情報記事

【市貝町】渡り鳥「サシバ」が飛来する里地里山。 手厚い就農支援と個性豊かな農家にも注目!

栃木県東部に位置し、のどかな里山の風景が広がる市貝町。絶滅危惧種に指定されている渡り鳥「サシバ」が生息する自然豊かな環境は町の誇り。この恵まれた環境では、水稲をはじめトマトやナスといった野菜、梨などの果樹、花きの栽培のほか、畜産業が営まれています。そんな農業が盛んな市貝町では、就農希望者に向けた手厚い支援制度がスタート! その内容と研修先の魅力に迫ります。



市貝町の概要


県都宇都宮市から東へ約24km。栃木県東部・芳賀地域にある市貝町は、南北に長い地形をしており、東は茂木町、西は芳賀町、南は真岡市・益子町、北は那須烏山市・高根沢町の2市4町に接しています。

 

一級河川「小貝川」の上流域に位置し、町の南部には伊許山や多田羅沼、北部には芝ざくら公園など美しい自然に恵まれ、昔ながらの「谷津田」が広がる里山の風景を楽しめるのも魅力です。


町を代表する観光スポット「芝ざくら公園」 

入野家住宅は今から約180年ほど前に建てられたもので、母屋と入母屋造りの長屋門は国の重要文化財となっている

町内には、国指定重要文化財の入野家住宅をはじめとした多くの史跡が残るほか、全国でもめずらしい武者絵資料館もあります。歴史上の有名な武将の姿が描かれたのぼりは迫力満点! 自然だけでなく歴史と文化を楽しめるのも魅力です。


「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されている「サシバ」。市貝町とその周辺地域に、非常に高い密度で生息している

また、絶滅危惧Ⅱ類である渡り鳥の「サシバ(タカ科)」が広く営巣していることも町の特長のひとつ。町では「サシバの里」としてこの豊かな自然環境を守るため、さまざまな施策に取り組んでいます。そのひとつとして農業においては、人にも環境にもやさしい有機栽培を推進。新規就農を目指す人への支援も積極的に実施しています。


トチノインタビュー動画 #01半農半X事例紹介

栃木で半農半Xをするご夫婦に成功の秘訣を聞く(市貝町:倉本祐樹さん、芙美さん)


研修制度

研修中も給与・社会保険・家賃補助あり! 「地域おこし協力隊(見習いファーマー)」に注目

市貝町では、新規就農希望者を「地域おこし協力隊(見習いファーマー)」として任用する、町独自の就農支援制度を設けています。

 

任用期間は最大3年間。その間は、町の会計年度任用職員として雇用されるため、毎月給与が支給されるほか、社会保険に加入することも可能。さらには、家賃について毎月最大50,000円の助成も!

収入を得ながら町内の個人農家や農業法人で研修を受けることができます。

 

対象は、都市部より移住し、将来農業で生計を立てることを志願する人任期終了後、農業法人に就職、もしくは農業経営者として独立できるよう、農家の下で本気で農業を学ぶことなどを条件としています。

詳細は、町の地域おこし協力隊(見習いファーマー)募集ページをご確認ください。 


研修先・研修生インタビュー

前述の町の就農支援制度「地域おこし協力隊(見習いファーマー)」の研修先は、有機農家やブドウ農家、酪農家など個性豊か。今回はその中から、有機農業に取り組む個人農家「旬の野菜 爽菜農園」と大規模な農業を行う営農集団「農事組合法人 西宿営農組合」を訪問し、お話を伺いました。


①旬の野菜 爽菜農園

左から小野寺幸絵さん、山田智貴さん(研修生)、小野寺徹さん

里山の風景が広がる豊かな自然環境に惹かれ、2001年に市貝町で就農した小野寺徹さん・幸絵さん夫妻。当初から有機栽培に取り組み、人にも環境にもやさしい方法で農業を営んでいます。

「栽培している野菜は100種類ほど。夏はキュウリやトマト、冬は大根や白菜など、旬の作物を数多く育てています!」と朗らかに話す幸絵さん。米、麦、大豆も栽培するほか、150羽ほどの鶏を平飼いし、卵の販売もしています。



小野寺さん夫妻は有機農業を営む傍ら、研修生の受け入れも積極的に行っています。これまで自治体の制度とは関係なく個人で研修を希望した人も含め、10人以上の研修生を受け入れてきました。そして、そのうちの5人が町内に就農。市貝町の農業の発展にも貢献しています。


「有機農業は独特なので、もし学びたいのなら公的な研修機関よりも個人農家で学んだ方が手っ取り早いと私は思っています。ただ、数年前に国の就農支援制度が変わり、個人農家で学ぶ研修生に対しては『就農準備資金』の交付対象にならない場合も。就農へのハードルが上がってしまい、もどかしい気持ちでいました。でも、町ではそれをカバーする『地域おこし協力隊(見習いファーマー)』という手厚い就農支援制度を始めたので、本当に良かったと思っています」と幸絵さん。

そして2022年9月より、地域おこし協力隊として任用された山田智貴さんが小野寺さん夫妻のもとで有機農業の研修を受けています。




研修先の決め手は「自分の考える将来像と似ていた」から!

