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加藤 紘敬さん
かとう・ひろたか さん | 栃木県さくら市出身。群馬県の大学を卒業後、市役所臨時職員を経て教育関連企業で勤務。退職後、地元の栃木県に戻り、菅谷農産で働く。農園の法人化に伴い、正社員にキャリアアップ。2024年、雇用就農8年目となり現在は農場長として現場作業に加えスタッフへの栽培方法の指導なども担当している。
株式会社菅谷農産の会社概要
所在地:栃木県真岡市
栽培品目(栽培面積):ねぎ(36ha)、水稲(33ha)、にんじん(16ha)、キャベツ(10ha)、にら(3ha)
従業員数:正社員9名、パート従業員等37名(外国人技能実習生含む)
※新規就農予定の研修生2組・3名在籍(令和6年度)
ホームページ:https://www.sugayanousan.com/
教育関連企業を退職後、姉のすすめで農業の道へ
就農前の経歴について教えてください。
群馬県の大学に進学し、教育や福祉の勉強をしていました。卒業後は、地元で市役所の臨時職員や群馬県で教育関係の会社で働き、退職後に栃木県に戻ってきました。
農業に関わることになったきっかけは何だったのでしょうか?
退職後、農家に嫁いだ姉から「農業を手伝わないか」と誘われたのがきっかけです。それが現在の菅谷農産なのですが、当時はまだ個人経営の農家で、次の仕事が決まるまでの手伝いのつもりで働き始めました。
就農以前は、農業に対してどのようなイメージがありましたか?
「体力的にきつい」「地道な作業が続く」「仕事には丁寧さが求められる」というイメージでした。農業が本気で好きな人でないと、簡単には踏み込めない世界だと思っていました。
姉に誘われなければ、農業に関わることはなかったかもしれません。
就農してみて、農業に対する印象は変わりましたか?
とにかく「体力勝負」だと実感しました。屋外での作業が多いので、当然ですが夏は暑く、冬は寒い。体調と健康管理には気を付けるようになりました。
それと、農業が「おもしろい」と思うようになったんです。以前からモノづくりには興味があったので、やったことがなかった分野で知らないことを覚えていく楽しさを感じましたね。
未経験からスタートし「農場長」に昇進。会社の中核を担う存在に
職場の法人化は、自分自身の成長のチャンスだと感じた
加藤さんは、菅谷農産で正社員へキャリアアップされました。本格的に農業を仕事にすると決めた理由は何だったのでしょうか?
きっかけとしては、菅谷農産が個人経営から法人化したことが大きいです。
私が入社した当時の菅谷農産は、従業員がまだ10名ほどでした。しばらくして法人化が決まり、正社員にならないかと社長から誘いを受けました。
最初から大きな農業法人で働くのではなく、小さな経営体から少しずつ大きくなる会社とともに、自分自身も成長できるチャンスがあるのでは?と思い、正社員になることを決めました。
菅谷農産では、これまでどのような業務に携わってきましたか?
はじめは未経験ということもあり、2~3年は先輩について一から基礎を学びました。畑で扱う農業機械も手押しの管理機などに限られていて、作業場ではパートさんたちと同じ作業をしていましたね。
収穫や出荷調製など栽培に関わる一連の作業をひとりでこなせるようになると、大型農業機械を使ったほ場管理を担当するようになりました。
教えられる立場から、スタッフ全体の指導役へとステップアップ
現在、役職などはありますか?
農場長というポジションで働いています。
後輩に仕事を教えていたのが、外国人技能実習生の増員にともなって、彼らへの指導も担当するようになりました。
全体をまとめる立場になり、1日の作業を把握してスタッフに伝えています。現在は、栽培を中長期的に捉えて指示が出せるようになりましたね。
農業法人への就職は、栃木県農業振興公社のワンストップ窓口へ
通年栽培で安定雇用が担保され、働きやすく、頑張りが報われる職場環境
市内の農家とも提携し、独自の販売ルートが確保されている
菅谷農産についてお聞きします。栽培している品目と、販路について教えてください。
通年でねぎを栽培しているほか、水稲、にんじん、キャベツ、にらの5種類を扱っています。
市内の提携農家が生産した野菜を集荷して販売することも行っており、関東から関西までさまざまな地域へ幅広く出荷しています。
販路は自社の営業チームで開拓しており、直接取引や付き合いのある仲卸への販売がほどんどです。
夏季・冬季休暇の取得や、業績に応じて昇給や賞与も支給される
現在の勤務状況について教えてください。勤務時間や残業などはどのようになっていますか?
