コラム

就農に関する疑問や不安を気軽に相談できる!tochino(トチノ)の「ワンストップ相談窓口」への相談事例やよくある質問を大解剖

栃木県では、「とちぎ農業経営・就農支援センター(事務局:公益財団法人栃木県農業振興公社)」が設置され、就農希望者に対する情報提供や、「ワンストップ相談窓口」での就農相談等が行われています。
相談窓口では、農業の知識がない方から、就農に向けて具体的に検討している方まで、幅広い相談に応じています。相談窓口担当者に相談事例やよくある質問などをお聞きしました。



ワンストップ相談窓口の「公益財団法人栃木県農業振興公社」はどんなところ?

ワンストップ相談窓口での面談

INFORMATION

公益財団法人栃木県農業振興公社

〒320-0047 栃木県宇都宮市一の沢2-2-13 とちぎアグリプラザ内  
TEL:028-648-9511(代表) FAX:028-648-9517
http://www.tochigi-agri.or.jp/index.html


就農実現の第一歩に

栃木県農業振興公社は、農業・農村の振興に関するさまざまな事業を行っています。

その一つとして、栃木県での就農を目指す人に情報を提供したり、相談に応じているのが「ワンストップ相談窓口」です。

「農業を始めたいけれどイメージが漠然としていて何から始めればいいのかわからない」、「ある程度就農イメージはできていても具体的にどうしたらいいのか、情報をどこで入手すればいいのかわからない」など、さまざまな相談を受けています。

就農への最初の一歩として、就農希望者の悩みや質問に答えています。また、就農地が決まれば、地域のサテライト窓口(県農業振興事務所)等とも連携しながら、就農に向けたサポートを行っています。



相談窓口の担当者は経験豊富な相談員

ワンストップ相談窓口の担当者は現在2名。年間250件程度の相談に対応しています。

鈴木隆浩さんは、県農業振興事務所で就農支援業務を3年経験し、栃木県農業振興公社に配属されて1年目。通算で相談業務は4年目になります。

櫻井裕也さんは、栃木県農業振興公社に入社し、就農相談歴は鈴木さん同様4年目になります。
「今まで多くの方の就農相談を受け、関係機関と連携しながら就農のお手伝いをしてきました。これからも就農を希望する皆さんのご相談に耳を傾け、サポートしていければと思っています」と櫻井さん。


相談窓口にはどんな人がどんな相談をする?

相談窓口には幅広い年齢の方が訪れます

相談に来るのはどんな人?

相談窓口を訪れるのは20~40代が中心ですが、定年を機に就農を希望される方もいます。ここに来られる方は非農家で、新規参入を希望する方の大半を占めています。農業をまったく知らない方から、ある程度就農後のイメージができている方まで、幅広い層の方がいらっしゃいます。

 

県内の方は直接相談窓口までお越しいただくこともありますし、東京都など県外にお住まいの方からはオンラインで相談をいただくこともあります。

相談は平日だけでなく、土日でも相談会や農作業体験会などを開催しており、そうした機会に相談される方も多いです。


どんな質問がある?

人それぞれではありますが、相談者のほとんどが農業経験ゼロで情報収集に来る方も多く、漠然とした質問が多いです。例えば、「農業を始めたいんですけれど、どうすればいいんですか?」といった質問です。

そのようなケースでは、農業に対する心構えから、就農するために必要となってくる研修や資金、農地の問題など段階を追って就農までの道のりを説明しています。


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よくある質問(Q&A)│農業入門編

いちごの研修風景

農業を始める時、何から準備したらいいでしょうか。

まずは情報収集が基本です。体験会やセミナーなどにはできるだけ参加してみてください。また、要望に応じて現地で農家の話を聞く機会などをセッティングします。実際に体験したり話を聞いたりすることで、自分がやりたい農業のイメージをできるだけ具体化していくことが最初の一歩になります。

 

相談する際に、まれに家族の同意がとれていないまま相談窓口に来られる方がいます。
家族がいる方は、しっかりと話し合ってから相談を始めることをおすすめします。パートナーの方も一緒に相談に参加いただくと、お互いの理解が深まります。


