情報記事

【栃木市】温暖な気候で県内有数のぶどう・いちごの産地!先進農家のもとで技術を磨き、独立を目指す農業研修

栃木県の南部に位置する栃木市は、実は県内有数のぶどうといちごの産地。「ぶどう団地」をはじめとしたフルーツ狩りを楽しめる農園も多くあり、季節の果物を求めて多くの観光客が訪れます。新規就農も「ぶどう」と「いちご」に力を入れているという栃木市での農業研修についてお伝えします。



栃木市の概要

栃木市の街中を流れる巴波川(うずまがわ)の遊覧船。かつての舟運の名残を感じる。

栃木市は栃木県の南部に位置し、茨城、群馬、埼玉の3県と接するという珍しい地域。舟運で栄えたかつての面影を残す蔵の街並みや四季折々に表情を変える太平山、広大なヨシ原にコウノトリが舞う渡良瀬遊水地など、人と歴史・自然がふれあう街です。


地域と首都圏の水害防止のためにつくられた渡良瀬遊水地は、動植物の憩いの場にもなっている

最近では古民家やリノベーションした見世蔵でのお試し移住、地域の人々と関係機関による手厚いサポートなどもあり、市内外から毎年多くの人が移り住んでいます。


栃木市の農業

約60軒の観光ぶどう園が軒を連ねるぶどう団地は、シーズンになるとぶどう狩りを楽しむ観光客でにぎわう

栃木市では市内を流れる豊かな河川、比較的温暖な気候と冬の少雨、晴天率の高さから、米麦の二毛作や、いちご・トマトなどの施設園芸作物の栽培が盛んです。
圃場(ほじょう)整備の進んでいる市の南部は大型機械での作業がしやすく、米麦の栽培が多いのが特徴です。特に、ビールの原材料となる「二条大麦」は市町村別の産出額全国一位。

 

栃木市は“いちご王国・栃木”の中でも有数の生産量を誇り、市内には全国唯一のいちご専門の研究施設である「栃木県農業試験場いちご研究所」が設置されています。また、太平山(おおひらさん)の麓に広がる「ぶどう団地」では、夏から秋にかけてぶどう狩りを楽しむ観光客でにぎわいます。


栃木市の農業の概要(動画)


 

新規就農者インタビュー(動画)


ぶどうといちごに特化した手厚い研修制度あり

栃木市ではぶどう、いちごでの就農を目指す人向けの研修制度を設けています。研修は、優れた栽培技術を持った「とちぎ農業マイスター」と市やJA、市農業公社、県農業振興事務所などの関係機関が連携して、就農に向けたサポートを行っています。


「JAしもつけが実施している研修」

JAしもつけでは、ぶどうまたはいちごでの就農を目指す人向けに生産部会員のもとで1年間学ぶ研修を行っています。

[研修概要]
・実地研修

 市内のぶどうまたはいちご生産者のもとで研修 

※就農準備資金を活用する場合は、県農業大学校の就農準備校「とちぎ農業未来塾(就農準備専門研修Ⅰコース)」を併せて受講することが必要

[応募条件]
・18歳以上48歳以下

・就農に強い意欲があること
・研修終了後は、JAしもつけ管内(栃木市、壬生町)で就農し、生産部会員として活動できること
・普通自動車免許を持っており、研修中に車での移動が可能
・就農時に必要な自己資金があること

[品目]
ぶどう、いちご


「栃木市農業公社が実施している研修」

栃木市農業公社が実施する「栃木市新規就農支援事業研修」は、市内生産者のもとでの実地研修と県農業大学校の就農準備校「とちぎ農業未来塾(就農準備専門研修Ⅰコース)」での座学を組み合わせた1年間のプログラムです。

[研修概要]
・実地研修
市内のいちご生産者(とちぎ農業マイスター)の下での研修
・座学研修
とちぎ農業未来塾での研修(就農準備専門研修Ⅰコースの受講が必須)
[応募条件]
・18歳以上48歳以下
・研修終了後、栃木市内に居住・就農できる人
・市や県に就農相談を行ったことがあり、就農に強い意欲がある人
・普通自動車免許を持っており、研修中に車での移動が可能
・就農時に必要な自己資金があること
[品目]
いちご
 


研修先インタビュー(1)ぶどう農家 栃木正行さん

ぶどう農家の栃木正行さん

栃木市でぶどう農家を営む栃木正行さん。栃木さんは30歳の頃に父親が他界したことをきっかけに、ぶどう農家を継ぐことになりました。家業を継ぐまでは会社勤めをしており、ぶどう栽培に関しての知識はゼロ。ひとつひとつ手探りで技術を習得していったと言います。就農してから26年が経った現在、ハウスと露地を含めた約110a(アール)の農園を、家族とパート従業員を含めた7〜8名のスタッフとともに管理・運営しています。


