情報記事

【小山市】首都圏からのアクセス良好!田園環境都市おやま。とちぎ農業未来塾とベテラン農家による実践的いちご研修

栃木県南部に位置し、県庁所在地・宇都宮市に次ぐ県内第2の都市である、小山(おやま)市。いちごが有名な栃木県の南部に位置し、米麦・野菜・果樹・畜産などバランスよく生産している地域です。東京のベッドタウンとして都心に直結する交通や流通の便もよく、自然豊かな田園と便利な都市の顔をあわせ持つ、ちょうどいい街でもあります。小山市での新規就農について、研修生の声も交えながら紹介します。



小山市の概要

田舎過ぎず、都会過ぎない小山市の風景

栃木県南部に位置する小山市は、県内で2番目に人口の多い都市です。市街地の周辺には水田や麦畑の豊かな田園風景が広がり、農業、商業、工業が調和して発展を続けています。さらに、東北新幹線や国道4号、新4号国道、国道50号といった主要交通網により、都心や茨城県、群馬県へのアクセスが良好で、交通の利便性も大きな魅力となっています。



市南西部に位置する渡良瀬遊水地では、春の風物詩「ヨシ焼き」が行われます。湿地の環境保全や病害虫の駆除を目的としており、栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県の四県にまたがる約1,500ヘクタールの広大なヨシ原に火が放たれます。自然との共生を象徴する大切な行事として受け継がれており、大勢の観光客で賑わいます。


早朝や夕暮れ時のフライトもあり、美しい景観を楽しむことができる

立冬に開催される「おやまバルーンフェスタ」は、色とりどりの熱気球が空を彩る人気イベントです。熱気球のフライトや搭乗体験、地域の特産品販売なども行われ、家族連れで賑わいます。


「結城紬」は糸をつむぐところから機織りに至るまで全てを職人の手作業で行う

結城紬(ゆうきつむぎ)は、小山市に古くから伝わる高級絹織物で、その作業工程の一部が国の重要無形文化財にも指定されています。美しい絣模様(かすりもよう)も魅力で、着物や和装小物として愛され続けています。長い歴史と伝統を持つ、日本を代表する織物のひとつです。


小山市の農業

県内有数の農業地帯であり、田畑が広がる小山市

小山市は関東平野のほぼ中央に位置し、その恵まれた地形と温暖な気候を活かして様々な農業経営が行われています。市内を南北に流れる思川(おもいがわ)を境に米麦・施設野菜・畜産が盛んな「思川西部水田地帯」、露地野菜栽培が盛んな「思川東部畑作地帯」、鬼怒川沿線に肥沃な水田地帯が形成される「鬼怒川流域農業地帯」に分かれています。


小山市の農業マップ(イメージ)

思川西部水田地帯の施設野菜ではいちごやトマト、畜産では「おやま和牛」や「おとん」(豚肉)がブランド化され、盛んに生産されています。

思川東部畑作地帯では、はくさいやレタスなどの葉物野菜を生産する大規模農家がいるのが特徴です。


令和5年に「オーガニックビレッジ」を宣言

有機農業の推進などによりコウノトリが定着

小山市では、持続可能な地域農業の発展と、田園環境都市の実現に向けて、人・いのちを大事にする「有機農業」を推進しています。市内全体20ha以上の田んぼで有機米が生産され、市内の小中学校、義務教育学校の給食に使用しています。


県内有数の農業地帯であり、幅広い農産物の生産を行っているのが小山市の特徴です。また交通の便の良さから、首都圏への農作物の流通にも適した街となっています。


いちご農家を育成する研修制度「JAおやま新規就農塾」

とちぎ農業未来塾での研修の様子

小山市では、令和4年度にJAおやまと関係市町などが連携して「JAおやま新規就農塾推進協議会」を設立しました。令和5年からは、「JAおやま新規就農塾」において、いちごの研修生の受入を開始しています。この塾では、とちぎ農業未来塾(栃木県農業大学校)で基礎知識を学ぶだけでなく、管内の先進的ないちご農家のもとで栽培技術の研修を行い、「いちご王国とちぎ」を支えるいちご農家を育成するカリキュラムが用意されています。

これまでの実績としては、令和5年度に1名、令和6年度には2名の研修生を受け入れています。


【JAおやま新規就農塾】

[研修内容]

いちご農家での実技研修(実際の農作業を通じての研修)

就農準備校「とちぎ農業未来塾」の受講(座学・実習による農業技術・農業経営等の研修)

[研修期間]

1年間(毎年4~3月・週3日)