山田さんが「爽菜農園」を知ったのは大学時代。農学部に在籍していましたが、2年生の頃までは農業を仕事にする気持ちはなく、漠然と公務員になると思っていたそうです。

 

ところが、3年次に所属したゼミで茂木町や益子町など栃木県東部でフィールドワークを経験し、また個人的に関わりのある有機農家の手伝いをしていくうちに就農への気持ちが高まっていきました。「農業を営みながら、誰もが気軽に自然に触れられる場をつくりたいと考えるようになったんです」と山田さん。

 

「そもそも、小さい頃に両親が農業体験にたくさん連れて行ってくれて、楽しい経験をしたことが原体験となっていると思います。それから、大学時代に参加した自然教育団体のボランティア活動もひとつのきっかけですね。自然の中でのびのびと活動している子供たちを見て、やっぱり自然に触れられる環境って大事だなと実感しました」 



沸々と湧いてきた将来のイメージを所属するゼミの先生に伝えたところ、市貝町の「地域おこし協力隊(見習いファーマー)」と「爽菜農園」を紹介され、実際に現地を訪問。「小野寺さん夫妻の考えを聞いて共感することがたくさんあり、営農スタイルも自分の目指す将来像と似ていたので、ぜひここで研修を受けたいと思い、応募しました」

 

そして大学卒業後、山田さんは晴れて「地域おこし協力隊」に任用され、「爽菜農園」での研修をスタートしました。




市貝町で農業をする魅力

研修中は小野寺さん夫妻と行動をともにし、実践的に有機農業を学びます。山田さんは、「食と農の関係人口を増やす」をスローガンに、研修後は独立して体験も楽しめる農業に取り組む予定。その一歩を踏み出し、研修開始から3カ月を迎えた山田さんに率直な感想を聞きました。

 

「小野寺さん夫妻だけでなく、町の方々の人柄の温かさを実感しています。個性豊かなおもしろい人がたくさんいて、皆さんが私のことを温かく受け入れてくださるんですね。実は、私は人に対して合う・合わないがはっきりしているタイプ。人付き合いに少し不安があったのですが、おかげさまで楽しく過ごせているので本当にここに来て良かったと思っています」



幸絵さんも町の方々の人柄の良さに太鼓判!

「町には意外と新規就農者や移住者が多く、陶芸をやっていたりパン屋を営んでいたりと個性も豊か。ただ、あまりメディアに出ず、ひっそりと生活を楽しんでいるんですね。そんな方々がみんな“ゆるく”つながっている新規就農者や移住者だけでまとまるということもなく、地元の人ともほどよく行き来があって、その関係が心地良いんです」

 

さらに、地域の猟友会に所属する幸絵さんはこう続けます。

「入会した時、私が女性だからといって見下されることはなく、むしろ手取り足取り教えてくださって、みんな本当にやさしいなと思いました。自然の豊かさだけでなく、人の豊かさも市貝町の大きな魅力ですね」




就農に興味のある方へのメッセージ

「私たちは“来るものは拒まず”のスタイルなので、興味をもって来てくれる方なら見学でも体験でも大歓迎! 実は、これまで研修を希望した方をお断りしたことはありません。どんな方も受け入れています。なので、少しでも興味を持ったら実際に来て触れて、そして自分に合うかどうか判断していただければと思います」


INFORMATION

旬の野菜 爽菜農園

小野寺徹さん・幸絵さん夫妻が営む有機農園。農薬や化学肥料を使わず、旬を大切にした少量多品目栽培を行う。100種類ほどの野菜のほか、米や麦・大豆を生産。平飼い鶏の卵も販売中。農業体験の希望者や就農を目指す研修生を積極的に受け入れている。
http://sousainouen.web.fc2.com/


②農事組合法人 西宿営農組合

(左から)従業員の根本賢さん、代表理事を務める本橋譲さん

水稲栽培を中心に、麦やソバ、ハウス野菜、春菊などを行う営農集団「農事組合法人 西宿営農組合」。現在、9人の組合員で構成され、農作業者の雇用もしています。

 