何をつくるかまだ決めていません。おすすめの作物はありますか。

農地の確保が課題になることが多く、小さい面積でも収益を上げていける作物を選ぶことがポイントです。特に栃木県は施設園芸が得意分野。収益性が高く、研修制度が充実している、いちごやにら、アスパラガスなどをおすすめしています。


就農後、健康保険や年金はどうなりますか。

個人事業主の場合は、ほかの業種と同じで国民健康保険と国民年金です。また、国民年金に上乗せして受給できる公的な年金制度として「農業者年金」もあります。加入申し込みなどは、お住いの市町の農業委員会か、最寄りのJA窓口で受け付けています。
雇用就農の場合は、雇用先が個人事業主なら国民健康保険ですが、法人なら社会保険に入れるケースもあります。雇用先にお尋ねください。


知っておきたい5つの基本ステップを紹介します。就農までのイメージをつかみましょう!


よくある質問(Q&A)│就農地について

使っていない農地があるならすぐ借りられるのではないでしょうか。

耕作放棄地があると、ここを借りられないのかといった問い合わせもありますが、農地にはさまざまな規制や条件があります。例えば、年間150日以上作業しなければならない、農地のすべてを効率的に使わないといけない、などです。

また、農地は病害虫を出したり雑草を増やしたりすると周りの農家にも迷惑がかかります。農業をやったことがない人に農地を貸してしまうと農地を荒らされてしまうかもしれないという不安が貸す側にあります。

そのため、農業経営できるめどが立ってからではないと農地を借りることは難しいということをよく理解しておいてください。農地を借りるには、十分な研修を受け、地域の農業者とコミュニケーションをしっかりとることが大切です。


就農する地域を選ぶポイントを教えてください。

就農する品目が決まっていれば、生産が盛んな地域を候補地にするとよいでしょう。

新規参入の場合、収入に直結する販路の確保は欠かせませんが、JAでは個々の生産者が栽培した農畜産物を集荷し、市場へ出荷するので、新規就農者であっても規格等を満たしていれば確実に収入を得ることができます。

また、JAには、いちご部会やにら部会といった品目ごとの部会があり、研修農家をあっせんする、生産者同士でお互いに研修しあう、共同で作業するなど、協力体制ができています。就農後、JAに出荷することを考えているなら、やりたい品目の生産部会がある産地がおすすめです。


基礎・実践技術・経営方法を身につけられる栃木県内の研修制度を紹介しています!


よくある質問(Q&A)│初期投資について

就農するために、どのくらいの資金が必要ですか。

どれくらいの資金が必要なのかは品目と経営規模によって異なります。
例えばいちごで新規参入する場合は、農業用ハウス(井戸含む)を20a新設すると初期投資が3,000万円以上は必要になります。


自己資金が足りない場合、利用できる支援制度はありますか。

日本政策金融公庫の青年等就農資金では無利子で借りることができます。青年等就農資金の返済期間は、最長17年で、そのうち据置期間は5年以内です。収益が出にくい就農2~3年は据え置きにして返済していく方が多いようです。
青年等就農資金を申請するには「認定新規就農者である」ことが要件となっています。


「認定新規就農者」とは何ですか。

新たに就農する青年等に向けた制度です。「青年等就農計画」を作成し、各市町に認定される必要があります。対象となるのは、①青年(原則18歳以上45歳未満)、②特定の知識・技能を有する中高年齢者(65歳未満)、③上記(①又は②)の者が役員の過半数を占める法人です。

独立自営就農するということは、起業することと同じです。就農計画の立て方次第で、その先の農業経営が大きく左右されます。研修期間中に研修先や関係機関等に指導してもらいながら計画づくりを進めましょう。

審査時期は、市町によって異なりますので、事前によく確認しておきましょう。


新規就農者を対象としたさまざまな支援制度を紹介しています!


よくある質問(Q&A)│就農相談の事前準備

オンラインまたは窓口で相談するときに伝えるべきことはありますか。

農業に対する知識は人それぞれです。漠然と農業をやりたいだけでは具体的な行動に移せません。まずは農業情報サイトなどで情報収集することも必要ですが、リアルな情報は相談窓口や農家さんを訪ねて話を聞いたりすることで手に入ります。漠然とした質問でも構いませんので、まずは相談窓口に相談してください。相談者の知識や事情に合わせて情報を提供しています。


中には、ほかの地域でも相談を受け、ある程度の知識をもって相談に来る方もいます。そういう場合は、基本的な就農への流れは省いてその先の話をしますので、ほかでの相談や研修経験がある場合はその旨伝えてください。

 

トチノ(tochino)には「自己診断ページ」がありますので、ご利用いただくと自分の熟度を把握できます。

診断結果を持参いただければ、相談もスムーズになります。


自分に合った農業スタイルを見つけよう!