[研修費用]

・いちご農家での実技研修は受講料無料

 ※その他、現地作業等に必要な備品等については自己負担 

・就農準備校「とちぎ農業未来塾」受講料5万円(自己負担)

[対象]

●18~48歳
●研修修了後、JAおやま管内でいちご経営を開始すること
●JAおやまの組合員になること
●JAおやまいちご部会に加入すること

[選考方法] 

申込書を提出後、書類審査と面接審査の上決定

[募集人数]

若干名


研修先農家・研修生インタビュー

研修生 大山晃征さん(左)、小山市のいちご農家 中島英樹さん(右)

いちご農家 とちぎ農業マイスター 中島英樹さん

今回お話を伺ったのは中島英樹さん。代々続く米農家に生まれ、ご自身でいちご栽培を始めてから23年目になるベテラン農業者です。中島さんの農園で学びながら就農を目指す研修生・大山晃征(まさゆき)さんに研修の実際について聞きました。


定植間近のいちご苗。枯れた葉やランナーを取るなど細かな管理が欠かせない

中島さんの実家は代々続く米農家で、サラリーマンを経て就農しました。就農時からいちご栽培を始め、23年経った現在では20aのハウスで「とちあいか」を生産しています。

JAおやまいちご部会の部会長を7年間務めた中島さんは、それまでなかった研修生の受け入れ制度づくりにも尽力しました。部会員に受け入れ農家として登録してもらい、自らの農園でも研修生に学びの場を提供しています。


後進の育成に力を注ごうと思い、令和6年より研修生の大山くんを受け入れました。彼は「JAおやま新規就農塾」の2期生で、4月から週2日火・木曜日はうちで実技研修を受け、月・水・金曜日は「とちぎ農業未来塾」で農業技術・経営について学んでいます。


#とちぎ農業未来塾について詳しくはこちら


「JAおやま新規就農塾」の研修プログラムは、毎年4月から1年間、いちご栽培の流れに沿いながら学べる実践的なものです。いちご農家の実際のほ場と、とちぎ農業未来塾で、技術と知識を同時並行で学べるという手厚い内容。中島さんは大山さんに、どんなことを伝えているのでしょう。


「とにかく臆病になって、病気を出さないように防除(適切な農薬散布)すること」。これは口が酸っぱくなるくらい繰り返し伝えています。どんなに忙しくて大変でも病虫害の防除だけはしっかりしましょう、と。いちご栽培は、楽天的な人よりも臆病になれる人のほうが向いていますね。そしていざという時だけ大胆になれる人が成功します。いちごの生理生態を理解したうえで、時にはマニュアルどおりではない勝負に出られる経験と決断力も必要です。


苗づくりや定植、収穫といった作業の進行に合わせて、必要なことを段階を追って伝えるという中島さん。一つひとつの作業を着実に行う師匠の姿は、取材に同席された大山さんにも大きな影響を与えているようです。


師匠は積み重ねてきた技術、たとえば防除についても確実に実行されるので、周囲のほ場で病気が出ているときでも、師匠のところでは出ないんです。これは本当にすごいことだと思います。とちぎ農業未来塾で教わってくることの答え合わせにもなっていて、今後につながるいい経験をさせていただいています。


奇をてらうのではなく、基本をしっかり守った栽培方法を伝える

ハウスの前で、中島さんの言葉に耳を傾ける大山さん

JAおやま新規就農塾は現在2期目でまだ新設されて間もないため、研修生の指導にあたっては、いちご部会の受け入れ農家同士でも情報交換しているといいます。


「自分たちがやってきたことを、研修生にちゃんと伝えましょう」と話していますね。特別変わったことをする必要はなく、基本をしっかり守った栽培方法を教えることが大事です。
うちの部会は穏やかな人が多いですが(笑)、我々も逆に研修生から教わろうという気持ちが強いんです。研修生の質問に答えることで気づかせてもらったり、考えさせられることも多いですから。彼らがとちぎ農業未来塾で習ってきたことも確認してから作業しますよ。我々も固定観念に縛られていることがあるので、最新の技術や情報は取り入れるようにしています。


中島さんのもとで研修中の大山さんは、栃木県佐野市の出身です。妻の実家がある小山市でいちご農家になるべく、JAおやま新規就農塾に参加しました。


農業についていろいろ調べているときに、「tochino(トチノ)」のサイトを見てメルマガにも会員登録をしました。

子どもが「とちあいか」を喜んで食べてくれたこと、ハウス内で栽培するので、天候に左右されない点もいいなと思い、いちご栽培を選びました。
生まれ育った栃木県、そして縁のできた地域に貢献したいと考えています。体力的にはつらいこともありますが、自分が好きなこと、楽しいことをやっていれば負担にならないですね。


