農家後継とは?
親または親族・知人が営む農業を継ぐ「農家後継」。
これまで引き継がれてきた農地や機械を相続する想定で農業をはじめられます。
さらに栽培技術やノウハウ、販路を身近な人から受け継ぐことができるため、困ったことはすぐに相談できるのが心強い点です。
安定した地盤や信用を元にした就農は、土地探し、家探し、作目選びに時間を取られる心配が少ないでしょう。
就農までの流れ
親や身近な人が農業を営んでいても、いざ自分がはじめる場合はギモンがつきもの。
栃木県では、検討段階から準備、就農まで、手厚いフォローであなたの思いを応援します。
【step1】就農を知ろう!まずは情報収集!
「農業をはじめる」には情報が重要な時代に。
農家後継には就農補助金なども?しっかりとした情報収集で流れを把握
「農業を承継する」にあたって情報はとても重要です。
近親者が経営していた時代とは、営農の方法、事業経営の状況が異なることが多々あります。
指導はありがたく受け入れて自分のものにしつつも、ずっと判断を仰いでいては、進歩のない農業になってしまう可能性も。
農業経営を自分ごとにして、どのように営農するかを決断するには、やはり情報は強みです。以下の項目を参考にしてみませんか?
1.1 自己分析
自分の志向性や農業経営の可能性を洗い出す。
青い空と広い大地…それだけではない現実も直視
まずは農業に向いているのか、自己分析をしてみましょう。
なぜ農業なのか、なにを農業で実現したいのか、冷静に考える時間を持ちましょう。
自分が主体となる農業経営のイメージ、資金計画なども固めておくと安心です。
1.2 事業承継の意思表示
後継者になる意思が固まったら、本音で話して将来設計を。
目に見えるものと見えないものをしっかりと承継するために
農家後継の就農で、一番大切なのは承継元とのコミュニケーション。
親元であれ、知人であれ、事業承継には話し合いが重要です。
後継者は先代への敬意を、先代は事業のバトンをつないでくれる後継者への感謝を、お互いに気持ちを通わせながら有形無形の農業という財産のリレーをシミュレーションしましょう。
また、家族やパートナーなど生活を共にする人とのコミュニケーションも綿密に!
1.3 情報収集
ためになる情報は、意外と身近なところにも!
さまざまな人の意見を聞いて、調べて情報収集
就農にあたって、本や雑誌・Webサイト・SNSなどでも情報を集め、多くの知識を取り入れましょう。
また、承継する相手以外のパートナー・友人・知人・先輩などから思いがけない情報を得られることも!
多くの人の意見を聞き、就農準備を進めていきましょう。
1.4 就農相談
就農地の相談窓口で具体化。
まだモヤモヤしているなら県が設置するワンストップ窓口での相談も
就農予定地の関連窓口では、地域の実情に応じたアドバイスが受けられます。
自分の取り組みたい農業を伝えることでより具体的な回答が得られます。
就農地の窓口に聞くのはもちろん、具体的なイメージが固まっていない場合には栃木県農業振興公社(とちぎ農業経営・就農支援センター)に相談しましょう。
1.5 農業体験
頭で考えるだけではなく体で実感。
農業体験で自分ごと化
継承元と違う新規作目の導入を検討する場合は、積極的に農業体験会などに参加しましょう。
就農先の手伝いはもちろん、知り合いの就農者の手伝いなど、さまざまな種類の体験をすることで自分の目指す職業なのかを見極められます。
【step2】就農準備にかかろう!
就農に必要なものをごっそり紹介 。
就農準備校やお金の準備方法、就農までの流れをチェック!
情報を集め、体験を重ねたら、いよいよ次の「就農準備」段階です。
青年(18歳以上45歳未満)などで新たに農業経営にチャレンジする場合は、農業の事業計画にあたる「青年等就農計画」を作成します。
将来の具体的な設計図を作ることで、確実な事業承継の道筋と後継者としての心構えを示すことができるでしょう。
▶後継元と別の作目を導入、または経営を別にする
→認定新規就農者の申請をしましょう
「認定新規就農者」として認められれば、各種補助金・助成金の申請がスムーズ。
資金や住居の確保、資格の取得なども考えておきたいところです。
▶同じ作目を後継し、経営も引き継ぐ
→認定農業者の共同申請(継承元との共同申請)をしましょう
「認定農業者」として認められれば、各種制度が利用できます。
2.1 就農の決断
自分の目指す職業なのか決断の分岐点。
分析・情報収集・体験を経て、就農ビジョンを固める
事業を承継し、経営者の役割を担うことで「責任」や「周囲の期待」を背負うことも事実です。
しかし新規参入の就農とは異なり、農地や農業機械、設備や培われていた顧客・信用を引き継ぐことは大きな魅力。前職の知識や経験が、農業という事業に活かされる局面も多々あることでしょう。
将来を見据えた上で職業とする決断を!