相談事例をそれぞれ3つのポイントで解説!

相談会の様子

就農を目指すにあたって気になる資金のことや技術習得、農地や住居のことなどを、それぞれ3つのポイントで確認しましょう。


就農までに必要な資金や営農開始の初期投資

①最低3年間の生活費を確保する

まず研修中の1~2年間分、経営開始してから販売収入が得られるまでの2年分をあわせて最低3~4年分、収入がなくてもある程度生活できるように貯蓄しておくことをおすすめします。品目によっては就農してもすぐに収入が得られるわけではありません。例えば、いちごで就農する場合、収入が得られるようになるのは収穫が始まる11月以降になります。

経営が軌道に乗るまでの生活費は確保しておきましょう。


例えば、子どもがいる3人家族で「いちご」で新規参入する場合、新規就農者向けの公的支援や融資制度を活用することを前提として、自己資金600万程度であれば研修終了後に20a程度の経営規模で就農できます。


②融資の審査に通るように準備しておく

初期投資は金融機関から借り入れする方がほとんどです。資金を借りられないと営農がスタートできないので、金融機関の審査に通るように、無計画な借入金がないか、税金などの滞納がないか、事業計画がしっかり立てられるかなど、融資の要件を確認して、事前に準備しておくことが必要です。

 

③生活費と初期投資は分けて管理する

初期投資にすべて費やしてしまうと生活が成り立たなくなります。生活費と初期投資を分けて管理することで営農がスムーズに進みます。


3~4年間の生活費と初期投資の分を貯蓄してから就農できれば理想的なのですが、そこまでの貯蓄がない中で就農する方もいらっしゃいます。
就農前後の生活費は、年齢等の要件がありますが、就農準備資金や経営開始資金を活用される方もいます。営農にかかる初期投資は、青年等就農資金を活用して日本政府金融公庫などの金融機関から融資を受けてスタートされる方が大半です。


他県からのIターン・移住を考えている場合の就農地選び

①農地を確保する

農業をはじめるときに農地は欠かせませんが、希望の農地を見つけることは簡単ではありません。いちごで就農する場合は井戸の確保も必要になります。農地の当てがある場合は別ですが、ない場合は研修先や地域の農業などと人脈をつくり自分で農地を探す努力が必要です。

 

②住居はほ場の近くに確保する

作業の効率性や、集中豪雨などの気候の変化で急な作業が必要になることがあるので、ほ場まで車で10~15分以内の範囲で住まいを探しましょう。

 

③市町の移住相談窓口などで相談する

各市町に移住相談の窓口がありますので、そこで相談すると住まいや生活情報(子育て、教育など)が得られます。住まい探しは、市町に設置されている空き家バンクも活用できます。また、一部の市町では、お試し住宅を設置しているところもあり、移住先の生活を実際に体験したり、住まい探しの拠点としても利用できます。


まずは農地を確保することが重要ですが、お子さんがいる場合は学校までの距離など住環境も大切になってくるので、事前に就農希望地を何回か訪れ、見て感じることをおすすめします。実家や家族と離れてしまう場合は、交通アクセスがいい場所を選ぶことも考えるといいでしょう。
人それぞれの事情がありますので、まずはお気軽にご相談ください。


農業技術を習得するための研修先の見つけ方

①自分に合った研修制度を活用する

栃木県農業大学校のとちぎ農業未来塾と、市町やJA等が実施する研修機関で研修する方法があります。

とちぎ農業未来塾は栃木県内どこでも就農できますが、市町やJA等が実施する研修はその地域に就農するなどの要件があります。自分が希望する内容と研修先の条件が合っているかどうか、あらかじめよく調べてから決めましょう。

 

②農地の確保のことも視野に入れる

農地の確保が課題になることが多いので、研修先がどれくらい農地の確保に協力してくれそうか、事前によく相談しておくといいでしょう。

 

③体験会などに参加する

各地で農作業の体験会や農業現地見学会が開催されていますので、そういったものに参加することで就農のイメージを膨らませることができます。研修に入る前に農業インターン制度も活用するとよいでしょう。


研修先の概要などはワンストップ相談窓口で紹介しています。就農希望地が決まれば、サテライト窓口(県農業振興事務所)と連携しながら、就農に向けて研修や、就農計画づくり、農地・資金の確保、補助事業の申請など、より具体的な相談ができます。


農地を確保する方法は?