「力仕事が少なく、大型農機がいらない」のがぶどう栽培のメリット

露地栽培のシャインマスカット。9月下旬がほぼ最後の収穫になる

栃木さんの農園では、シャインマスカットが8割、あとの2割は巨峰とワイン用のベリーAを栽培しています。出荷時期は5月末から10月上旬にかけて。10月上旬にワイン用のベリーAの出荷を終えた後、少しの休み期間を経て、12月からぶどうの剪定(せんてい)を開始します。花が咲く3月上旬から順次、枝を誘引し、「花摘み」と呼ばれる美しい房を育てるための作業をし、少しずつ実を生長させます。4月になると40~50粒ほど成った実を30粒程度に減らす「摘粒(てきりゅう)」を行い、バランスよい房に育てるための準備を整えます。


ぶどう園では上向きの作業が多いので、その点は疲れます。でも消毒用の機械と草刈機を除けば大きな機械も力もいらないですし、どちらかと言うと花摘みなどの細かい作業が多いので、そういったことが得意な人に向いていると思いますね。あと、やっぱり一番は根気でしょうかね。


1年間でぶどう栽培の一連の作業を学び、時期によっては観光農園の管理業務にも携われる

ワイン用のベリーA。収穫した房の実を選定しているところ

栃木さんのもとでは、4月から翌年3月までの一年間を通してぶどう栽培の一連の作業を学ぶことができます。時間は9時~17時まで、週5日。土日は基本的に休みですが、近くの「いわふねフルーツパーク」での観光農園の管理もあるため、繁忙期の週末にはそちらの管理も行います。


『いわふねフルーツパーク』は220aもの広大なぶどう園で、地元の農家が一緒に管理しています。収穫したぶどうは、直売所で販売します。新しく就農する人にとっては、観光農園での経験も安心材料になるかもしれませんね。


農業大学校を卒業後、栃木さんのもとで一年間実地研修に励む研修生

水はけがよく、冬の降水量の少ない栃木市はぶどう栽培に最適の環境。現在受け入れている研修生も宇都宮市から片道1.5時間をかけて通っているとか。その理由はやはり「ぶどう栽培を学ぶなら栃木市で」という、ブランドへの信頼感があると言います。


「第三者継承」をはじめ農地確保のための情報収集にも協力したい

ぶどう栽培をゼロからはじめるとなると、木が成長し、果実が実って出荷できるようになるまで4~5年はかかります。新規就農のハードルが高い果樹栽培ですが、高齢で農地を手放す農家も増えているため、「第三者継承」で農地を得る方法が良いのではないかと栃木さんは考えています。


後継者が少ないので、血縁関係でなくとも農地を継ぐ『第三者継承』には可能性を感じています。ただし、知らない人に大切な農地を継承するのをためらう人が少なくないのも現実です。研修中に地域の人と信頼を築いて、農地の情報を集めておくのがベストですね。そのためのお手伝いは喜んでしますよ。


なんでも一人で乗り切るのではなく、研修制度やJAなどのコミュニティを活用して情報だけでなく人とのつながりを持つことも大事だと栃木さんは言います。
「次の人を育てていく、恩送りのような気持ちで受け入れている」と研修生を迎える気持ちを語った言葉が印象的でした。


INFORMATION

【研修先ぶどう農家】栃木正行さん

栃木市にてぶどう農家を営む2代目。ハウス栽培70a、露地栽培40aのほか、地元の生産出荷組合のメンバーとともに、観光用のぶどう畑も220aほど管理している。栽培品種はシャインマスカットと巨峰、ワイン用のベリーA。会社員からの転向経験を踏まえ、栃木県農業士として後輩の育成にも積極的に関わっている。


研修先インタビュー(2)いちご農家「(株)谷中農園」 谷中克己さん

「(株)谷中農園」の谷中克己さん

栃木市でいちご農家を営む谷中克己さんは、父の代からはじめたいちご農家を継いでから42年、いちご一筋でやってきました。2019年に「(株)谷中農園』として法人化した後は、息子が社長、自身は会長として経営に携わっています。


土耕と高設ベンチで3品種、合計80aのいちごを育てる

約80aもの広大な農園で育てているのは3種類のいちごです。土耕栽培と高設ベンチでの栽培を組み合わせ、出荷量の8割から9割ほどを「とちおとめ」と新品種の「とちあいか」の栽培にあてていて、残りの1割は「スカイベリー」を栽培しています。スタッフは家族を含めて7〜8人。パート従業員と外国人技能実習生とともに働いています。

