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INFORMATION
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関塚 学さん
せきづか・まなぶさん|埼玉県鴻巣市出身。会社員を経て、ワーキング・ホリデーで訪れたオーストラリアで有機農業に出会う。茨城県の有機農家で研修を受けた後、2002年に栃木県佐野市秋山町に移住・就農。当初は野菜も作っていたが、その後お米と卵に注力することに。就農21年目となる現在は米1ha、大豆1ha、麦30aを栽培し、平飼いで採卵鶏600羽を飼育。味噌やうどん、納豆などの農産加工品も販売することで年間約900万円の売上を実現している。令和4年度からは「農ある暮らしアドバイザー」としても活動。
https://sekidukanoujou.com/index.html
有機農業との出会いはオーストラリアで!資金を貯めて住み込みの研修に
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有機農業に関心を持つようになったきっかけを教えてください。
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大学卒業後、1年間会社勤めをしたあと、24歳でオーストラリアにワーキング・ホリデーに行ったんです。そのときファームステイ先で、有機農業という農薬や化学肥料を一切使わない農業に出会いました。
高校生の時から環境問題に関心があったんですが、環境問題と有機農業が頭の中で結びついて、これを自分の人生でやっていきたいと思ったのが、有機農業に関心を持つようになったきっかけです。
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そこから就農に向けてどう動かれましたか?
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日本で有機農業をやるにはどうしたらいいのか。帰国後すぐに情報収集を始めましたが、本を読んだり関連するテレビ番組を見たりしても、現場の様子がよくわからなかったんです。そのため、まずは茨城県の有機農業に取り組む農家でひと月だけ研修させていただきました。
そこで、実践するには資金が必要で、農業を一緒に営むパートナーもいたほうがよいとわかり、準備のためもう一度会社員になりました。3年間で資金を貯めて、28歳の時に1年間、住み込みの研修に入ったんです。
有機農業を始めたいなら栃木県農業振興公社のワンストップ相談窓口へ
田舎暮らしに憧れ、車で地域を巡る日々。繰り返し通うことで空き家を見つけた!
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農業のほかに道はない!不安はあったが思い切って決断
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研修先選びと、技術の習得はどうされましたか?
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研修先はいくつかの候補の中から、住み込みで受け入れてくれて、鶏と野菜をやっている農家を選びました。とにかく野菜の旬も何も知らなかったので、真っ白な状態からさまざまな栽培技術を学びましたね。自分でも本も読みながら、独立した時に失敗しないよう勉強していきました。
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この時期に不安に思ったことはありますか?
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本当に有機農業で食べていけるのか、経営が成り立つのかがいちばん不安でした。研修中にその答えが見つかるかと思ったんですが、そうではありませんでしたね。でも自分にはほかに道はないと考え、不安はありましたが始める決意をしました。
最初に研修した先の農家は、野菜を中心に養鶏や養豚、お米をやっていました。ですので自分も同様に、野菜と養鶏で始めることにしました。
キーパーソンとの出会いで家と農地が見つかった
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就農するにあたって、現在の場所を見つけた経緯は?
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自分は埼玉県鴻巣市出身なんです。長男なので、本来なら家を継がなくてはいけないんですが…、有機農業をしながら中山間地域か山の中で暮らしたかったので、実家からあまり遠くない場所で探しました。薪ストーブを使うような田舎暮らしに憧れていたんです。
そこでまずは地図を見て、実家から移動しやすいエリアにあたりをつけて、休みのたびに車で下見に回っていました。そして、ここ栃木県佐野市秋山地区で気になる空き家を見つけたんです。家の前にどんと山がそびえて、周りは山に囲まれているのに、見晴らしが良く開けているのも気に入りました。
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農地より先に、家を探されたんですね。
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まずは空き家を見つければ、おそらく農地はどうにかなるだろうと思ったんです。毎週のように繰り返し訪れては「この辺りに空き家はないですか?」と聞いていたので、うわさにもなっていたようです(笑)。
近くで農業をやっている農業委員の方から、「一度うちに来なさい。本気で農業をやりたいのなら、応援するから」と言っていただきました。
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いい方と巡り会えたんですね。
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その方がすぐに空き家の持ち主に連絡をしてくれて、立ち会ってもらえたことで、すんなり交渉も進み空き家を借りることができたんです。そしてさらに、周りの農地まで一生懸命探していただいて。自分が就農できたのは、その方に世話を焼いていただいたおかげです。
足で探すだけでなく、佐野市の農政課や農業委員会に相談したり、空き家と農地が見つかるまでは大変でしたけど、研修を終えたらここで農業をできるぞ、と思うと夢が叶った気がしましたね。
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就農にあたり、用意した自己資金はいくらでしたか?