やる気があればどんどん上にのぼっていけるのがいちご栽培の魅力

苗を定植する準備に入った栽培ハウスの前で

ベテランいちご農家である中島さんに、新規就農者の栽培品目としていちご栽培を勧めるとしたら、どんな理由を挙げられるか聞いてみました。


実は私は「いちごはいいよ」と勧めたことはないんです。確かに高単価だし稼げるけれど、始めてみると本当に休みがないですから。ただ、1年間の流れを理解して作業できるようになると、栽培がとても面白い。さらに、やる気があればどんどん上にのぼっていけるのが魅力的だと思います。あとは今のように自然災害が多い時代だと、子どもが小さい時期に自分が家にいて、一緒に過ごせるのは安心ですよね。


師匠である中島さんが、今後いちご農家の後輩になる大山さんに向ける眼差しには、あたたかさを感じます。そこにはどのような想いがあるのでしょうか。


大山くんの場合は、マイホームを購入してからいちご農家を目指すという点が自分と同じだし、お子さんが3人いるので大変だと思いますけど、始め方が同じだからこそ自分と重なって見えます。自分が教わったことや学んできたことをちゃんと教えたいと思いますね。大山くんだけでなく、隣にいる家族の未来も見据えて教えている感じです。


とても厳しい世界だと思って飛び込んだのに、本当によくしていただいて。自分はもちろん、家族にも安心してもらいながら研修を受けさせていただいています。


彼に限らず、研修生として受け入れたからには失敗させたくないですね。いちごはやった分しか返してくれませんが、やった分だけ返ってくるので頑張りようがあります。就農してから5年は特に慎重にやってほしいなと思います。


若い世代の就農が増えている!いちご栽培を始めるなら小山で

今は担い手がどんどん減っていて、いちごの場合も10年後はどうなるかわからないと思っていたんです。しかし、ここにきて若い人たちが増えていてありがたいし、小山の農業ももっともっとよくなる兆しがあります。品種もちょうど「とちあいか」に替わる時期で、大変ではあるけれどチャンスでもありますね。


小山市のいちご部会は人数的にも多すぎないため、何かを決めるときにも話がまとまりやすいんです。ここ5年ほどかけて、量よりも品質でトップを獲ることを目指し、市場で得られる評価も高くなってきました。このタイミングでどんどん若い人たちに参入してもらえればうれしいですね。


INFORMATION

【研修先いちご農家】中島英樹さん

小山市内でいちご農園を営む、中島園芸代表。米農家に生まれ、自身が就農するタイミングでいちご栽培に転換して23年目。20aのハウスで以前は「とちおとめ」を栽培していたが、令和6年度より全量「とちあいか」に切り替えた。小山市いちご部会の部会長を務めたこともあり、その教え子は多数。


まとめ

都心へのアクセスの良さに加え、田園風景と都市の両方が広がり、新規就農者をあたたかく迎える小山市。就農を目指し、周囲のサポートを受けながら準備を進めたい方は、「JAおやま新規就農塾」での研修をぜひ検討してみてください。


農地情報

小山市では、農地利用最適化推進委員のサポートを受けながら農地を探すことができます。希望に合う農地がすぐに見つかるとは限らないため、経営開始時期を考慮して計画的に農地探しを行う必要があります。


空き家情報

小山市では、空き家バンク制度を活用して空き家を探すことができ、リフォーム等に関する補助制度もあります。「小山市空き家バンクホームページ」には新着の空き家情報や補助制度の詳細が掲載されています。


相談窓口

小山市では、現状は市内在住やUターンによる新規就農者が多いですが、首都圏との行き来や流通の強みを考慮して、移住での就農を検討される方からの相談も受け付けています。市の窓口を訪ねるか連絡すれば関係機関と連携したサポートが受けられるので、まずは一度相談してみてください。

 

【就農相談全般】

小山市農政課 TEL:0285-22-9255

【移住・定住に関する相談】

小山市田園環境都市推進課 TEL:0285-22-9376

【空き家に関する相談】

小山市建築指導課 TEL:0285-22-9233

【農地に関する相談】

小山市農業委員会事務局 TEL:0285-22-9243

【農業技術・支援策に関する相談】

下都賀農業振興事務所 TEL:0282-24-1101

【農業技術・営農資金に関する相談】

JAおやま TEL:0285-33-4321

 


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