下野市の概要
下野市は穏やかな気候と平坦な地形のため、古くから災害が少ない地域で、農業が盛んに行なわれてきました。
商業施設が徒歩圏内に集約された市街地にはJR宇都宮線が通り、自治医大駅や小金井駅からは東京方面へ約80分でアクセスでき、首都圏に近く交通の利便性が高いのも特長です。加えて、東北自動車道や国道4号が市内を通っており、車での移動も便利です。
利便性を兼ね備えた暮らしやすい街として、株式会社東洋経済新報社が2024年に発表した「住みよさランキング2024」では栃木県内1位になった下野市。まさに、住むにも農業を営むにもうってつけな街です。
下野市は重要な史跡が数多く建立された地域でもあります。天平(てんぴょう)の丘公園周辺には下野国分寺跡や複数の古墳があり、下野薬師寺跡には復元された回廊の一部も存在しています。歴史的な特性と、古墳から飛鳥・奈良時代にかけての史跡等の数が、奈良県飛鳥地方と並ぶほどと言われていることから、「東の飛鳥」と名付けたプロジェクトを推進しています。
下野市の農業
下野市では米麦を中心に、ほうれんそうやたまねぎなどの露地野菜から、きゅうりやいちごなどの施設園芸まで、幅広く活気ある農業が行われています。なかでも、かんぴょうは日本一の生産量を誇る特産物となっており、全国の生産量の98%ほどを占める栃木県のなかでも、およそ6割を下野市で生産しています。
下野市は新規就農者も多く、毎年10人前後で推移しています。地域には、JAの生産部会や4Hクラブ、認定農業者協議会などの組織があることに加えて、同じ作物を栽培する農家間で技術を共有し合う自主的な動きも活発です。また、地域のベテラン農家が若手を支援し、新規就農者を地域全体でサポートする意識が強く、新しく農業を始める若者に対して協力的な体制が整っています。
ベテランから若手まで作物ごとの生産部会や世代を超えて、農業者同士のつながりが活発な「優しい地域」でもあります。
研修生と受入先農家をつなぐマッチング支援と、新規就農塾でのいちご研修
下野市で就農するにあたっては、研修生が希望する品目で研修が受けられるよう、研修生と受入先農家とのマッチング支援を行っています。また、いちごでの就農をめざす人には「JAおやま新規就農塾」のいちご研修が用意されています。
研修生と受入先農家のマッチングを支援する「下野市農業研修者受入支援事業」
下野市では令和5年度より、農業研修者と受入農家をマッチングさせる「下野市農業研修者受入支援事業」を行っています。研修者と受入先農家の情報を台帳に登録し、その情報をもとにマッチングが行われます。(令和6年10月時点で15品目24件の受入農家が登録済)
希望の栽培品目に基づいて受入先農家を紹介してもらえるので、いちご以外で就農を希望する人もぜひ相談してみてください。
「JAおやま新規就農塾」
下野市の一部を管内に含むJAおやまの「新規就農塾推進協議会」では、いちごの新規就農希望者を対象に1年間の研修「JAおやま新規就農塾」を実施し、就農に必要な技術の習得を支援しています。管内の先進的ないちご農家のもとで実技の研修を行うほか、とちぎ農業未来塾(栃木県農業大学校)での座学講習を並行して行います。
[内容]
いちご農家での実技研修(実際の農作業を通じての研修)
栃木県農業大学校とちぎ農業未来塾での受講(座学による農業技術・農業経営等の研修)
[研修期間]
1年間(毎年4~3月)
[研修費用]
就農準備校「とちぎ農業未来塾」受講料5万円(自己負担)
※その他、現地作業等に必要な備品(作業服や靴、消耗品等)についても自己負担
[対象]
●18~48歳
●研修修了後、JAおやま管内でいちご経営を開始すること
●JAおやまの組合員になること
●JAおやまいちご部会に加入すること
[選考方法]
申込書を提出後、書類審査と面接審査の上決定
[募集人数]
若干名
研修先インタビュー「小林いちご農園」小林一裕さん
下野市で「小林いちご農園」を営む小林さんは、元下野市職員。退職後にいちご栽培を始めて、現在7年目になります。実家はもともと米麦と葉物を栽培する農家でしたが、小林さんは就農にあたって収益性の高いいちごを選択。研修受入先農家として、栽培技術や経営管理手法等の指導や農地等の経営資源の取得の支援を行う「とちぎ農業マイスター」である小林さんに、お話を伺いました。
小林いちご農園は、小林さんとご子息、パート従業員数名で栽培を行なっています。
研修生への指導は、作業を始める前に技術的なポイントを丁寧に説明し、わからないことがあればその都度質問できるようにしているといいます。例えば、病虫害対策として薬剤を散布する際も、使用方法を詳しく伝えた上で散布を進めています。
私は同じ市内に住む叔父といとこがいちご農家で、彼らにやり方を細かく教わってから実践し、疑問に答えてもらいながら覚えていったので、そのやり方がスムーズだと思うんです。私も1年間「とちぎ農業未来塾」で学びながら、並行して自分で苗を育てて就農したので、その経験も活きていますね。
平坦な土地で自然災害が少なく水質がいい地域。いちご栽培に有利
いちごの栽培が盛んな栃木県では、県内で幅広くいちごが栽培されています。ここ下野市でいちご栽培を行う魅力について、伺いました。