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約300 万円を自己資金として用意しました。私が就農した 2002 年当時は、補助金や支援制度が少なかったため、すべて自己資金でまかないました。
移住についての支援情報を知りたいなら
販売にはSNSやオンラインショップを活用。年間売上が900万円を突破!
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野菜から加工品へのシフト、オンラインショップ開設で売上増。機械化による効率アップも
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就農後の販路はどうされましたか?
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お米はほぼ全て、自分で消費者の方に販売しています。卵は半分以上を自然食品店や道の駅、レストランに卸し、残りは消費者の方に直接販売していますね。
就農した当時は友人や知人に買ってもらっていました。当時はインターネット自体使っている人が少なかったので、口コミでぼちぼち注文をもらっていた感じです。その後SNS が一般的になってからは、InstagramやFacebookを通じて購入してくださる方が大半ですね。
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2年ほど前にオンラインショップを立ち上げたので、現在はSNSでそのサイトを案内し、購入していただくケースが多いです。ありがたいことに、今は知らない方からもたくさんの注文をいただいていますね。
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売上の推移はどうですか?
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3年で黒字にならないと失敗だと思っていたのですが、実際に始めてみたら2年目で黒字化しました。その後は、野菜からお米や大豆にシフトし、加工品を充実させたことで商品単価が上がり、オンラインショップを立ち上げたことでさらに売上が伸びましたね。今後は、年間売上1,200万円に到達できればと考えています。
今年は鶏を増やしたら卵の出荷作業に時間がかかり、お米の栽培面積を減らすことになってしまったんです。これから洗卵機を導入して卵の出荷を効率化しようと考えているので、来年からまたお米の面積を増やす予定です。
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最近は、ちょっと無理してでも農業機械を導入するようにしています。それによって作業効率を上げ、売上を伸ばしていく考えです。
悩みごとは有機農業の仲間や行政に相談
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経営の悩みについて相談する相手はいますか?
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有機農業はやっている人同士のネットワークが強いので、困ったことがあればつながりのある仲間にアドバイスをもらったり、行政の方に相談をしたりしますね。あとは本を読んだり、インターネットで調べたりして解決しています。
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栽培に関して不安や苦労はありますか?
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たとえばヒヨコがネズミによって全滅したり、お米が全く収穫できなかったこともありました。ここは獣害が激しい地域でもあるので、イノシシ、シカ、サル、ハクビシンなどあらゆる獣が出ます。獣による食害で大豆が全滅したこともあり、そういったときは大変でしたね。
栽培や経営の心配ごとをワンストップ窓口で解決
自分で作ったものを、毎日食べられる幸せ。有機農業をやっていること自体が誇り
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関塚さんが感じる、農業の魅力はなんですか?
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自分で栽培したお米や大豆や小麦、そこから作る味噌や醤油やうどんや納豆などを毎日食べられることですね。卵や鶏肉もそうです。
デスクワークではなく、外で汗をかきながら働くのが好きなので、仕事をしてお腹がすいて自分の栽培したものを食べたときに、本当に農業をやっていてよかったなと思います。これ以上の幸せはないですね。
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現在、日本の農業における有機農業の比率は1%しかありません。でも有機農業は自分にとっては理想の農業だと思いますし、有機農業をやっていること自体が自分自身の誇りにもつながっていると感じています。
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そもそも関塚さんの「有機農業」は、どんな農業なんですか?
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自分はオーソドックスな有機農業をやっているつもりです。多くの作物は農薬や化学肥料を使わなくてもできますし、食べる人にとっても作る人にとっても、それらを使わずに済むのであれば使わないほうがいい、という考え方です。
もともと環境問題への関心から農業に目が向いたので、病気や害虫を排除するのではく、微生物や昆虫、風や光などいろんなものを味方につける農業が広まればいいなと思っています。
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父親と新しい家を建築!1年で終わる予定が気がつけば5年!?
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今ある自宅は、ご自身で建てられたんですよね?