勤務時間は原則として8~17時です。作業の準備・片付けをしたり、季節や状況によっては1時間程度時間外勤務になる場合もあります。極端な残業や勤務時間の変動はありません。
休日・休暇はどのくらい取得できますか?
毎週日曜日が定休です。もちろん、事前に申請すれば平日に休みを取ることもできます。その他、夏季と冬季にそれぞれ3~4日の休暇もあります。
休日は、地元の友人と遊ぶことが多いです。ゴルフに行ったり、草野球をして楽しんでいます。就農するまで県外にいた分、気心の知れた友人を気軽に誘えるのは地元の良いところですね。
給与や賞与についてはいかがですか?
業績が上がれば給与もアップしますし、賞与も年に数回いただいています。年々、会社の規模が大きくなっているので、頑張った分だけ収入も上がっています。
正社員やパート従業員のほか外国人技能実習生も多数在籍されています。社内の雰囲気はいかがですか?
雰囲気は明るいですよ。ここでは農家経験の長い先輩やベテランのパート従業員、他業種から転職して働いているスタッフ、外国人技能実習生などさまざまな人たちが働いています。スタッフから学ぶことも多いですし、外国人には日本の文化を受け入れてもらえるように、頻繁にコミュニケーションを取っています。
国籍を問わず、みんなで和気あいあいと働いていると感じています。私個人としては、異文化交流のような感じで楽しみながら、接しています。
農業法人への就職は、栃木県農業振興公社のワンストップ窓口へ
農業法人の現場で培われた人間力。自分自身の成長を実感
「即断即決」ができるようになり、仕事への責任感が増した
雇用就農8年目を迎えられ、入社当時と比べ、ご自身で何か変化を感じることはありますか?
自分自身が成長したなと感じるのは、「即断即決」ができるようになったことでしょうか。
作物は待ってくれないので、収穫の時期に間に合わせるように、さまざまな段取りをしていかないといけません。
日々の仕事の中で、社長や経営陣が方向性を指示し、現場に出たら自分が決断して処理をしないといけない場面が多々あります。
自分はそういうところが弱かったですし、他人に意見を委ねたりする性格だったと思います。そんな自分が指示する側に回り、状況を見て即座に判断できるようになったことは大きな進歩だと感じています。仕事に対する責任感も強くなりました。
同じ作物でも毎年同じように育つとは限らない。それも農業のおもしろさ
農業にやりがいを感じるのはどんなときですか?
よく利用している飲食店の方が、野菜を直接買いに来てくださることがあるんです。自分がつくったものが美味しく調理されて提供されるのは、何とも言えないうれしさがあります。
私たちがつくった野菜が、店頭から各家庭や飲食店にわたり、たくさんの人に食べてもらえることを想像すると、頑張ろうと思えます。
作物ひとつを取っても、同じものが毎年できるとは限りません。気候も変動しますし、品種ごとに適切な対策を考えたり、その年ごとに育て方を変えたりする必要があります。みんなで話し合って、試行錯誤するのも楽しいですね。
農業に楽しさを感じている反面、大変だと思うことはありますか?
安全管理には気を付けています。特に私は、農場長として全体をまとめる立場です。自分自身も現場で作業をしながら、スタッフが怪我をしないよう目を配る必要があります。畑では収穫のときに指を刃物で切ったり、トラクターなどの大型機械による事故なども起こったりします。意外と農業には怪我や事故が多いのです。
また、会社の規模が大きくなり作付面積が増えたことで、ほ場管理が忙しいです。常に時間に追われるプレッシャーは感じます。
農業法人で働くなら、栃木県農業振興公社のワンストップ窓口へ
ひとりじゃないから助け合える。農業法人で働くことの魅力
季節に左右されがちな農業。ここでは年間を通して安心して働ける
菅谷農産で働く上で、どんなことにメリットを感じていますか?
農閑期がなく、年間を通して作物を栽培・出荷しているので、季節を問わず毎月安定した収入が確保でき、安心して働けます。販路も品目ごとに契約している出荷先があり、関東から関西まで幅広く複数箇所へ販売できるのは大きな安心材料です。
年間を通して忙しいので大変なときもありますが、それでも仕事がずっとあるというのは雇用される側にとってはありがたいことですよね。
菅谷社長は、有言実行の人です。経営目標を定めたら確実に実行に移します。従業員にも「目標に向かって進んでいる」という安心感を与えてくれる存在です。
スタッフの失敗には寛容に対応してくれますが、だめなときはだめだとはっきりと指摘してくれる厳しさもあり、尊敬できる人です。
農業法人で働くメリットは何だと思いますか?