2.2 農業研修 知識・技術習得
次世代の就農者を育てる研修の種類が充実。
研修のスタート時期を知って自分のプランと調整を
農業の手伝いをしたことがあっても、実際の営農はまた別問題です。
専門の教育機関で学んだり、先進農家で実践的な研修を受けたりして、技術や経営を学びます。
農業規模、自分の志向・レベルに応じて最適な方法を選びましょう。
▶教育機関(栃木県農業大学校)で学ぶ
基礎的な農業経営の知識や作物の栽培技術などを研修できます。
農家になりたいけれどなにからはじめればいいのかわからない、新たな作目を導入したいなど、基本的なことを学びたい方に向けたコースがあります。
▶先進農家で学ぶ
進んだ技術を持つ先進農家で一定期間の実践研修をしています。
研修中は、現場の技術と自分の知識との差に悩むこともあると思いますが、受け入れ先の技術・ノウハウは、一から学びとることで将来につながります
2.3 資金の計画
情報取集期間、研修期間、就農直後の資金計画。
なにをはじめるのにもお金の準備は大切!
農業はすぐには収入が得られません。作物・家畜を育て、出荷・販売して初めて収入になります。
作目によっても無収入の期間は変わりますが、実践研修の時期と合わせて約2年間の生活費の貯蓄の準備が安心です。
2.4 認定新規就農者になるための申請・認定
「青年等就農計画」を提出して認定新規就農者に!
審査後、認定されたら各種補助金の申請を
まずは、ビジョンを明確にするために「青年等就農計画」を作成してみましょう。
いつから、なにを、どうするなどの将来の構想、所得目標をまとめることができます。
作成にあたっては、市町・各農業振興事務所に相談できます。
青年等就農計画を作成したら、就農する地域の各市町に「認定新規就農者」の申請をしましょう。
審査後、認定されることで関係機関からの濃密な指導や、「青年等就農資金」・「経営開始資金」の申請が可能になります。
申請先
各市町の農政・農業振興課など
青年等就農資金について
日本政策金融公庫HP(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/seinen.html)
経営開始資金について
農林省HP(https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/roudou.html)
2.5 資格の取得
自動車教習所以外でも取得が可能。
大型特殊自動車などの資格も視野に入れましょう
農業ではトラクターやコンバインなど特殊な自動車を扱う場合があります。
距離の離れた畑までトラクターで移動するなど、大型特殊自動車が公道を運転するためには免許が必要になります。
「大特免許(農耕車限定)」は農業大学校で取得することも可能です。
2.6 住居の確保(借りる・取得する)
親との同居!? 家族は賛成?反対?
自分のライフスタイルも大切に
親元就農の場合は、実家で同居が可能かもしれませんが、家族のライフスタイルの違いなども考慮して住居の確保も想定しておきしょう。
移住経験者の情報も参考になります。
2.7 資金の確保 機械・設備・資材の準備
資金が底をつく前に!
安全な方法での資金確保を考える
事業をはじめるのと同じように、農業も相応の開始資金や運転資金、収入が得られるまでの生活資金が必要です。
機械・設備・資材の老朽化に伴い、新しい機械や資材の購入などにも資金が必要になる場合があります。
審査で適正と認められると無利子の融資制度も活用できますが、負債は経営を圧迫するためできる限り控えたほうが得策です。
【step3】めでたく就農!
農業を承継するとはいっても、やがて自分の力で営農していく日が訪れます。そこにはさまざまな困難が待ち受けている可能性もあります。
でも、初心を貫けばきっと未来は開けるでしょう。みんなの暮らしを豊かにする農業であなたの力を発揮してください!
【まとめ】~営農へのステップ~
就農から営農へ。
能力を最大限に開花させて儲かる農業への道!
「農家後継」に至るには数々のハードルがあるものです。
近親者が気軽にやっているように見えて、実は細かな心配りや小さな経験が積み重なっていたのですね。
情報収集から始まって、就農準備、晴れて就農まで。
これからは信頼関係を醸成し、技術を身につけて営農していく。
この手順書のステップを踏んできたあなたなら、きっと大丈夫。
でも、最後にもう一度、自分の農業への適性を自己分析してみましょう。見逃していた項目があれば補完すると安心です!