法人化してからは、特に作業効率や収益性について考えるようになったと谷中さんは言います。


スタッフを常に雇用していることもあって、働き方や収益性についてはよく考えますね。例えば、限られた時間でどうやって作業効率を上げられるか、どの品種をどのくらい育てればいいかなど。最近では夏のいちごの流通量が少ない時期に『なつおとめ』という品種を栽培しようかと考えているんです。


一年で一番忙しいのは11〜5月までの収穫時期。多い時だと一日に1,200〜1,500パック出荷します。しかし谷中さんは、忙しい時期こそスタッフで仕事を分担して誰か一人に負担がかかりすぎないように配慮していると言います。その方が全体の作業効率が上がると考えているからです。


土耕栽培の単棟ハウス

高設ベンチ栽培の大型ハウス(2連棟)

1年間の研修を経て独立、または雇用就農で数年間じっくり学んだのちに独立することも可能

谷中さんは、これまでに15名ほどの研修生を受け入れてきました。30〜40代の主に栃木市内在住の方が多く、うち7名が独立しています。研修時間は基本的に8〜17時まで、一年を通していちごの栽培技術を学びます。


うちの実習では、一年間でしっかりと技術と知識を身につけてもらうように指導しています。研修が終わってからなるべく早く就農して、収益を出せるようにするためです。これまでの研修生は栃木市内の方が多かったのですが、農業に関心があってやる気のある人なら、どこの方でも歓迎していますよ。


谷中農園では、市の研修制度を利用して独立就農を目指すコースに加え、雇用就農という選択肢も用意されています。スタッフとして谷中農園で働きながら、3〜5年後の独立を目指すというもので、生計を立てながら技術を高めることができます。


いきなり独立するのは勇気がいる、かと言って無収入での研修は長くは続けられない。そういった方のために「雇用就農」という手段で、収入を得ながら学ぶという方法もあります。頑張って学んだ後には、「のれん分け」のような形での独立も応援していますよ。


米や麦の栽培が盛んな栃木市ですが、施設園芸農家も多く見られます。いちごに限らず、トマト、きゅうり、なすなどの多品目に触れる機会も多々あり、農業を学ぶ環境に恵まれていると言えます。その点が栃木市で就農するメリットだと語る谷中さん。栃木市での農業研修を検討している就農希望者へのメッセージをお伺いすると…


研修期間をいつからいつまでと決めて、いつからスタートするのか。まず、自分の頭の中にあるイメージを書き出して、しっかりと計画を立ててみてください。
この地域でいちごの研修を受けたい人はできるだけ受け入れたいと思っていますので、ぜひ相談してください。


今でも谷中さんのもとには、かつての研修生が相談しに訪れるそうです。門戸を広く、かつ現実的な就農に向けてサポートしてくれる谷中農園は、新しく農業をはじめる方にとって心強い存在だと感じました。また、谷中農園では土耕栽培と高設ベンチでの栽培の2つの栽培方法を経験できるので、研修生にとっては大きな学びとなるでしょう。


INFORMATION

【研修先いちご農家】(株)谷中農園

栃木市のいちご農園。2代目の谷中克己さんが、父の代からはじめたいちご農家を2019年に法人化。現在は息子の正幸さんが代表となり、谷中さんは会長として農園経営に携わる。大型2連棟を含めたハウス栽培の総面積は約80a、パート従業員のほか、海外実習生の受け入れもしている。


まとめ

冬の雨が少なく水はけのよい土壌で、ぶどうやいちごの栽培に適した栃木市。いずれも県内トップクラスの出荷量を誇ります。「ぶどう団地」や「フルーツパーク」など果物狩りができる場所も多くあり、農業を身近に感じられる環境もあります。首都圏からのアクセスの良さもポイント。まずはフルーツ狩りから、栃木市の農業に触れてみるのはいかがでしょうか。


農地情報

農地を借りたい、貸したいという方には、栃木市農業公社の農地バンク制度や農業委員によるあっせんなどのサポートを行っています。農地を紹介してもらう近道は、市内の先進農家のもとで研修しながら、地域での信頼を築くことです。


空き家情報

栃木市空き家バンク「あったか住まいるバンク」では、賃貸・売買可能な空き家や、農地付き空き家の情報を提供しています。また、市では空き家バンクに登録された物件のリフォームや家財の処分に対しての補助も行っています。


相談窓口

【移住定住相談】 栃木市地域政策課 Tel:0282-21-2453
【就農相談】 栃木市農業振興課 Tel:0282-21-2381
【研修受講相談】 (一財)栃木市農業公社 Tel:0282-20-5300、JAしもつけ Tel:0282-20-8828
【農地情報】 (一財)栃木市農業公社 Tel:0282-20-5300、栃木市農業委員会事務局 Tel:0282-21-2395
【空き家情報】 栃木市建築住宅課 Tel:0282-21-2451
 


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