下野市は平坦な土地が多く、台風などの自然災害が少ない。そして水質がいいと思います。いちご栽培では冬場にビニールハウスの内張りに地下水を散水して保温する「ウォーターカーテン」を使うんですが、「赤水」と呼ばれる鉄分の多い水質の地域だと、内張りが赤くなるんです。私は水道課の職員だったこともあるんですけど、下野ではそのような事例はほとんど聞いたことがないですね。
いちごに限らず、野菜を作るうえで気候や水質がいいこと、災害が少ないことは大きなアドバンテージになるはず。では、作物としてのいちごの優位性はどこにあるのか。小林さんはこう語ります。
いちごは一度株を定植すると、そこから繰り返し収穫できます。たとえば葉物野菜の多くは、一回採ればもう終わりですから。そして、いちごは収穫期間も12月から翌年5月までと長いので、生活するための収入も確保しやすいですね。あとは、栃木県が昭和43年(1968年)以降55年連続で生産量日本一を誇ることもあり、県や市のバックアップが手厚いこともあって、私はいちごを選びました。
いちご栽培に向いている人は、自分が立てたスケジュールに妥協しない人
身近にいるいちご農家の実例も見ながら、栽培作物としていちごを選択された小林さん。「作物とそれをつくる生産者には、相性がある」とはよく言われますが、小林さんが考える、いちご栽培に向く人とはどんな人なのでしょうか。
妥協しない人だと思います。どの作業においても、「このくらいでいいんじゃない?」と手を打ってしまう人はうまくいかないですね。一カ月単位で、この日までにこの作業をすると決めたら、必ずその日までに終わらせる。自分でタイムスケジュールを決めて、妥協せずに工程管理をして成果を出すことが大事ですね。たとえ天気や気候が悪くても、きちんと成し遂げていく。
現在受入中の研修生について、日ごろからさまざまな指導やアドバイスをされていると思いますが、就農に向けて農地確保のサポートもされているのでしょうか?
今来てくれている研修生は、東京から来た人で、本当に一所懸命にコツコツやっていますよ。今は農業界全体が高齢化や後継者不足、遊休農地の増加といった問題を抱えていますが、そんな状況のなか本気で取り組みたい人に対しては、こちらもきちんと手を差し伸べてあげたいと思いますね。
農地については市からも何カ所か紹介があって、いちごに向くかどうかという観点で一緒に検討しました。研修を受けている間に、引き続き関係各所と連携して探していくことになると思います。
いちごの新規就農者研修を受ける人に向けて、小林さんからメッセージをいただきました。
研修については、漠然とした気持ちで来てもらうのは困りますね。私自身、26年間勤めた職場を辞めたときは、息子はまだ学生でお金のかかる時期だったので、相当な覚悟と勇気が必要でした。みなさんも「この仕事をやって行くんだ」と、覚悟を持って挑んでもらいたいと思います。
INFORMATION
【研修先いちご農家】小林一裕さん
下野市にある「小林いちご農園」代表。農家に生まれ、市の職員として26年間、水道課や農業委員会事務局などで勤務。退職後にいちご農家として就農し、現在は30a(6棟)のビニールハウスを本人と息子+パート数名で管理する。令和元年「第13回いちご王国グランプリ金賞」受賞。優れた技術と豊富な経験を持つ農家を登録する「とちぎ農業マイスター」の一人でもある。
まとめ
自然災害が少なく県内でも比較的温暖な下野市は、いちご栽培をはじめとする農業に適した地域です。さらに、市が実施する「農業研修者受入支援事業」により、研修生と受入先農家のマッチングもサポートしています。安心して農業を始められる環境で、新しい農業の一歩を踏み出してみたい方は、ぜひ下野市での就農を検討してみてはいかがでしょうか。
農地情報
下野市では、農地に関する相談を受けたのちに農業委員会事務局が対応し、希望する地域の農業委員や農地最適化推進委員への農地の斡旋(あっせん)依頼を行います。希望に合う農地がすぐに見つかるとは限らないため、農地探しは余裕をもって進めましょう。
空き家情報
下野市では、「下野市空き家バンク」ホームページにて空き家物件を紹介し、空き家を購入・賃借したい方と所有者・仲介業者のマッチングを行っています。また、空き家の有効活用を図るため、登録物件の購入者に対して奨励金の交付やリフォーム等に要する費用の一部を補助する優遇制度もあります。掲載物件がないときもありますが、随時追加されますので繰り返しご確認ください。
相談窓口
農業を始めるためには知識・技術の習得はもちろんのこと、機械設備、農地、資金及び住まいの確保なども必要になります。下野市では相談、就農から経営安定に至るまで、各関係機関が一丸となってサポートを行っています。まずは農政課までご相談ください。
【就農相談全般】
下野市農政課 TEL:0285-32-8906
【研修受講に関する相談】
JAおやま(新規就農塾推進協議会) TEL:0285-33-4321
【農地に関する相談】
下野市農業委員会事務局 TEL:0285-32-8915
【移住・定住に関する相談】
下野市総合政策課 TEL:0285-32-8886
【空き家に関する相談】
下野市整備課 TEL:0285-32-8910