組合員が所有する農地だけでなく地域の地権者の農地も預かって営農しており、その規模は100haと広大! さらに、農業の効率化と拡大化を進めているそうで、「あともう10haほど増える予定ですよ」と代表理事を務める本橋譲さんは話します。

 

高齢化が進む一方で世代交代がうまくいかない農事組合法人が多い中、本橋さんは9年前に32歳の若さで代表理事に就任。大型機械の導入やスマート農業に取り組み、この組合を発展させてきた人として講演依頼を受けるほど注目されています。





一緒に働くなら「相手を敬う姿勢があること」が大事

「西宿営農組合」では、大規模な経営を行っているので、作業も大型の機械を操作するといったダイナミックな農業を経験できるイメージがあるかもしれません。

 

これについて本橋さんは、「実際は地味な仕事が多いですね。特に研修生の場合は、まだ農機の操作に必要な免許を持っていない人が多いので、地味な作業の連続。でも、やる気があるなら免許取得の支援もしますし、研修生の資質を見て何かしら役割を持ってもらい活躍できるようにします」と話します。

 

さらに、どんな人がここでの研修が向いているかを伺うと、「率直に言って、上下関係を大切にした人付き合いができる人。これはどの職業でもそうだと思いますが、どんなにスキルがあっても人間関係がうまくいかなければ一緒にやっていくのは難しい。ここでは地権者さんとのお付き合いも大事ですからね」
 



本橋さんは、もっと若い世代に参加してもらうことで持続可能な組織に整え、さらに発展させたいという思いから、ここでの勤務に向いていそうな若手を見つけたらスカウトすることも。2022年4月から勤務している根本賢さんはまさにそのひとり。

 

「根本さんは、私の後輩なんです。組合に入る前に勤めていた農機メーカーに根本さんも勤めていて、彼の仕事ぶりや人柄の良さを知っていました。それで誘ってみたら入ってくれて。新人とはいえ、農機の扱いには慣れているので早い段階から活躍してもらっています」と本橋さん。




ここで農業をする魅力・やりがいについて

この組合で働くことの魅力について根本さんは、「農機メーカーに勤務していた頃に比べると、自分の裁量でできることが多く、時間の使い方が自由になったと感じています。休暇の取得も本橋さんは快諾してくれますし」



すると、すかさず「繁忙期は困るけどね(笑)」と冗談交じりに言う本橋さん。「やるべきことをやって、給料に響かない範囲なら、いくら休んでも構わないよ!」と、なんとも大らか。このちょっとしたやりとりから、二人の良好な関係性が伺えます。

 

「より働きやすい環境に改善し、もっとこの組合を発展させていこうと様々なことに取り組んでいる本橋さんの存在は、本当に大きいですね。とても心強いです」と根本さん。




地域おこし協力隊として研修を受けた後、雇用の可能性も

研修では農作業を一から学ぶことができます。ただし、農業の経験がある人にはその人に合わせた研修を実施。水稲栽培をメインに、ソバや野菜などに触れられるのも魅力です。



研修終了後は、ここで雇用されるチャンスも。「やる気がある人なら大歓迎!」と本橋さん。「特に水稲栽培は初期費用が高いので独立就農は難しい。もし、米作りをしたいなら、ここで研修を受け、そのまま雇用される道も考えてもらえたらと思います」

 

地域おこし協力隊として応募する前に、農業体験を希望する人の受け入れも実施中。
興味がある人は、市貝町相談窓口(産業振興課)にご相談ください。
 


INFORMATION

農事組合法人 西宿営農組合

組合員と地域の地権者から預かった広大な農地で、米の栽培を中心にそばや麦、春菊なども栽培する営農組合。主に30~40代のスタッフが活躍し、大型機械の導入やスマート農業にも取り組んでいる。


農地情報

町内での農地あっせんは、役場産業振興課及び農業委員会にてご相談を受けております。

ご希望の土地の地目、面積等の情報をお聞きした上で、担当が町内よりあなたに適した農地をご紹介いたします。


空き家情報

市貝町では、空き家バンク制度を実施しています。

空き家の情報は市貝町ホームページに掲載し、随時更新中。

現地見学を希望される方は、担当の不動産業者にご連絡ください。


相談窓口

新規就農等の相談は、市貝町役場産業振興課で受け付けています。気軽にご相談ください。

 

〒321-3423
栃木県芳賀郡市貝町大字市塙1280
TEL. 0285-68-1116、1118
FAX. 0285-68-1167


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