①地域の農業者から信頼されることが大切

農地は一度荒れてしまうと使えるまでに手間や時間がかかるため、誰にでも貸せるものではありません。
研修先の農家や地域の農業委員から農地をあっせんされるケースもあります。研修中は日頃から研修先農家や地域の方とコミュニケーションをしっかりとり、地域の農業者から信頼されることが大切です。

 

②関係機関にはマメに通う

市町農業委員会や市町農業公社(農地バンク)には、足しげく通って農地に関する情報収集を積極的に行いましょう。

 

③妥協点を定めておく

希望通りの条件を満たす農地を確保するのはなかなか難しいことです。妥協できる点についてはあらかじめ整理してから農地探しをすることをおすすめします。


農地の問題は、地域や作物の種類によっても異なりますので、わからないことはまず窓口でご相談ください。個別の農地については市町の農業委員会などに相談しましょう。


初期投資はどのくらいかかるか?

①先輩農家の事例を調べる

新規就農した先輩方の事例をよく調べ、どんな施設や機械が必要なのかを事前に情報収集し、確認しておくことが必要です。
作物がある程度決まったら、実際に現場に行ってほ場を見せてもらったり、先輩農家に話を聞いたりすることでイメージが固まってきます。

 

②中古の施設・機械導入や借りることも考える

新品ですべてそろえたいと思う方は多いようですが、最近は資材等が高騰しており、施設園芸で就農を目指す場合は初期投資が高額になる傾向にあります。離農農家の遊休施設や中古の農業用機械を利用することができれば、初期投資を抑えるポイントの1つとなります。
また、研修先でも機械を貸してくれることがありますので、最初のうちは借りるなどの工夫もできます。

 

③必要な優先順位を決める

最初から全部そろえられれば理想的ですが、無くてもなんとかなるものは優先順位を下げて、少しずつ設備投資をしていくことをおすすめします。計画的に増やしていければ、初期投資が抑えられます。


「この作物にはこの設備が必要ですよ」という基本的な情報はワンストップ相談窓口でも提供できます。具体的に何にいくらかかるかというのは、農業者に直接聞くことが早道です。相談窓口でも話を聞ける農家をご紹介できます。


補助金・助成金を活用するには?

①各自治体の事業要件を確認する

県や市町の補助金・助成金を申請する場合は、まずは事業要件を確認することが大前提となります。事業の申請にあたっては、提出する書類が多く、申請書作成に時間がかかるものもあります。提出する書類を事前によく確認し、計画的に準備しましょう。

 

②事業計画が変わったら即連絡する

いろいろな事情で事業計画が変更になってしまうこともあります。そのような事態が生じた場合は、早めに市町や関係機関に相談しましょう。

 

③報告書も提出する

補助金・助成金はもらったら終わりではありません。事業によっては、申請書を提出したときの事業計画が予定どおりに進んでいるかを都度チェックし、報告する必要があります。報告書も忘れずに提出しましょう。


補助金・助成金は、年によって事業内容や要件が変更になることがあります。その人に合った補助金・助成金をご紹介します。


さいごに

ワンストップ相談窓口に来る方の相談内容は多岐にわたり、一般論としてQ&Aに掲示できないものもあります。なんでもお尋ねください。また、体験会や就農相談会も行っていますので、農業の知識がゼロの方、就農するかどうか迷っている段階の方でもぜひご参加ください。

 

自己資金や労働力の確保など、農業を始めるまでに乗り越えないといけない壁はありますが、自分にできるかどうかを見極めるためにもワンストップ相談窓口へお気軽にご相談ください。もし、自営就農が難しい場合でも、雇用就農などの道もあります。自分のやりたい農業を見つけ出すため、一緒に考えていきましょう。


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