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就農して7年目の2009年から、空き家があった場所に新しい家を建て始めました。うちの父は公務員だったんですが、昔から日曜大工が好きなこともあり、「一緒にやるから、二人で建てるか」と話を持ちかけてきたんです。
当初は1年くらいで終えるはずが、五右衛門風呂をつけたり、研修生の受け入れ棟を作ったりしているうちに、完成まで5年かかりました。
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自分たちで建ててしまうってすごいですね。
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お金がなかったので、プロの方には基礎と骨組みと屋根だけやってもらったんです。壁・床・天井・給排水設備・電気工事などは自分たちでやりましたね。その期間は、田畑はやらず鶏だけに仕事を絞って時間を作りました。建て替えの間に住む場所も、近くに安い物件を借りられたんです。
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関塚さんの暮らしへのこだわりを教えてください。
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先ほどお話しした自給的な食生活と同じく、エネルギーもなるべく自然エネルギーに頼りたいと考えています。自分たちで建てた家には薪ストーブや五右衛門風呂があり、かまどや囲炉裏も設置し、太陽熱温水器も使用しています。最近では「天ぷらカー」といって、使用後に捨てる食用油を利用した車を走らせたりもしています。
周囲から認めてもらうために。町内会や消防団など地域の役を担い、挨拶も欠かさず
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地域の暮らしで心がけていることはありますか?
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自分は、縁もゆかりもなかった地域で就農しました。そのため何とか受け入れてもらおう、認めてもらおうという気持ちが強く、お願いされた地域の役は、ほぼ全て受けました。
JAや神社や町内会の役を受け、消防団にも入りましたね。そういったところから周りの方に認めてもらうよう努力してきたんです。
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また、挨拶も重要だと思ったので、「おはようございます」とか「こんにちは」は自分から言うように心がけてきました。地域の人は、よそから来た人をよく見ています(笑)。自分も興味津々で見られていましたけど、朝早くから働いていることもあり高評価でした。
この辺りは高齢の方が多く、自分はまだ29歳だったので、みなさん温かく受け入れてくださったのがありがたかったですね。
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地域の魅力を教えてください。
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山が近く水も空気もきれいで、周りの人もすごくいい人ばかりなので、農業をするのにも暮らすにもとてもいいところです。栃木県は東京からの距離が近く、農業体験イベントなどにもお客さんが集まりやすいですね。
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やる気さえあればさまざまな道が拓ける。覚悟を決めて最初の一歩を!
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今後やりたいことはありますか?
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経営が軌道に乗ってきていることもあり、今は"そば"の栽培を始めてみたいと考えています。これまで"そば"を作る機会がなかったんですけど、最近汎用コンバインを買ったので、それで収穫もできると思います。
ほかに興味があるのは、バイオガスや電気自動車、非常時に備えてソーラーパネルによる蓄電の仕組みをつくるなどですね。
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関塚さんの農園では研修生の受け入れもしていますよね?
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主に30〜40代の、農業に興味があったり農業をやりたい人から問い合わせがきます。年間5〜10人から連絡があって、実際に来るのは1人くらい。これまで、うちで研修を受けて、実際に営農を続けているのは5人ですね。
つい先日もアメリカの高校生が1週間だけファームステイに来ていました。ここは栃木県の中でも東京に近い立地で自然が多く、水も空気もきれいです。周りもいい人ばかりなので、住んで暮らすのにもいいところですよ。
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就農前に準備しておいたほうがいいことはありますか?
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やっぱりやる気と資金ですね。やる気はあって当然ですが、資金もある程度ないと軽トラやトラクターを買うにも、初期段階で必要なものをそろえるにも困ると思います。
あとは農業を営むには、パートナーがいたほうが成功しやすいと思います。農業はひとりでやってうまくいく人もいるけど、大変になってやめてしまう人も多いんです。ですから農作業自体は一人でやるとしても、共に歩めるパートナーや仲間がいるのであればそのほうがいいと思います。
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有機農業を目指す方へメッセージをお願いします。
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田舎暮らしや外で働くのが好きな人にとっては、とてもいい仕事だと思います。自分の場合も、農業以外でも家を建てたり自然エネルギーを利用したりと、いろんなやりたいことを実現してきています。
やる気さえあれば、さまざまな道が拓けると思います。昔に比べれば、今は情報を得るのが簡単な時代になりました。移住や農業やDIYの本もたくさん出版されていますし、インターネットでも多くの記事や、YouTube動画などで情報が得られるので、それらを活用していけばいいと思います。
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ただ何事も準備が肝心なので、繰り返しになりますが、やる気と資金をきちんと準備して始めることをおすすめします。農業経営を軌道に乗せるのは簡単なことではありませんが、それを覚悟したうえで、ぜひ挑戦してほしいなと思います。うちでの研修を希望される方は、ぜひ来てください。
さいごに
職業や生活、家や作物まで、人生における大きな変化を恐れず選択しながら、自らの手で道を切り拓いてきた関塚さん。まさに人生を楽しみ、満喫されているように感じました。