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【宇都宮市】県都・うつのみやは農業王国!子育てしやすく利便性のよいトカイナカで農家を目指す

首都圏からのアクセスも良く、北関東最大の都市として知られる宇都宮市。都会的で暮らしやすいイメージがある一方で、「農業王国うつのみや」としての顔も持ち合わせています。新規就農を目指す人に「切れ目のないサポート」を提供している宇都宮市の農業の魅力と研修制度について紹介します。



宇都宮市の概要

2023年に開業したLRT。市内を走る新たな公共交通機関として期待されている

栃木県の県都でもある宇都宮市は、県のほぼ中央に位置しています。東京駅から新幹線でおよそ50分というアクセスの良さに加え、待機児童ゼロ、18歳まで医療費が無料になるなど、子育ての環境にも力を入れており、「共働きで子育てがしやすい街」「住みやすい街」などのランキングでも上位に選ばれています。2023年には次世代型路面電車システムLRTが開通し、老若男女が使いやすい新たな公共交通機関として注目を集めています。


宇都宮を拠点とするプロスポーツチームは自転車ロードレースのほか、サッカー、バスケットボールがあり、一年を通してスポーツ観戦が楽しめる

大谷石地下採掘場跡。大谷石を産出する宇都宮市では、石の建物と石塀が連続する町並みが形成されてきた

宇都宮市の農業

地域別に見る宇都宮市の農業

宇都宮市は鬼怒川水系を中心とする豊かな水資源、約10,000haにおよぶ肥沃で広大な農地、都市近郊に位置するという地理的な優位性など、農業にとって恵まれた環境を有しています。水稲のほか、いちご、にら、アスパラガス、トマト、なし等の様々な農産物が市内各地で生産されており、特に形が良く、糖度7度以上のトマトを「プレミアム7」、糖度13以上のなしを「プレミアム13」とするなど、「宇都宮ブランド」の推進にも積極的に取り組んでいます。


左「プレミアム7」のトマト、右「プレミアム13」のなし

 

 

農業王国うつのみやPV「トマト編」

 

 

農業王国うつのみやPV「なし編」


就農研修制度「認定就農研修制度 IN 先進農家」

就農前から就農後まで、切れ目のない支援が受けられる

宇都宮市の就農支援の特徴は、JAなどの関係団体と連携しながら、就農の三大障壁といわれる「技術の習得」「農地の確保」「資金の確保」の支援に力を入れている点です。検討段階から地域農業の担い手となるまで、切れ目のない支援を実施しています。

新たに就農を目指す人向けの研修制度としては「認定就農研修制度 IN 先進農家」を用意しています。研修品目は市の奨励作物の「いちご、アスパラガス、にら、トマト、なし」で、宇都宮市農業公社が選定した地域の先進農家のもとで実地研修を行っており、2014年からこれまでに計47名の研修生が独立就農を果たし、それぞれが意欲的に農業経営に取り組んでいます。
 

【認定就農研修制度in先進農家】
[研修開始時期]
4月1日から
[研修対象品目]
いちご、アスパラガス、にら、トマト
※先進農家:いちご12名、アスパラガス2名、にら1名、トマト11名(令和5年12月時点)

※令和6年度から「なし」を研修品目に追加(先進農家4名予定)
[対象者]
農業経営技術の習得に意欲のある市内在住(予定)者で市内就農者
就農時年齢が50歳未満
[定員]
5名程度
[研修期間]
おおむね1年以上かつ1,200時間以上
[給付金]
研修終了後、就農時に就農助成金を給付
・農家出身者  20万円
・非農家出身者 50万円


#事例紹介

「アスパラガス」の研修先農家、坂本浩さんは50歳で農家に転身!


経営移譲を予定している農家の農園やノウハウを受け継ぐ「第三者継承」をバックアップ

宇都宮市では農家の高齢化・減少に伴い、後継者のいないベテラン農家が持つ農業用機械・施設や栽培技術などを、農業経営に高い意欲を持つ新規就農者に引き継ぐ「第三者継承」にも力を入れており、これまでにトマトでの第三者継承を実現。令和6年度からは宇都宮市農業公社が実施する研修の品目に新たに「なし」を加えることで、新規参入のハードルが高い果樹栽培においても受入体制を整え、第三者継承を積極的に進めていく方針です。


