに忘れていることは多いので、そのときにしっかりメモして、わからないこともそのままにしない姿勢が大切です。
いちごを収穫しながら病害が出てないか、害虫がついていないか、ということを確認できないといけないんです。病害虫も早めに見つければ少しの農薬をまくだけで済みますが、いったん広がってしまうと防除するのが難しくなってしまいます。
いろいろなことに気付ける人は、いちご農家に向いていますね。
INFORMATION
【いちごの研修先農家】沼尾浩明さん
株式会社日光ストロベリーパーク 代表取締役。いちご狩りを中心に、採れたてのいちごの直売、加工品の販売、オンラインショップなどを営む。従業員数15名。第47回日本農業大賞、第57回農林水産大臣賞、第9回とちぎ元気賞(知事賞)の受賞実績をもっている。JAかみつが日光促成いちご生産出荷協議会に所属。
https://www.nikkoichigo.com/
さいごに
研修は農作業や農業経営について学ぶ以外に、就農後の人脈をつくることにもつながります。中には、農業は一人で黙々と作業するというイメージを抱いている方もいるようですが、農地を借りるのも生産物を出荷するのも人との関わりが大切です。研修中に、関わりのある農家や団体の人に顔を覚えてもらえれば就農後の活動もぐんとラクになってきます。
また、研修を始めてから「自分には無理」だとあきらめる人もいるのだそう。ただ、借金して就農してから辞めるのと、研修中に引き返すのとでは大きな違いがあります。そういうことを見極めるためにも、研修を受けてみることは大切です。
齋藤さんや沼尾さん、ほかの研修先農家さんたちも、やる気がある人には応えてくれます。最初の一歩を踏み出してみてください。
農地情報
日光市内での農地の貸借支援は、市農業公社で相談を受け付けています。ご希望の土地の地目・面積等の情報をお聞きした上で、担当が適した農地をご紹介します。
一般財団法人日光市農業公社
〒321-1272 栃木県日光市今市本町1番地
TEL:0288-22-7770
空き家情報
日光市内への移住や、都会との二地域居住等を希望する方向けに、日光市内の使用していない住宅や店舗の情報をウェブサイト等で公開しています。
問い合わせ先
〒321-1292 栃木県日光市今市本町1番地
日光市建築住宅課
TEL:0288-21-5164
HP:http://www.nikko-akiyabank.jp/
相談窓口
新規就農などの相談は、観光経済部農政課や農業委員会事務局で受け付けています。気軽にご相談ください。
〒321-1292 栃木県日光市今市本町1番地
日光市 観光経済部 農政課 農政係
TEL:0288-21-5171