足りないところを補い合えるところと、刺激が多いところです。
弊社では、私のような未経験者から長年農業に携わってきた方、独立就農を目指す農業研修生などさまざまな人たちが一緒に作業をします。正社員でもわからないことを、パートさんが助けてくれることもあります。協力し合うことで安心できますし、もっと頑張ろうと刺激にもなります。
また、新しいことに挑戦しやすいのも魅力だと思います。
新しい品種への挑戦や栽培方法の変更、販路の拡大など、業績を上げるためにやるべきことはたくさんあります。個人だと資金面の心配から、なかなか思い切った挑戦は難しいかもしれません。しかし、法人の場合はひとりではないので、プレッシャーが緩和されるのも良いところだと思います。
農業法人での雇用就農を考えた場合、入社前に会社のどんなところを見ておくべきだと思いますか?
最低限の休暇が取れるかどうかは、確認しておいた方がいいです。独立前に経験を積むにしろ正社員で働くにしろ、長く続けていくにはしっかり体を休めることも必要です。
加えて、出荷先も調べておくのもおすすめです。弊社のように、さまざまな地域に複数の出荷先があれば、ある程度収益が安定します。出荷先が少ないと、その取引先に何かあった場合、損失になりかねません。精神的に安心できることも大切です。
知識より大切なのは「自ら考えて仕事を作り出す力」と「人とのコミュニケーション」
ここで、菅谷農産の菅谷拓夫社長にもお話をお伺いしたいと思います。「農業法人で働く上で求められること」はありますか?
「自分で仕事が考え出せる」ことは大切です。
農業は、種まき、定植、雑草の除去から農薬の散布、水やり、収穫…と、段階ごとにやることがたくさんあります。また、畑が何カ所にも点在しているので、ひとつ仕事が終わったら次、その次と、指示がなくても自ら動いたり、気付けることが大切ですね。
農業は、黙々とひとりで作業すると誤解されがちですが、多くの人が働く農業法人では、人と接する機会が多いです。スタッフ同士で連携が取れなければ作業が進みません。弊社では外国人技能実習生もたくさんいて、彼らに技術指導をします。技能実習生たちに信用してもらえなければ、その後の信頼関係が築けません。
そのほか、取引先や資材メーカー、農業機械の販売店、近隣の農家や住民との付き合いも多いので、人とのコミュニケーションは必須なんですよ。
農業法人での就職は、栃木県農業振興公社のワンストップ窓口へ
自身に足りない知識を補い、今後はあらゆるトラブルに対処できる人材に
今後、加藤さんはどのようなキャリアアップを考えていますか?将来の展望があれば教えてください。
トラクターや耕運機など、機械に関する知識を深めたいです。
ある程度のトラブルには対処できるのですが、故障時には機械に詳しいパートさんに助けてもらうことが多いです。機械の構造を理解するために「農業機械整備技能士」のような資格を取り、仕事に活かせたらと考えています。
農業法人での雇用就農を考えている人に向けて、加藤さん自身の経験から、メッセージをお願いします。
農業の知識がなく未経験だった私も、失敗を重ねながらここまでやってこれました。真岡市内には経験豊富なベテラン農家さんも多いので、雑談がてら情報交換をしたり、栽培方法について教えていただいたりすることもあります。まだまだ経験不足な私にとって、社外の人からの意見は貴重で、とても助かっています。菅谷社長の話にもありましたが、社内・社外に限らずコミュニケーションは大切です。
自分に農業が務まるのか不安に思う人もいると思いますが、興味があればアルバイトや見学から始めてみてはいかがでしょうか。
農業法人への就農に興味がある人は、オンライン相談をしてみるといいですね。
相談窓口や地域の農業振興事務所に相談すれば、アドバイスがもらえるはずです。
最初は大変なこともあると思いますが、その大変さが「おもしろい」に変わる瞬間を、ぜひ体感してほしいです。
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さいごに
菅谷農産 菅谷社長からは「ゆくゆくは加藤さんに現場の総責任者をまかせたい」というお話も伺いました。未経験から農場長にまで上りつめた加藤さんのエピソードは、農業法人での雇用就農を志す人にとって大きな励みになります。自分に農業ができるのか不安…そんな人は、ワンストップ相談窓口へ気軽に相談してみてはいかがでしょうか。