就農後も手厚いサポートあり。宇都宮市独自の「資金確保支援」

宇都宮市では、就農後の設備投資に対する支援のひとつとして、独自の助成制度を設けています。

<補助制度の一例>
園芸作物生産施設等整備事業
園芸作物等を栽培するパイプハウスの設置費用および作業機械の導入費用の一部補助します。
[補助額]認定新規就農者:事業費の1/2以内で、補助限度額300万円


研修先インタビュー「齋藤いちご園」 齋藤龍介さん

『齋藤いちご園』の齋藤龍介さん

出身は東京、前職は飲食店。新天地でゼロからの就農

宇都宮市で『齋藤いちご園』を営む齋藤龍介さん。東京都出身で2011年に宇都宮市に移住、翌年2012年に新規就農者として市内でいちご栽培をはじめました。前職は都内で飲食店店長をしていたという齋藤さんですが、現在ではスタッフを常時10名以上抱える農園を経営し、地域を代表するいちご農家の一人として活躍しています。

異業種からの農業に参入したきっかけについて、齋藤さんはこう語ります。


前職の飲食店で調理していた食材を、どこで誰がつくったものかわからないまま利用していることに違和感を感じ始めたんです。それから少しずつ農業に興味を持つようになり、独学で調べたり、農業技術検定を取ったりもしました。


具体的な就農への意思を固めたのは、2009年に都内にて開催された「新・農業人フェア」でした。飛び込みで参加した齋藤さんでしたが、親身に相談に乗ってくれた宇都宮市に惹かれ、新天地での就農を決意します。
2011年に家族とともに移住。しかし、引っ越し当日の3月11日に起こった東日本大震災の影響を受け、波乱のスタートを切ることになります。なんとか一年間の研修を終え、翌2012年に独立就農に至りました。


スタートから大変でしたが、その分本当にたくさんの地元の方にお世話になりました。全くの新参者の私がここで農業をできているのも、皆さんの支えがあったからです。だからこそ、これから農業を目指す人には、自分の知っていることを出し惜しみなく教えたいと思っています。それが自分のできる恩返しだと思っているので。


創意工夫を重ねた農園経営

農業未経験ということと、全くの異業種からの転向ということもあり、齋藤さんは創意工夫を重ねた農業経営を実践しています。まず一つ目が「夜冷育苗施設」を組み合わせた栽培時期の調整です。光(日長)と温度を調整し、季節を錯覚させて生長を促すと、通常のハウス栽培よりも1か月ほど出荷時期を早めることができ、収穫作業が集中するのを避けることができます。二つ目が「小型ポット」での育苗。定植のために株を運ぶ際、通常は40株程度しか運べませんが、小さめの育苗ポットを使用することで、一気に120株ほど運べるようになるので、作業効率が上がって時間が短縮できるそうです。


育苗用の小型ポット

栽培用ハウスは50メートルのものが12棟。土耕栽培で全量「とちあいか」を作付け

農業経営までサポートする研修で後進を育成

齋藤さんの研修では、実地での栽培研修はもちろん、スケジュール管理や税務など「農業経営」についてもしっかりと教えています。2016年から毎年1人ずつ研修生を受け入れ、これまでの研修生は7名。うち5名が独立自営就農しました。


就農してしまうと、全てがあっと言う間に進んでいきます。就農って実は「起業」と同じなんです。しっかりとリサーチして準備をすることが大切で、そういった意味では、研修の一年間をどう過ごすかがその後の肝になるでしょうね。


研修生を受け入れることについて、「自分自身の学びにもなっている」と齋藤さん。研修生の新鮮な視点や疑問に答えることで、新たな気づきがあると言います。ゼロからのスタートだった自身の経験も重なり、これから農業を目指す人には「わからないことを少しでもなくしてあげたい」と優しく語る姿が印象的でした。


INFORMATION

【いちごの研修先農家】齋藤龍介さん

「齋藤いちご園」代表。東京都出身。前職の飲食店勤務から一年間の農業研修を経て、2012年に宇都宮市にて就農。現在、36aの栽培用ハウスと12aの育苗用ハウスを、10名のスタッフと研修生とともに運営している。栽培時期を早めるための「夜冷育苗施設」での栽培や、作業効率を上げるための「小型ポット」での育苗などの栽培方法を実践。2023年より栽培品種も全量とちあいかへと切り替えた。


研修修了生の齋藤康人さんと永井克俊さん

齋藤いちご園での一年間の研修を終え、新規就農を果たした齋藤康人さんと永井克俊さん。それぞれ就農1年目、2年目ということで、研修での学びと実際に就農して感じていることについて話を伺いました。


左から齋藤いちご園の齋藤龍介さん、中央が齋藤康人さん、右が永井克俊さん

就農を考えたきっかけを教えてください。


元はとび職として働いていたのですが、年を重ねるにつれて少しずつ実家の農地に興味を持つようになりました。そんなとき、宇都宮市の就農研修パンフレットを見てピンと来て、相談に行ったのがはじまりでした。


私も実家は水稲をメインにした農家だったのですが、両親が高齢になって農業ができなくなってきたので、継ぐことを決めました。元々は介護職だったので、異業種からの就農です。


齋藤いちご園での研修を受けて、良かった点はどんなところでしょう?


起業マインドを持って、栽培技術の他にも農業経営についてしっかりと教えてもらえたことですね。あとは県外からの新規就農でも、ここまでリーダーシップを発揮して取り組んでいる齋藤龍介さんの姿勢にも惹かれました。


私も経営面について教えてもらえたのはとても良かったです。齋藤龍介さんは農業未経験の自分に一から十まで、たくさんのことを教えてくれました。ぼんやりとした就農へのイメージを研修中にしっかり固めていくことができましたね。


齋藤いちご園のハウスで話を聞く修了生の二人

研修中に苦労した点はあるのでしょうか?


一番大変だったのは無収入になる、というところでした。研修中はダブルワークもできないので、ある程度の貯蓄は必要だと思います。あとは研修初日で想像以上に腰に来てしまって…(笑)。徐々に慣れていきましたが、ある程度の体力はやっぱり必要です。


現在、齋藤康人さんは就農2年目、永井さんは1年目ということですが、就農してみて感じていることや今後の目標を教えてください。


私は就農2年目ですが、今は家族の他にスタッフを3名ほど雇用しています。栽培面積も初年度の21aから今年は24aと、少しずつ拡大できています。今後の目標は「事前準備をしっかりする」ですね。一年目は思いがけない天候や病害に左右されたので、これからは対策をしっかりして、確実に収量を上げていきたいと思います。


私は2023年の3月に研修を終えたばかりなので、収穫はこれからとなります。農地は栽培面積が20a、育苗用が5.4a。始まったばかりなので不安半分、期待半分ではありますが、齋藤龍介さんから教わった基礎に忠実に、確実に成長させていきたいです。


研修での学びと、新規就農をした今の想いを語る齋藤康人さんと永井克俊さん

お二人とも若いながらもしっかりと自分の考えや目標を語る姿に、農業への真剣な想いが感じられました。何より言葉の端々から感じられたのが、齋藤龍介さんへの信頼です。これまでに研修で学んだことを実践し、自分たちも次に続こうという彼らの気概が、宇都宮市の今後の農業を盛り上げてくれることと思います。


まとめ

新規就農を目指す人へのサポートや補助制度が手厚い宇都宮市。北関東最大の都市という消費規模の大きさも相まって、販路開拓や農業経営にも工夫のしがいがありそうです。
地元で頑張っている農家はもちろん、齋藤龍介さんのような県外出身の新規参入者が活躍できる環境も、宇都宮市の魅力のひとつ。市では県外への出張相談会なども行っているので、気になる人はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。


農地情報

宇都宮市では宇都宮市農業公社が窓口となり、各地区の農業委員、JAなどと連携しながら、新規就農者を目指す人への農地探しのサポートを行っています。就農する際の課題の一つである「農地探し」ですが、貸し手にも助成金を交付するなどの独自制度を設けており、これまでのマッチング実績は100%。一方で納得のいく農地を見つけるには時間がかかります。ぜひ余裕をもって窓口へ相談してください。


空き家情報

「空き家・空き地活用バンク」にて空き家情報が掲載されています。掲載物件以外にも、協力事業者とのネットワークを生かした「マッチング事業」により、希望条件に近い物件情報を探せます。


相談窓口

宇都宮市での新規就農等の相談は、以下の宇都宮市農業企画課や宇都宮市農業公社などの関係機関で随時受け付けています。

【新規就農全般】
〒320-8540 栃木県宇都宮市旭1丁目1番5号
宇都宮市 経済部 農業企画課 担い手・農地調整G
TEL:028-632-2473 FAX:028-639-0619
Mail:u2325@city.utsunomiya.tochigi.jp

【農地・研修】
〒321-0954 栃木県宇都宮市元今泉7丁目10番20号
公益財団法人 宇都宮市農業公社
TEL:028-660-2701
Mail:unk@sea.ucatv.ne.jp


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